経理業務の効率化にDXは必須? 現場が抱える問題と改善方法
2023年5月9日公開

「改正電子帳簿保存法の対応で電子データの保管方法が分からない」
「インボイス制度で消費税の計算や扱いに経理が頭を悩ませている」
経費精算や各種申請処理、見積り・受発注・請求業務をいまだにエクセルの手入力で処理している企業が数多く存在します。
業務の自動化を図れば便利になると分かってはいても、経理システムを見直すには、そもそも業務フローの変革が必要です。また、新しいツールの導入に社員が戸惑うのではないかという声も上がり、導入に踏み切れないというお悩みもあります。
この記事では、経理業務を改善するDXツールを導入するメリットや魅力を紹介します。
経理で発生する「お困りごと」とは?
まずは、経理業務においてDX化が進んでいないことによって発生する現場の「お困りごと」を紹介します。
経費処理を手作業で行っているため効率が悪い
交通費や出張旅費、交際費などの経費処理を手作業で行っていると、印鑑の承認待ちが発生するため業務の進行が遅れます。また、領収書の原本を保管する必要があり、紛失リスクも考えられるでしょう。

経費処理を手作業で行うと、効率が悪くなることに加えて計算ミスの恐れもあります。計算ミスがあると修正作業に時間を取られてしまいます。企業によっては、計算ミスがないかの確認作業を行うこともあるでしょう。経費処理をDX化することで、業務の効率化と計算ミスの防止が実現できます。
紙での保管が多すぎる
DX化が進んでいない企業では、請求書などを紙で保管することがあるでしょう。紙での保管はさまざまなデメリットがあります。

紙で保管することのデメリット
- ● スペースの確保が必要となる
- ● 知りたい情報を探し出すのが困難
- ● 紛失のリスクがある
請求書などを紙で保管する場合は、キャビネットなども含めたスペースの確保が必要です。また、量が増えてくると知りたい情報を探し出すのに時間がかかったり、紛失や誤って捨ててしまったりするリスクが考えられます。

もしデータで管理できれば、物理的なスペースを確保する必要が無く、検索機能によって知りたい情報を即座に探し出すことができます。バックアップデータを残しておけば、データが消えてしまうリスクも低減可能です。
新たな制度への対応が進まない
2023年10月より開始するインボイス制度によって請求書のフォーマットを変える必要があったり、2024年1月の改正電子帳簿保存法の宥恕(ゆうじょ)措置廃止への対応が進んでいないケースも考えられます。

紙での保管を続けていると法改正への対応が遅れてしまいますので、早急にDX化を進めて、各種法改正への適応と業務効率化を図ることが大切です。
経理での「お困りごと」が発生する原因と背景とは?
では、なぜ経理業務において上記のような「お困りごと」が発生するのでしょうか。その原因と背景について解説します。
改正電子帳簿保存法への対応が必要
改正電子帳簿保存法によって、2024年より電子取引データの保存方法が厳格化します。
電子帳簿保存法とは?
企業は国税関係帳簿や紙で受領した証憑(しょうひょう)書類などの国税関係書類を、原則7年間保存しなくてはいけません。この国税関係書類を電子データで保存することを認めた法律が電子帳簿保存法です。
電子帳簿保存法は、以下の四つの保存方法に分かれます。
- ● 帳簿保存
- ● 書類保存
- ● スキャナー保存
- ● 電子取引
帳簿書類保存は、会計ソフトなどによって作成された帳簿や書類を印刷せずにデータ保存することです。スキャナー保存は、紙で作成または受領した請求書や領収書などをスキャンして電子データとして保存ができます。電子取引は、電子的に授受した取引データを保存することです。

2024年以降の変更点
2022年、電子帳簿保存法が改正され、電子取引において書面での保存が禁止されました。2023年12月31日までは宥恕措置として書面で保存可能ですが、2024年1月1日以降は電子データとして保存しなければなりません。
これまで紙で保管していた企業は、保存方法への対応が求められます。
インボイス制度の開始
2023年10月1日からはインボイス制度が導入され、企業は請求書の記載しなければならない項目が増え、さらに受け取った請求書の確認業務などが増えます。
インボイス制度とは
インボイス制度とは適格請求書等保存方式とも言われ、仕入税額控除を受けるために「適格請求書発行事業者」が発行する「適格請求書(インボイス)」の保存が必要となる制度です。
「適格請求書」を発行できるのは「適格請求書発行事業者」のみであり「適格請求書発行事業者」になるためには、登録が必要です。
通常、税務署に納める消費税は「売り上げで受け取った消費税」から「仕入時に支払った消費税」を差し引いた金額となります。
これまでは仕入先が免税事業者であるかどうかにかかわらず、仕入時の消費税を差し引いていました。しかしインボイス制度が始まると、仕入先が適格請求書発行事業者でないと、支払った消費税を差し引けなくなります。

上記の図で考えると、仕入先が適格請求書発行事業者であれば、売り上げの消費税350円から仕入れの消費税100円を引いて納税額は250円です。もし仕入先が適格請求書発行事業者でなければ、仕入時の100円を引くことができず350円を納税しなくてはいけません。
インボイス制度が経理業務に与える影響
インボイス制度が始まることによって、企業は請求書へ記載しなければならない項目が増えます。
上記の図において、赤字の箇所がインボイス制度を利用する際に必要となる記載事項です。これまで使用していた請求書では、インボイス制度に対応できませんので、10月からこれまで使用していた請求書に赤字の箇所を追記したものをインボイスとする必要があります。
また、請求書を受け取った際にも確認作業が発生します。適格請求書は発行側も受取側も7年間保存しなくてはいけません。また、適格請求書には受取側で追記が認められていないため、誤りなどがあった場合は取引先に内容の修正と適格請求書の再発行を依頼する必要があります。
インボイス制度によって、経理では必要な作業が増えるため業務のDX化は必須と言えるでしょう。
システムの老朽化が進んでいる
経済産業省は「DXレポート」において、2025年の崖という問題を提唱しました。複雑化・老朽化した既存システムによってDX化が阻まれてしまうと、2025年には最大12兆円の損失が発生するという問題です。
経理においても、老朽化したシステムによってさまざまな問題が懸念されています。古いシステムは企業独自で開発したものが多く、作業が属人化する傾向にあります。また、処理能力も遅いため作業効率が悪くなり、多くの人手が必要となったり残業の原因となったりします。

近年はテレワークも普及していますが、老朽化したシステムはクラウド上で作業ができず、経理担当者の出社が義務付けられ、社員満足度の低下にもつながりかねません。
「お困りごと」を解決する方法
実際に経理業務において「お困りごと」を解決する方法を紹介します。
請求書のデータ化ツールを導入
RICOHの「RICOH受領請求書サービス」を活用すると、請求書の内容をデータ化し、仕訳データ・振込データを作成することができます。
請求書をスキャン・アップロードするとAIが請求日や請求元名称、請求金額などを自動で認識し、データ化が可能です。請求書の書式は企業によって異なりますが、AIを用いることで定義設定の必要がなく、自動で情報の抽出ができる特徴があります。もし抽出にミスがあっても、機械学習を重ねることで精度の向上が見込めます。
このソリューションを導入すると、業務効率化や人的ミスの削減が期待できるでしょう。
文書を電子化する
大塚商会の「eValue V 2nd Edition ドキュメント管理」を導入すると、文書管理の電子化を実現できます。
eValue V 2nd Edition ドキュメント管理の特徴
- ● 高度な検索機能
- ● 万全のセキュリティ対策
- ● 電子帳簿保存法に対応
文書を電子保存するメリットの一つに検索機能があります。このシステムでは、属性検索ができます。また、ユーザーやグループ単位でアクセス権限を設定できるため、安全に情報のやりとりが可能です。
電子帳簿保存法では、保存したデータの改ざんを防止するためにタイムスタンプを付与するという要件があります。「eValue V 2nd Edition ドキュメント管理」では、タイムスタンプの付与や一括検証が低コストで行えるので、検索機能などと組み合わせれば業務効率化とコスト削減が同時に実現します。

クラウド型会計ソフトを導入する
クラウド型会計ソフトの「freee」を導入すると、次の業務を一つのシステムで管理できます。

- ● 会計
- ● 経費精算
- ● ワークフロー
- ● 請求管理
- ● 債権債務管理
freeeでは銀行明細やクレジットカード明細など、1,000以上のサービスのデータをAPIを用いることにより、自動で取り込むことが可能です。明細の摘要から勘定科目を推測する機能も実装されているため、経理担当は仕訳が合っているかどうかを確認・修正するだけで仕訳業務が完結します。
また、スマホアプリを使用すればレシート画像をAIが分析し、自動で文字を読み取り経費入力することも可能です。
freeeには経理業務を効率化するだけでなく、経営状況を見える化する機能も備わっています。日々の取引入力から自動でレポートが作成され、簡単に経営状況の確認が可能です。また、キャッシュフロー情報もグラフで確認することができ、経営状況の見える化が簡単に行えるのは大きなメリットでしょう。
大塚商会では、基幹系システムと情報系システムを統合した「DX統合パッケージ」にfreeeを連携させることが可能となりました。今後はさらに業務の最適化と生産性向上が期待できます。
企業のDX化をサポートする「DX統合パッケージ」
大塚商会はSMILEシリーズとしてご提供している販売・会計・人事給与などの基幹業務に加え、ワークフロー・ドキュメント管理といった情報系機能を標準で提供しています。
各基幹業務に特化した機能だけではなく、その業務に付随したコミュニケーションとなる、申請・情報共有・情報の保管までを、一気通貫で行うことが可能です。テレワークの普及やIT活用の重要性が高まるなか「DX統合パッケージ」によって企業のDX化の基盤作りをサポートします。
基幹系と情報系の統合によるメリット
基幹系と情報系のシステムを統合した理由は、業務効率化・業務精度の向上が見込めるからです。生産性を向上しつつ内部統制基盤も確立する「eValue ワークフロー」や社内情報資産の一元管理・活用を促進する「eValue ドキュメント管理」を、基幹システムである「SMILE」と統合することで、全社員の業務効率化と業務精度の向上が見込めます。
具体例として、経費の申請業務を考えてみましょう。
システムを導入していないと交通費の計算の手間や上司の不在による承認の遅延など、さまざまな「お困りごと」が考えられます。
この際、効率の良い申請業務が実現できます。申請や承認はスマートフォンやタブレット端末からも行えるので、外出先でも進めることが可能です。
自社に最適なサービスを導入できる「DX統合パッケージ」
DX化といっても、業種や業務によって必要なシステムは異なります。大塚商会ではあらゆる業態に適した基幹系システム「SMILE」・情報系システム「eValue」を統合したDX統合パッケージをご用意しています。利用環境もサーバーにインストールするオンプレミス版だけでなく、クラウド版も利用可能です。
お客様のご要望に合わせた最適なサービスを提供していますので、ぜひ大塚商会へご相談ください。