【セミナーレポート】建設業の業務効率を上げるために

建築主要三法と電子帳簿保存法への対応策

今あらゆる業界でペーパーレス化による業務効率改善が進んでいます。建設業も例外ではありません。今回は、煩雑な業務に悩まされている、あるいはペーパーレス化を推進していきたいと考えている建設業の方向けに、建築図書の電子保存や押印に関する最新情報、取引関係書類の電子帳簿保存法(電帳法)への対応について解説します。

建築・建設業における図書の電子保存についてプロフェッショナルが疑問にお答えします

今回、第一部の講師としてお招きしたのは、株式会社ネオエンタープライズ 代表取締役社長 川谷 聡 様です。

ICT(情報通信技術)や建築設計図書の電磁的記録による作成と保存のコンサルティングを手掛け、公益社団法人 日本文書情報マネジメント協会(JIIMA) 建築市場委員会 副委員長を務める一級建築士の川谷様から、建築図書(図面類)の電子保存と押印廃止に関する最新の情報と保存要件、電子化の進め方について分かりやすく解説していただきました。

【第一部】図面類の電子保存と押印廃止について

建築物の設計から完成に至るまでには「建築士法」「建築基準法」「建設業法」という“建築主要三法”の適用を受けることになり、建築物の図書においてもこれらに基づいて適切に保存しなければなりません。

「建築士法」「建設業法」における“保存すべき図書”とは?

図面類のDXを進めるには、法令に基づく保存義務と保存要件を理解する必要があります。建築士事務所に所属する設計士が業務として設計を行った場合、建築基準法に基づく確認申請を行わなければなりません。その際に申請書と図面を提出し、特定行政庁・指定確認検査機関がこれを15年間保存します。建築士事務所には保存義務はありません。

一方で確認検査が完了し設計が終了すると、法令で定められた設計図書を建築士事務所の開設者は15年間保存することが建築士法と同施行規則で定められています。設計変更が生じた場合は設計変更後の設計図書を同様に保存します。また、工事監理を行った場合、工事監理報告書(写し)についても15年間保存する必要があります。

設計図書を受け取った建設業者は、一般的に施工図や詳細図などの施工に必要な図面を加え完成図(竣工図とも呼ばれます)を作成します。建設業法と同施行規則では、完成図や発注者との打ち合わせ記録等を10年間保存することが定められています。

建築物の図書は「誰が」「何の目的で」作成したかにより、法が求める保存要件も異なるのです。

建築物の図書の保存に関する法的根拠

建設業法では、第40条の3で営業所ごとに図書の保存義務を定めています。保存すべき図書に関しては「完成図」「発注者との打ち合わせ記録」「施工体系図」の三つです(施行規則第26条第5項)。保存期間については10年間とされています(施行規則第28条第2項)。そして施行規則第26条第8項においては「電子計算機に備えられたファイル又は磁気ディスク等に記録され」と記載されており、電子保存も可能であることがわかります。また、クラウドで保存する場合は、その営業所で閲覧・印刷できればよいとされています。

しかしながら、電磁的記録は痕跡なく追記・修正等の改ざんやすり替えが容易なため、長期間にわたって電磁的記録を原本として保存管理するためには、完全性、真正性、見読性、保存性の確保などを可能とする適切な対策を講じることが求められます。例えば訴訟が生じた場合、当該電磁的記録が改ざんやすり替え等の不正がないことを証明できなければ、証拠としての採用自体が難しくなることも考えられます。

建築基準法に基づく確認申請図書に関しては前述のとおり、保存義務が特定行政庁や指定確認検査機関に生じるので、基本的に確認申請添付図書を建築士事務所が保存する必要はありませんが、建築士事務所が保存すべき図書を確認申請図書に添付してしまった場合は、副本の写しを電子保存することになります。

建築士法に関しては、第24条の4に保存が規定されています。対象となるものは施行規則第21条第4項で示されている「配置図」「各階平面図」「二面以上の立面図」「二面以上の断面図」「基礎伏図」「各階床伏図」「小屋伏図」「構造詳細図」であり、そのほか「構造計算に係る図書」も対象となっています。保存期間は15年間です。

設計図書が電子保存できる根拠とは?

実は建築士法や同施行規則にも「設計図書を電子で保存してよい」とは書かれていません。設計図書を電磁的記録で作成し保存できる根拠は「e-文書法」と「e-文書法国交省令」です。この分かりにくさが、建築業界で設計図書の電子化が進まない一因といえます。

建築士法における設計図書の電磁的記録による作成は、建築士法第20条、e-文書法国交省令および国住指第1339号(技術的助言)により「建築士である旨の表示と記名があればよい」としています。ただし、国住指第1339号(技術的助言)には、電磁的記録を行う場合には「保存期間を通じて作成時と同じ状態であることが確認できるようにすること、具体的にはあらかじめ許可した者以外のアクセス制限、保存データへのアクセスログの記録ができること等」という要件が記載されています。

設計図書を電子保存するためにはどうしたらいい?

これまで、設計図書を電子的に保存するためには、記名と電子署名、電子署名の有効期限を延長するタイムスタンプが必要でした。しかし、現在では押印の廃止で電磁的記録の場合は建築士の記名のみでよいということになっています。また、今までは「電磁的記録をしたファイルを技術的に保護する」ことを推奨していましたが、これからは「建築士事務所の開設者の責任において正しく保存する」ことが求められるようになります。

CADで設計図面を作成した場合、CADから直接あるいは印刷・スキャニングしてPDFやTIFFを作成することは「電磁的記録による作成」にあたります。それをドキュメント管理システムによって社内のサーバーもしくはクラウドに保存した場合、前述の国住指第1339号(技術的助言)の要件を満たしているといえ、電磁的記録による保存に該当します。

PDFにタイムスタンプを付与してパソコンにファイルとして保存するのも有効です。保存だけであれば前者の方法でも問題ありませんが、電子的な設計図書の流通時の信頼性を考えるとファイル単位で非改ざん証明ができる後者のほうが効果的といえます。

設計図書の電磁的記録による作成と保存は、実務ではあまり進んでいないのが実情です。しかし、2021年9月1日の押印廃止にともない電子署名が不要となり、電子化へのハードルは大きく下がりました。今後建築・建設業においても電子化が進み、業務の効率化が図れることが期待されます。

【第二部】その見積、メールでやり取りしていませんか?
電子帳簿保存法改正を徹底解説!

第二部では、大塚商会でドキュメントソリューションに携わり、一般的なドキュメント管理をはじめ、e-文書法や電子帳簿保存法に精通する、大塚商会 統合戦略企画部の岡野純子が登壇。2022年1月に電帳法が改正されることで、見積書、契約書、注文書などの取引関係書類の電子保存に関してどのような点が変わるのか、対応方法を含めて解説しました。

見積書や注文書、注文請負書などの取引関係書類、いわゆる国税関係書類は電子帳簿保存法(電帳法)によって電子データで保存することが認められています。これまで電帳法の適用を受けるためにはあらかじめ税務署への申請を行わなければならない、紙の書類をスキャナ保存しても一定期間原本を保存しなければならないといったルールがありましたが、2022年1月に同法が大幅に改正され、これらの規制も緩和されます。今回は電帳法改正のポイントと注意点について解説します。

電帳法の適用を受けるための事前申請が不要になります

今回の改正の大きなポイントは「税務署への申請が不要となる」ことと、「スキャナ保存したら原本を廃棄してもよい」という点です。

これまで電帳法の適用を受けるためには3カ月前までに税務署に申請を行わなければなりませんでした。申請ルールも非常に難しく、企業にとってはハードルが高いものであったというのが実情です。今回の改正では、この申請が不要となりました。ペーパーレス化を推進したい企業にとっては追い風ですが、罰則も厳しくなります。国税関係書類のデータを紛失してしまったり、スキャンを失敗したのにも関わらず原本を捨ててしまったりといったミスが発生すると、青色申告の承認取り消しなどのペナルティが課せられるリスクもあります。

スキャナ保存は大幅緩和に 原本を即時に廃棄することも可能

国税関係書類のスキャナ保存に関しては、さらに要件が緩和されます。たとえば、これまで領収書を受領しスキャナ保存する場合は3営業日以内に自署を入れ、スキャン後に別の人がチェックしなければいけませんでした。改正後は自署やチェックは不要となり、さらにスキャンの期限も2カ月と7営業日に緩和されます。

また、タイムスタンプを付与した上で訂正削除の記録が残るシステムでデータを保存することが義務付けられていましたが、今回の改正ではタイムスタンプの規制も緩和されます。クラウドサービスのように自分で時刻情報が変更されていないことを客観的に担保できるシステムに保存すればタイムスタンプは不要です。

ただし、「訂正削除前の内容が確認できることとする」という要件は変わりません。新しくシステムを導入するにしても、それがこの条件をクリアしているかどうかを判断するのは容易ではありません。そこで着目したいのが「JIIMA認証制度」です。JIIMAに認定されているシステムであれば、電帳法に対応しています。認証を受けているシステムはJIIMAのホームページで確認することが可能です。

また、これまで国税関係書類の原本はスキャナ保存後も定期検査を受けなければ廃棄できませんでしたが、改正後はスキャンが適切にできていればすぐに廃棄できるようになります。

大幅改正 良いことばかりではない 改正で厳しくなる部分も

電帳法の改正によって国税関係書類の電子保存に関する規制は大幅に緩和されますが、一方で厳しくなる部分もあります。「うちは電子取引をしていないから関係ない」と思われるかもしれません。しかし、メールやクラウドで見積書や請求書を送る、ペーパーレスFAXで注文書をやり取りしているといったケースも電子取引とみなされます。

たとえば、請求書をメールで受領して紙に印刷し、経理部署に提出・保存する行為はNGとなります。注文書をFAXで受信してパソコンで請書を作成・送信し、それを印刷・保存するケースもNGです。領収書、見積書、契約書、注文請書など金額の記載がある国税関係書類が電子データとして送られてきた場合は、電子データとして保存しなければいけません。今まで紙で保存していた場合は、業務フローを変更する必要があります。

電帳法改正までに準備することとは?

以上のように、電子取引を行った場合はデータを保存する必要があります。保存要件として

  1. タイムスタンプを相手が付与すること
  2. タイムスタンプを自社で付与すること
  3. 訂正削除の記録が残るシステムで保存
  4. 事務処理規程の作成・運用

のいずれかを満たさなければなりません。(1)と(4)は難易度が高いため、(2)か(3)の2択となります。また、四つの保存要件以外にも「日付・金額・取引先名で検索できること」が条件となります。

たとえば、電子データを作成する際にタイムスタンプを付与でき、訂正削除記録が残るシステムに保存する、あるいはデータ保存時にタイムスタンプを付与し訂正削除記録が残るシステムを利用すれば要件を満たすことができます。効率化を考慮するなら後者を選択するのが得策といえます。

電帳法の改正をきっかけに、紙の国税関係書類はスキャンして電子データ化し、電子取引のデータと一元管理するというように、ペーパーレス化を進めてみてはいかがでしょうか?

【まとめ】正しく理解して 建設業の業務効率化を図ろう

国税関係書類に加え図面も多く取り扱う建設業においては、関連する法の要件を正しく理解してペーパーレス化を推進すれば、業務効率の大幅な改善が見込めます。これを機会にぜひご検討ください。

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図面類の電子保存と押印廃止について~建築基準法、建築士法、建設業法における保存要件と電子保存

(再生時間:29分54秒)

図面類(設計図書など)の法的保存義務に着目し、同じ建物であっても適用される法令により保存要件がどう異なるのかを解説。特に建築士法で規定していた設計図書への押印義務が9月1日の改正で廃止されたことにより、電子保存の考え方やその方法がどう変わるのかを解説します。

その見積、メールでやり取りしていませんか?~電子帳簿保存法改正を徹底解説!

(再生時間:28分54秒)

2022年1月の電子帳簿保存法改正のポイントを徹底解説。メールで見積り・注文書や請書の授受をしている方、電子上で支払い・請求データの授受をしている方などは必見です。

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