第28回 「原価を知る」ということ(1)

今回は製造業において繰り返し提唱されている原価管理のうち、鉄鋼流通・加工業での課題と対策について説明したいと思います。

そもそも原価管理とはどのような役割を果たしているのでしょうか。
製造業の場合では、基本的にその企業によって製造される製品の原価(コスト)を計算し、管理することを指します。
管理の対象は広範囲にわたり、仕入管理から生産管理・販売管理まで企業の生産活動のあらゆるシーンに影響しています。
原価を知るということは自社の実力を知り、他社との競合関係を明確にし、次の一手のための業績判断や経営判断に活用されているのです。

下の図は、鋼材流通・加工業のうちコイルセンターにおける一般的な個別原価法での売上原価の構成例です。
仕入原価に生産活動におけるロス分(歩留まり損反映分)が反映され【2】の母材原価が算出されます。これが材料原価として仕入分析や生産計画分析の基礎となります。
ここに加工費等の想定原価(加工原価・荷造費・運賃他)がさらに加算され販売利益が算出されます。

[個別原価法による売上原価構成例]

ここで重要になるのは、原価をどの観点から把握するかということです。
本来の制度会計といわれる財務会計でも原価管理は行われています。
しかしながら最近の経済情勢の変化の前では、月次単位での原価管理では実際の企業活動において情報鮮度に遅れが発生してしまいます。
リアルタイムに日常を分析・判断することが企業の差別化の上でも大切な必須条件といえます。

そのためにも上記の売上原価の構成事例のような、財務会計上の原価管理とは違った観点での、想定ではあるもののタイムリーな原価管理が必要とされます。
加えてこの管理手法を業務の中に取り込み、業務負荷を意識しない販売支援・業績把握のための管理会計的な原価管理がこれからの新しい強力な味方となります。
そのうえで財務と管理会計の二つの観点から目的に合わせ互いに補完しあうことで、実績を基にした原価管理がよりリアルで簡単に管理会計上に反映できる仕組みづくりが可能と思えます。

次回はより効果的な原価管理を行うための実績原価と想定原価の差異分析と、その考え方について説明させていただきます。

次回は4月11日(金)更新の予定です。

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この記事の著者

三由 浩司

株式会社CANVASは 2018年12月、株式会社日本金城印へ事業を移管いたしました。
鉄鋼流通・コイルセンターにおける業務全般(営業・生産・IT)のコンサルタントを中心に製造業全般の提案活動を実施。国内外における複数コイルセンターの標準化システム構築実績有。
株式会社日本金城印

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