第30回 「原価を知る」ということ(3)

前回から2回にわたり、鉄鋼流通・加工業界でよく活用される標準原価といった観点から、製造業における原価管理での原価構成の考え方と、実績原価と想定原価との差異分析についての代表的なポイントについて説明させていただきました。
今回は最終回ということで、原価管理についてもう一度まとめてみたいと思います。

毎日行われている日常の仕入から売上までの業務では、日々のトレンドの変化を考えると多種多様なケースが存在します。
これらの業務を大量に処理しながら「原価を知る」ということはなかなか難しいものです。
地道に原価内容を把握しつつ、日々の原価実績を管理することがまずは重要となります。
そして現在、原価管理をスピーディーに実施するためのシステム化の推進は、原価管理の実業務に大きな効果を生み出します。
昨今のマーケットでは、精度やスピードだけではなく、いかにデータの把握と対策をすばやく正確に実施できるかが企業に求められているといっても過言ではありません

【標準原価設定のポイント】
【1】原価分析を行う前に、原価構成要素項目の洗い出し(棚卸)をもれなく行う。

顧客に提供する自社製品(外注を含む)について必要な材料コストおよびその他経費コストをもれなく洗い出し、より実態に近い「原価分析」ができるようにする。

【2】原価構成要素のうち変動により原価分析にインパクトを与える条件に対しては、配分比率の精査を行う。

原価に対して影響を受けやすい特殊な変動条件に関しては、実態により近い想定結果が得られるよう再検証を実施する(計算結果を合わせるための安易な係数設定は極力避ける)。

【標準原価設定時の原価分析の注意点】
ただし、標準原価を設定した場合、原価評価の際に以下のような注意点があります。

標準原価はある一定の条件で理論上計算された想定の原価となり、この算出原価は一定期間の原価の平均を機械的に積み上げたものとなるものです。

そのため、例えばトラック輸送の標準運賃原価を3,000円/1t(トン)で設定した場合、トラックの定期便で10t(トン)の鋼材をいつも通りトラック輸送すれば標準運賃原価金額はほぼ想定通りの約3万円となります。
しかし、極端な例として何らかの理由により同じ製品をいつもと違う航空便で緊急に空輸する必要が発生した場合、当然ですが、従来通りの標準運賃原価と実際運賃原価とでは大きく費用が異なってきます。
標準運賃原価の前提がトラック便と航空便では全く違うからです。
場合によっては3万円の標準運賃原価金額(トラック便)に対し数千万円の実際運賃原価(航空便)が発生してしまうケースとなります。
この場合は必ず想定運賃原価の新規項目として新たに航空便の運賃原価を追加する必要があります。自分たちで設定した標準原価で表現しきれないケースは必ず追加修正が必要となります。

大切なのは原価計算を行った上で導き出された原価の数値をただ受け入れて納得するのではなく、知りえた自社の原価結果をすばやく社内情報として充分に有効活用できるかが最も重要となります。
上述の航空運賃による想定外の原価の上昇のような、いつもと違うケースに対して、いかに速やかに状況を把握し、次のレスポンスを行うのかが企業・組織における力量になると思います。

そのためにも広い範囲でのアクシデント発生の想定と事前の対策(ありえないものの使用制限)や、あらゆる角度からの理論的なチェックシステム(エラ-チェックやワーニング)が必ず効果を発揮できると思います。

次回は6月20日(金)更新の予定です。

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この記事の著者

三由 浩司

株式会社CANVASは 2018年12月、株式会社日本金城印へ事業を移管いたしました。
鉄鋼流通・コイルセンターにおける業務全般(営業・生産・IT)のコンサルタントを中心に製造業全般の提案活動を実施。国内外における複数コイルセンターの標準化システム構築実績有。
株式会社日本金城印

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