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第19回 「コイルセンター機能」を読み解く
鋼材加工流通業界には、鉄鋼メーカーで生産された原コイルと呼ばれる大きなロール状の鋼材のコイルを、自動車・家電産業等の製造メーカーで利用できる量・サイズに加工するコイルセンターという業種が存在しています。
このコイルセンターは自動車産業や家電産業といったあらゆる製造メーカーの鉄鋼原材料の加工・流通を行うだけでなく、鋼材流通全体での在庫保管機能という役割も担っています。
下図はコイルセンターを含む鋼材加工流通業界の概略図です。商流によっていくつかのパターンが存在しますが、今回は自動車・家電産業で主に行われている紐付き契約を例に説明いたします。
【鋼材加工流通業界の概略図】
製造メーカーは約3か月先までの自社の生産計画を基に、商社経由で鉄鋼メーカーへ鋼材発注を行います。
生産された鋼材は、直近の生産計画に基づき商社よりコイルセンターへ出庫処理されます。
コイルセンターでは必要に応じて切断加工を施し、製品として製造メーカーの各工場へ納入します。
この当たり前に思われるフローをSCMの全体最適という面から考えてみると、コイルセンターの在庫保管機能は製造メーカーとコイルセンター双方に対して計り知れない可能性を持っていると考えられます。
たとえば、製造メーカーは必要な時に必要な量の鋼材を必要な工場で受け入れることで、余計な在庫置き場を持つ必要がありません。
そのために不要となった在庫の保管スペースは、より有効な生産活動を行うためのスペースとして利用が可能となります。
また、工場内の整理整とんを実施してレイアウトを変更することで作業効率の向上も可能となります。
加えてコイルセンターで鋼材の在庫を保管するということは、鋼材製品の保管に特化した荷役設備や吊り具の活用のノウハウを持つコイルセンターにとって安易な作業となります。
そのため錆(さび)や傷などによる品質劣化のリスクは最低限に軽減できるとともに、コイルセンターを自社のバックヤードとして活用することによる材料調達能力の向上も図れると思われます。
このように、製造メーカーとコイルセンターが今まで以上に関係強化を図ることで、SCM全体において鮮度が高い在庫情報や生産計画の共有が可能となりSCM全体での総合効果が狙えると思われます。
次回は鋼材加工流通業界の概要図に赤字で記載した、「かんばん」について説明させていただきます。
次回は7月19日(金)更新の予定です。
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