第3回 翻訳機がほしい

いよいよ、診療報酬・介護報酬の同時改定まで、3か月を切りました。厚生行政をウォッチング、分析するようになって早いもので30年弱になります。30年前に比べると厚生労働省の資料の作成方法、情報開示のスピードなど隔世の感があります。今は、きれいなパワーポイントで資料が作られ、中医協など開かれた当日には配付資料がホームページに掲載されます。わざわざ厚生労働省へ赴いて資料を入手に行ったりする必要がなくなりました。

 しかし、相変わらずなのが、文章です。厚生労働省に限らず、公的な文章は非常に分かりづらい文章で、難解な文言が使われていることが少なくありません。そこで、今回は「平成24年度診療報酬改定の基本方針」などの内容をもとに、厚生労働省の文章読解のコツをお話ししたいと思います。

◇ 改革の視点(抜粋)

「がん医療、認知症医療など、充実が求められる分野を適切に評価」

翻訳すると・・・
『がん医療、認知症医療などの分野は、そのつど、新規技術や、患者にとって有効な治療などに新しい診療点数や、診療点数を上げる。一方で効果の期待できない技術や、陳腐化した治療などは、診療点数を削減するなどを行う』
適正に評価とは、新設点数、点数が増える項目と下がる項目が混在するということ。

注意)
がん医療、認知症医療など 「など」が記入されている場合、この2つの領域以外にも充実が求められる分野が存在するということ。また、充実という文言が入っていたら、点数の引き上げ、要件の緩和などを意味する。重点や評価という文言も同様の意味を持つ。

「医療機能の分化と連携等を通じて、質が高く効率的な医療を実現する」

翻訳すると・・・
 『医療の質は落とさないが、医療費は削減(診療点数を下げる)する。その方法は医療機関に役割分担させて実現する』

注意)
効率化という文言が入っていたら、医療費を削減する。すなわち、点数の引き下げや点数の廃止あるいは規制や要件の強化などを意味する。

◇ 重点改題(抜粋)

「紹介率や逆紹介の低い特定機能病院等を紹介なしに受診した患者に係る初診料等を適正な評価とし、一部保険外併用療養費の枠組みを利用するよう変更を行う」

翻訳すると・・・
大学病院本院等に紹介状を持たないで受診する患者の初診料点数を引き下げる。すると、大学病院等の収入が減少してしまうので、該当する患者から自費で別途徴収する形に変更する。その結果、紹介状がない患者が、直接大学病院に受診すると、患者負担が高くなるので、紹介状なしで直接大学病院に受診する患者は減少する。(させたい)

◇ その他

また、右記のような図にも注意が必要です。この図で注意する箇所は、最上部の「高度急性期」の部分が将来減少する点と最下部の在宅サービスが将来増加するという意味をこの図に持たせていることを理解しなければいけません。

◇ さいごに

ほんの一部だけをご紹介しましたが、ちょっとした言葉の置き換えを、読みながら頭のなかでするだけで、だいぶ理解が違います。また、すべての厚生行政の根底にあるのが、「医療費の削減」であるということも、頭の片隅に入れて政策の文章を読んでみてください。

冒頭で中医協などの資料の情報公開が進み、足を運ばなくても良くなったと書きましたが、実は、実際に行って傍聴することには、まだ意味があります。それは会議を行っている委員の方たちの表情や言い方など人間の感情がそこにあるからです。同じ「賛成」にしても、もろ手を挙げての賛成や妥協の賛成などさまざまです。その発せられる言葉と人間の感情を同時に観察することは、実際に現場に行かないと不可能です。

それにしても、中医協の傍聴は先着順なので、9時から開始の会議に、6時過ぎには既に長い列ができていることも珍しくありません。何とかなりませんかね。

皆さんはどう思いますか?

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
株式会社FMCA

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