第1回 苦難を超えて進化するサプライチェーン・マネジメント

製造業における「ものをつくるチカラ」にはいろいろなものがあります。技術力・生産力・品質あるいは創造力・設計思想・思い入れ、いろいろなチカラが相互に絡み合って製品は進化し完成されていきます。このコラムではこれらのチカラについていろいろな角度からお話させていただきます。

東日本大震災に引き続きタイの洪水、と大きな災害の連続の中、製造業各社では被害の影響のため大幅な生産計画の見直しが行われています。しかしながら、製造拠点のグローバル化に伴い、物流をも含めた大規模で複雑な生産が世界各地で行われているため、今回のような緊急的で長期間にわたる生産計画の見直しは非常に難易度が高く、計画変更の立て方によっては、逆に混乱の拡大へとつながる危険性があります。

本来、生産計画は常に需要とのギャップを意識し、必要に応じて計画の見直しを行っています。しかし、今回の生産計画変更は従来のサプライチェーンでの生産量の増減ではありません。緊急で代替的なSCMの臨時構築となります。従来の製造マップから、被災状態に合わせ、利用可能な製造拠点を構成し直し、世界中の条件の合った拠点での緊急な増産・新規生産となります。これには、従来の経験則では予測不能な面もあり、「いつもと違う」という観点から計画と実績との推移を慎重に監視する必要があります。

また、忘れてはならない購買計画の変更です。多くの製造業が原材料として購入している鋼材を例にすると、鋼材は数ヶ月先の先物契約であるため急な契約変更には難しいものがあります。よって生産調整での鋼材在庫の過不足を極力抑えるためにも、可能な限りの契約見直しを忘れず実施する必要があります。生産活動にばかり着目しすぎ、材料調達の変更タイミングを逸してしまうケースは過去によく見られます。

とはいうものの、この臨時構築のSCMの結果は、今後予想される新たなサプライチェーンの見直しへ反映されることも考えられます。緊急時でのサプライチェーン各社の協力体制(生産可能能力の公開)やノウハウ(緊急時の情報共有化)が「ものをつくる」企業集団の力として蓄積され、各社で展開されることで次世代への貢献ができるのでは、と思います。

最後に、東日本大震災およびタイの洪水で被災された皆様に心からお見舞いを申し上げるとともに、一日も早い復興をお祈り申し上げます。

次回は2012年1月20日更新予定です。

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この記事の著者

三由 浩司

株式会社CANVASは 2018年12月、株式会社日本金城印へ事業を移管いたしました。
鉄鋼流通・コイルセンターにおける業務全般(営業・生産・IT)のコンサルタントを中心に製造業全般の提案活動を実施。国内外における複数コイルセンターの標準化システム構築実績有。
株式会社日本金城印

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