建設現場や製造現場の業務にDXは必須? ものづくりが抱える問題と改善方法

2023年5月30日公開

止まらない革新、ID管理のその先へ

「今の時代、働き方にも変化が求められているが現場の実情とマッチしない」
「熟練工の減少と若手の不足により、現場に次の担い手がいない」

ものづくり現場では、業界全体で労働力不足が進んでいる現状により、業務の効率化まで着手できてないという問題があります。しかし、今後も需要がなくなることのない業界だけに、ものづくりの現場にもコスト削減や業務フローの改善を目指したDX化が必須です。

そこで本記事では、ものづくりの現場をDX化するためのツールを紹介し、導入するメリットや魅力を紹介します。

ものづくり現場で発生する「お困りごと」とは?

まずは、ものづくり現場においてDX化が進んでいないことによって発生する現場の「お困りごと」を紹介します。

設計業務に時間を取られる

ものづくり業務で、設計業務に時間を取られてしまい、その後の工程である現場作業のスケジュールを圧迫してしまうケースがあります。当然、納期が定められているので、期日に間に合わせるため残業が発生してしまうこともあるでしょう。

設計業務に時間を取られる主な原因

  • ● 作業の属人化
  • ● 頻繁に発生する変更点
  • ● 時間が足りない

設計業務に時間を取られる原因として、まずは作業が属人化している点が挙げられます。設計はその人の技術力による部分があるので、ベテランが退職したことで、生産性が落ちてしまうこともあるでしょう。設計は作業中に変更が発生することも多く「変更が発生しても、情報共有を即座にできるツールを導入し、すぐに対応できるようにしておく」などの技術が必要です。

また納品までの期間が足りず、設計と現場作業のバランスが取れないことも考えられます。競合と差をつけるために短い納期で質の高い製品を作ろうとするあまり、余裕のないスケジュールになってしまうのです。

近年は、設計を3次元で立体化・視覚化して共有できる「3D CAD」や、ARによる遠隔支援などが活用できるため、DX化を進めて生産性を向上させることが大切です。

紙で生産管理を行っていて効率が悪い

生産管理や日報を紙で管理しているため、効率が悪いと感じることもあるでしょう。ものづくり現場においても、ペーパーレス化はあらゆる観点から必須と言えます。

ペーパーレス化によるメリット

  • ● コスト削減
  • ● クラウド上での共有
  • ● 検索が容易
  • ● 紛失と劣化のリスク回避

紙で生産管理をしていると、変更点などの共有にも遅延が発生しますが、クラウド上でデータ管理を行うことで、同時編集による情報のアップデートが簡単に共有できます。紙で管理をしていると、現場と事務所にいる人の情報共有が遅れてしまいますが、クラウドで行えばスムーズな連携が可能です。

さらに、建設業におけるものづくり現場は屋外での作業も多く、天候によっては紙が濡れて内容が分からなくなる可能性があります。また、同時に複数の案件を進めていると、どの書類に情報がまとまっているかが分からなくなり、捜索の手間も増えます。これでは業務効率化が図れません。それらを電子化することで、業務効率化とコスト削減が同時に実現できます。

管理が行き届かず余剰在庫が大量に発生する

製造業において、人の手で生産管理を行っていると、余剰在庫が発生する恐れがあります。
需要予測を人が行っていると、市場の動向や過去のデータから必要な在庫の算出にばらつきが出てしまうからです。需要予測が属人化すると、人員体制が変更になった際に、適切な在庫を持つことが難しくなるでしょう。

また、実際に抱えている在庫数の把握ができていないことも、適切な生産管理ができない理由の一つです。人が在庫をカウントしていると、人的ミスが起こりやすく、発注数にも影響を及ぼします。生産管理システムを導入することで、正しい在庫管理と需要予測を行うことが大切です。

ものづくり現場で「お困りごと」が発生する原因と背景とは?

なぜ、ものづくり現場において上記のような「お困りごと」が発生するのでしょうか。その原因と背景について解説します。

働く人の高齢化と減少

建設業では、働く人の減少と高齢化という問題を抱えています。

建設業界は、投資額が10年程で約1.5倍に増加しているにもかかわらず、就業者数は減少しています。就業者数は1997年の685万人をピークとして減少が続き、2020年はピーク時の71.8%まで減少しました。技能者も同様に1997年がピークで、2020年はピーク時の69.2%まで減少しています。

建設業界では、高齢化と若手の減少という問題が発生しています。2020年、55歳以上の割合は36.0%と全産業より4.9%多く、29歳以下の割合は11.8%と全産業より4.8%少ない状況です。

人材不足と高齢化、若手の減少が続くと技術継承が進まず、生産性の低下が見込まれます。日本全体でも労働力人口の減少が予想されているため、DX化を図り生産性向上を実現することが急務と言えるでしょう。

インフラの老朽化と危険を伴う作業

建設業界では、ライフラインに関わるインフラの老朽化にも対応しなくてはいけません。道路や上下水道、ダム、鉄道などが老朽化によって機能しなくなると、多くの人の生活に影響を及ぼします。状況によっては、人命にかかわる事故にもなりかねません。

インフラは経年劣化があるため、定期的にメンテナンスが必要です。しかし、作業は危険を伴うことが多く、機械化を図ることも重要です。

国と民間企業が連携して、インフラ整備と作業の機械化を進めることが解決方法の一つでしょう。

材料費・輸送費の高騰

近年の社会情勢によって材料費と輸送費が高騰しています。利益を確保するためには値上げも選択肢の一つですが、販売数の減少につながりかねません。

材料費の高騰

新型コロナウイルスやロシア・ウクライナ問題によって需給バランスが崩れ、材料費は近年高騰を続けています。

上記の2011年から2022年までの建築資材物価指数のグラフを見ると、ここ10年程で物価は約1.3倍に上昇していることが分かります。これでは利益を大きく圧迫することも容易に想像できるでしょう。

輸送費の高騰

材料費が高騰する背景には、輸送費の高騰という影響も含まれています。特に輸入資材を使用している企業は、燃油や輸送費の推移を確認することが大切です。

燃油費の高騰は円安の影響もあり、ここ数年で上昇しています。2020年3月には1バレルあたり16ドルまで下落しましたが、2022年1月時点では80ドルを超えています。

上記は海上貨物輸送の価格指数の推移を表したグラフです。2020年までは安定していましたが、2021年から右肩上がりで推移しています。

このように材料費や輸送費が高騰しているなか、原価計算を正しく行い把握することは、ものづくり現場において重要です。しかし、原価をExcelなど手動で管理している企業が多くみられます。

手動で綿密に計算しようとすると多大な労力がかかるうえに、人的ミスも生じるでしょう。原価計算を含めた作業効率を上げるには、計算の自動化と見える化が実現できるソフトウェアの導入が必須です。

ものづくり現場の「お困りごと」を解決する方法

ここからは、上記で挙げたものづくり現場における「お困りごと」を解決する方法を紹介します。

3D CADの導入

CADの利用にはさまざまなメリットがあり、まずはデータ共有の容易さが挙げられます。冒頭で示した、紙で生産管理を行っている「お困りごと」と同様に、設計や製図もデータで管理すると共有が簡単です。さらに「3DEXPERIENCE Works」を活用すれば、クラウド上でCADデータの共有が可能です。
CADをインストールしていないPCでもブラウザー上でCADデータの閲覧や関係者とのコミュニケーションができるようになります。

通常、3D CADを使用するには高スペックなPCが必要です。しかしAzure Virtual Desktopを使うとクラウド上で3D CADの操作ができるため、自宅にあるようなPCでも3D CADが使えます。これは在宅で作業ができるだけでなく、高スペックなハードを導入しなくてもよいというメリットもあります。

CADを使うメリット

  • ● データ共有が簡単
  • ● 修正が簡単
  • ● 計算に関する人的ミスが発生しない

福岡県にある特殊空調施設の設計・施工を行う会社のCADの導入事例を紹介します。

従来は2D CADを使用していましたが、特殊空調の構造は複雑であり、スタッフやお客様に全体像を理解してもらうのが困難だという問題を抱えていました。

そこで3D CADを導入したところ、3Dモデルが簡単に作成でき、スタッフやお客様との意思疎通が円滑に進むようになったのです。設計時間も2D CADの半分以下となり、業務効率化が進みました。

同様に、愛知県にあるヘリコプター関連会社の事例も紹介します。機材をヘリコプターに装備するための設計業務には、機体重量や重心などを考慮する必要があり、豊富な経験が必要です。しかし3D CADを導入したことで、簡単に3次元設計ができ、若手社員でもすぐに使いこなせるようになりました。

こちらも設計から制作依頼までの期間を従来の半分に短縮することに成功しています。

実際に3D CADの導入を検討している企業も多いでしょう。ただしCADや3D設計ソフトの種類は多く、どれが自社に最適なのか分からないこともあります。大塚商会はお客様のニーズに合ったソフトの提案や価格交渉、導入後のサポートもいたします。

3Dスキャナー・3Dプリンターの導入

3Dスキャナーとは、対象物の3次元形状を読み取ることができる装置です。対象物にセンサーを当てて測定するタイプや、対象物に当てずに測定するハンディタイプなどさまざまな3Dスキャナーがあります。

過去製品などの資産を活かす「リバースエンジニアリング」や、3D CADデータと実際の製品の形状を比較・検査する「CAT(Computer Aided Testing)」が主な用途として挙げられます。

3Dスキャナーは物をデータへ変換する装置。一方で3Dプリンターは、設計データから物を造形する装置です。
設計データをいち早く、試作モデルとして確認したいとき、その効果を発揮します。

従来の工法であれば、設計したモデルを試作する場合、外注、もしくは自社内の製造部署などの加工機で製作していました。
社内外問わず製作を依頼すると時間やコミュニケーションが必要になり、場合によっては手戻り、作り直しもあるでしょう。
更に外注であればコストもかかります。
3Dプリンターがあればご自身で試作モデルを短時間で造形ができるようになります。
試作工数の削減によって最終の製品モデル決定までの時間も短縮することができます。

BIM/CIMに対応できる大塚商会の「AECコレクション」

大塚商会が提供する「AECコレクション(Autodesk Architecture, Engineering & Construction Collection)」は、BIM / CIM / i-Constructionのための建設業界向けオートデスクソリューションです。BIMは主に建築分野で使われ「建物情報のモデル化」のことです。CIMは主に土木分野で使われ「建設情報のモデル化」を意味し、インフラ全般を指します。

国土交通省は2023年までに小規模を除く全ての公共事業にBIM / CIMを原則として適用することを発表しているため、企業はBIM / CIM化への対応が必要です。

「INFRAWORKS」を利用すると現況の3次元モデルが簡単に作成でき、急斜面の可視化など、さまざまなシミュレーションを行えます。

また、3次元の地形モデルや土工モデルの作成には「CIVIL 3D」が利用可能です。検討段階レベルであればCAD上で設計を完結できる利便性の高いツールです。

大塚商会では導入のみならず、教育・研修や運用などもワンストップで支援するサービスを提供しています。もしお困りごとが発生したら、大塚商会へ相談してください。多数のサポート事例を持ったプロフェッショナルスタッフが対応します。

DX化によってムダのない現場管理が実現できる

ものづくり現場では高齢化や若手不足によって、生産性向上と業務効率化が急務です。現場によっては、紙の管理や属人的な作業が多く、DX化にためらいがあるかもしれません。しかし、今後の労働力人口の減少も考慮すると、企業間競争に生き残るにはDX化が必須と言えるでしょう。

大塚商会ではあらゆるソリューションを取り揃えており、お客様に最適な提案をいたします。ものづくり現場でDX化を図りたいと感じた際には、ぜひご相談ください。

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