今年で2年目を迎えたデジタルの日。企業におけるデジタル化の歴史を振り返る

2022年 9月30日公開

今年で2年目を迎えたデジタルの日。企業におけるデジタル化の歴史を振り返る

2022年10月2日(日)、3日(月)がデジタルの日であることをご存じでしょうか。
2021年に創設されたばかりの新しい記念日のため、まだご存じない方もいることでしょう。

言うまでもなく、私たちの生活にデジタル技術が与えたインパクトは凄まじいものがあります。例えば携帯電話の普及により、いつでもどこからでも手軽にコミュニケーションを取れるようになりました。今では当たり前のことですが、もし携帯電話がない時代の人へ携帯電話の存在を伝えると、きっと「革命的だ」と思うに違いありません。

このように私たちの生活や仕事に大きな影響を及ぼしてきたデジタルですが、改めて考え、見直す機会はそう多くないのではないでしょうか。そこで今回はデジタルの日を前に、企業におけるデジタル化の歴史を振り返ってみましょう。

そもそもデジタルの日とは?

デジタルの日とは、2021年よりデジタル庁が創設した記念日です。デジタル庁によると、デジタルの日は社会全体がデジタルを振り返り、体験し、見直すキッカケとなるように創設されました。

2022年以降は「毎年10月の第一日曜日と月曜日」がデジタルの日であり、毎年10月は「デジタル月間」となります。デジタル庁としては、デジタルの日を創設することで、社会全体のデジタル化への機運を向上させる目的があるようです。

2021年のデジタルの日には、初年度にも関わらず、多種多様な業態の746社・団体が全国各地から取り組みを行い、多くの注目を得ました。

DXセミナーやプログラミングセミナーのほか、優れたデジタル化の取り組みを推進している個人およびチームへデジタル大臣が「デジタル社会推進賞」を授与。取り組み内容としては、この日限定のセールやキャンペーン、DXセミナー、プログラミングセミナー、スマホ教室、デジタル音楽フェスなどが実施され、デジタル社会を進めていく“キッカケ”となる記念日になりました。

今年のデジタルの日も、「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化」に寄与している、または今後寄与する可能性がある個人やチームの取り組みを対象に「good digital award」が授与される予定となっています。

企業におけるデジタル化の歴史

デジタル技術の進化は社会に大きな変革をもたらしました。それでは企業におけるデジタル化はどのような推移を辿って進化してきたのでしょうか。

例えば、ビジネスパーソンの机の上に置かれているモノはデジタル化により大きく変化しています。
デジタル機器に置き換わる前のサラリーマンの机には、黒電話、タイプライター、そろばん、カレンダー、地図、郵送物など、サイズの大きな機器や紙のプロダクトに囲まれていました。

1990年代に入ると、文章作成に使用していたワープロや、計算に使っていた電卓などがパソコンのソフトに置き換わり、社員一人一人の机にパソコンが並ぶようになります。
文章作成は一太郎やWord、表計算にはExcel、資料作成にはPowerPointといった具合に、ビジネスの現場で必要とされるツールはパソコンのソフトで完結します。

2000年代に入ってからはインターネットが広く普及し始め、紙の郵送物がメールに代わります。携帯電話も一人一台持つのが当たり前になります。

そして、2010年代にはスマートフォンが普及。携帯電話とパソコンの境界も曖昧になってきました。パソコンの機能も携帯電話の機能もアプリに置き換わった結果として、ノートパソコン・スマートフォンがあればいつでもどこでも仕事ができるようになったのです。
このようにビジネスパーソンの机の上の歴史は、デジタル技術の進歩により、「あらゆるモノ・機能がパソコンやスマートフォンに集約された歴史」とも言えます。

現在、このパソコンに紙プロダクトのモノや機能が集約されたことで、企業およびビジネスパーソンは以下のようなメリットを享受しています。

企業のメリット例

  • ● 紙プロダクトや文房具等の備品購入費の削減
  • ● IT人材の増加による、旧来の専門スタッフの削減
  • ● 遠方の相手とリモートで会議、画面共有機能でプレゼンも可能
  • ● 文章や資料作成の効率化

また、モノがパソコン内のソフトに置き代わったように、通信機器や通信技術の変化もめまぐるしいものがありました。日本では1970年に大阪万博にてワイヤレステレホンが登場。1985年にショルダーホンが登場し、1980年代後半よりポケベルが普及し始めます。2000年にカメラ付き携帯電話(いわゆるガラケー)が、2008年にはスマートフォンが日本で発売されました。

ポケベルの登場は、リアルタイムでなくともビジネスパーソンへの情報伝達を可能にし、また携帯電話の普及により、業務内容に応じて電話とメールの使い分けを可能にしたほか、わざわざ公衆電話を探す手間なく容易に電話をかけられるようになりました。
そして、パソコンに近い性能を持つスマートフォンの登場・普及により、写真や動画を用いたビジュアルコミュニケーションが発展していきます。仕事内容によっては、スマートフォンだけで完結するようになりました。
通信機器に加えて、インターネットサービスの通信技術についても、2000年頃のADSL回線から2005年に光ファイバーが主流となり、通信速度は約1,000倍になりました。また携帯電話の通信速度についても、1990年の1Gから2010年代の4Gへ変遷し、通信速度は約1万倍以上に向上しています。通信機器の進化と併せて、通信速度も飛躍的に進化していることがわかります。

通信機器・通信技術の発達はビジネスにおいて双方が受け取れる情報量および速度を飛躍的に加速させ、パソコンまたはスマートフォンがその膨大な情報を処理します。
これにより、業務効率が格段に向上しました。

連絡ツール一つ取っても、電子メールが普及する以前は資料を送付するにしても、郵送をしなければならず、相手が受け取るまで数日を要していました。それが今では、資料を添付した電子メールを送れば、相手が気付き次第すぐに確認してもらうことができます。

今後より一層のデジタル技術の発展は、私たちの生活や仕事をどのように便利にしてくれるのでしょうか。

誰もが当たり前のように使用するようになったデジタル技術

デジタル技術の進歩は、ビジネスシーンだけでなく、子どもからお年寄りまで、あらゆるシーンで誰もがその恩恵を受けています。

例えば、デジタル技術により、インターネットバンキングを使い、ネット上で税金の支払いや他口座への振り込みも行えるようになりました。インターネットバンキング登場前はわざわざ銀行窓口かATMに行かなければならなかった作業を、いつでもどこでもできるようになったのです。またネットショッピングも同様に、デジタル技術がなければできませんでした。

そのほか、子どもがスマートフォンの学習アプリでどこでも勉強ができるようになったり、災害時に足腰の弱いお年寄りの位置情報をリアルタイムで把握する技術があったりと、あらゆる世代がデジタル技術に支えられています。

子どもが恩恵を受けているデジタル技術例

  • ● スマートフォンの学習アプリでどこでも勉強が可能になる
  • ● 「子ども見守りGPSサービス」で保護者が子どもの居場所を把握してくれるので、安心してお出かけできる

若者~親世代が恩恵を受けているデジタル技術例

  • ● インターネットバンキングを使い、ネット上で税金の支払いや他口座への振り込みなどを行う
  • ● リアル店舗で買い物をするのではなく、ネットショッピングを楽しむ

お年寄りが恩恵を受けているデジタル技術例

  • ● 災害時に逃げ遅れた場合、位置情報をリアルタイムで発信、避難や救助を迅速にする
  • ● 睡眠の深さや心拍数、呼吸の状態などの状況を把握してくれる介護施設

最近ではマイナンバーなど、公共サービスの予約や手続きを行うのにスマートフォンアプリから行えるものが増えてくるなど、もはや私たちはデジタルと切っても切れない生活をしていると言えます。

身の回りに溢れているのにビジネスにおいて世代別に浸透の差がある

その一方で、これだけデジタルが普及しているにもかかわらず、企業では社員によってデジタルに関するリテラシー(デジタルリテラシー)に差があるのも事実です。

この問題は、インターネットやパソコン等のデジタル技術を利用できる人と利用できない人との間に生じています。この格差を「デジタル・ディバイド」と言います。
デジタル・ディバイドは、スマートフォンやタブレット等を使えない世代と上手に使いこなす世代との比較の文脈でよく使われる言葉ですが、企業でデジタル技術を使いこなさないといけない現役の働く世代の間でも生じている格差です。

この差は、生まれつきデジタル技術に接していた環境があったかどうかが大きいと言われます。とはいえ、デジタルリテラシーが低くても、これまでに培ってきた企業での豊富な経験やノウハウが生かされないのはもったいないことです。

そんな障壁を解決する一つの手段が、企業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)。つまり、DXを活用すれば、デジタルリテラシーが高くない人が抱える問題を解決できる可能性があるのです。

DXの定義はさまざまですが、「デジタル技術の活用により、新たな商品やサービスを提供したり、組織文化や制度などを変革していく取り組み」という使い方がされています。DXは広い意味で「デジタル化」に含まれる概念です。

業務効率化・改善のために新しいツールやサービスの導入を検討している企業は多いでしょう。
その際にデジタルリテラシーが決して高くない人にとっても使いやすいものを導入することも重要です。

新しい便利なツールやサービスでも、操作方法が複雑だと組織に浸透しません。使いこなせない人たちを置き去りにしないように、例えば社員にどのような点に使いにくさや導入を躊躇う要素があるのかヒアリングを行い、問題をクリアにしたうえで導入に踏み切ることが重要です。

このように企業はDX化を進めることで、デジタルリテラシーの高低に左右されにくい、若い世代とこれまで企業を支えてきた世代とが共に協業していける環境を構築できます。

デジタルの日はデジタルについて振り返り、体験し、見直す機会として創設されました。デジタルについて今一度考えるその切り口の一つに「DX」を据えてみてはいかがでしょうか。

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