第7回 生産を管理するということ

今、国内の製造業は、最近顕著となっている円高に引きずられるかたちで外部環境が悪化する中で、更なる変化が求められています。企業は同業他社との差別化を図るため、効率化によるコストダウンや更なる付加価値の提供で悪戦苦闘を強いられ、試行錯誤を重ねています。

このような環境下、国内の鉄鋼流通業においても顧客の発注はますます短納期化しており発注変更も当たり前という状態になっています。この顧客の必要なものを必要な時に必要な数量だけ手配したいというニーズに応えるため、コイルセンター・鉄鋼特約店などの流通各社は常に顧客の動向を注視し、納期を厳密に規定する欧米式の契約主義とは一味違った、柔軟性のある日本式の御用聞きで顧客の満足度向上ひいては自社の優位性のアピールを狙っています。

私は新規の鉄鋼流通業のお客様に対してヒアリングを行う際、必ず自覚されている強み・弱みを聞くようにしています。そして最近は自社の生産可能範囲や生産能力での強みのほかに、自社の短納期対応を挙げられる企業が多くなっているように感じられます。顧客の要望が変化していることを敏感に受け止めた結果として、当然のように顧客の要望に応え自社の売りとする姿には感服する思いです。

しかし、多くの企業が短納期受注への対応をアピールする反面、従来引き受けていた通常のリードタイムでの注文の納期の遵守に苦戦しているケースが多々あります。「わが社の強みはどんな短納期でも対応できる」というのは裏返せば受注納期に見合った生産管理がなされていない混沌とした状態であり、それゆえに全体の生産管理を無視した「飛び込み」が許されているという場合があります。

その場合、短納期受注に対応することによるプラスポイントにばかり目が行き、そのことにより失うかもしれない他の受注の納期遅延や臨時の深夜残業のマイナスポイントへの配慮が欠けることが大きな課題となります。実際に「一つの飛び込み受注」がすべての通常受注に影響し、慢性的な納期遅延に陥った例は珍しくありません。

これを避けるためにも、やはり基本は通常受注での生産計画を立案し、「飛び込み受注」があった場合は別枠として検討し全体への影響度を考えた生産計画の変更や残業対応を行うことが重要となります。よく「飛び込み受注」は当たり前で特別なことではないというお話を聞きます。しかし、それによって他の受注が遅延する可能性があるということを強く認識することも生産を管理することの一つではないかと考えます。

次回は7月20日(金)の更新予定です。

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この記事の著者

三由 浩司

株式会社CANVASは 2018年12月、株式会社日本金城印へ事業を移管いたしました。
鉄鋼流通・コイルセンターにおける業務全般(営業・生産・IT)のコンサルタントを中心に製造業全般の提案活動を実施。国内外における複数コイルセンターの標準化システム構築実績有。
株式会社日本金城印

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