粗利を正しく把握できていますか?

前回(7月23日)のケーススタディでは、管理会計におけるシステムの活用についてお話しました。

ケーススタディ7月23日号

今回は管理会計の基本となる利益に関するお話です。

企業の業績(利益)を管理する指標の一つに「粗利」というものがあります。
商品や製品の販売によってどのくらい儲けたのかを示す指標です。

粗利の定義は業種や業態によって異なりますが、「売上高」からその売上に対応する「売上原価」を差し引いて計算する点は基本的に同じです。
卸売業や小売業では、この粗利のことを貢献利益と呼ぶこともあります。
貢献利益とは、売上から変動費を差し引いたもので、損益分岐点分析においては固定費を回収するための源泉になります。
製造業では製造原価に固定費が含まれるため、「粗利=貢献利益」とはなりません。

では「売上原価」とはどのようなものでしょうか。
売上原価は、文字通り販売した商品や製品の原価のことですが、仕入原価や製造原価とは異なります。
仕入れや製造をしても、販売されずに在庫となっているものは売上原価に含まれないからです。

財務会計では、損益計算書の「売上総利益」が「粗利」に相当します。
売上総利益を計算する売上原価は、「期首商品(製品)棚卸高+当期仕入高+当期製品製造原価-期末商品(製品)棚卸高」で計算されます。
どの金額も全社の合計値であるため、把握することは比較的容易だと思います。
実際にはこれらに棚卸減耗や在庫の評価損なども加わります。

一方、管理会計では、部門別、得意先別、製品別など財務会計よりも細かく業績を管理することが多く、そのサイクルも短いため、売上原価をどのように計算するのかということは意外に難しい問題となります。
財務会計と同様の在庫評価方法を用いている会社もあれば、粗利算出用に別途設定した標準単価を用いている会社もあります。
最近の販売管理システムは、粗利計算に用いる原価を事前に設定できるものが多いと思います。

財務会計と同様に月次総平均法などを用いる場合、商品の仕入や製品の入庫によって単価が変動するため、同じ商品や製品を同じ価格で販売しても、販売するタイミングによって粗利は変わります。
一見、リアルタイムでよいようにも思えますが、購買部門の仕入実績や製造部門の製造実績が粗利に影響するため、販売部門単独の業績は適切に把握できないことになります。
また、仕入や入庫の入力が遅れると、販売時点の原価が正しくならないという問題もあります。

標準単価を用いる場合、粗利の計算において仕入実績や製造実績の影響を排除することができます。しかし、標準単価が仕入実績や製造実績と乖離すると会社全体の利益を正しくあらわさなくなるため、標準単価の設定基準、実際原価との差異分析による定期的な見直しルールなどの整備が必要となります。

これらは一例に過ぎませんが、どちらかを採用すべきなのかは、企業の判断によって異なります。
システムを導入する際は、メリットとデメリットを正しく識別し、誰がどのような目的で利用する指標なのかを十分に検討することが重要です。

次回は2012年10月29日(月)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 コンサルタント

岸塚 大季

平成13年入社。財務会計、管理会計、内部監査に関する専門性を活かして、業務改革、システム企画、決算早期化、内部統制の構築・評価、IFRS(国際会計基準)対応などのコンサルティング業務に従事。
システム監査技術者、公認情報システム監査人(CISA)

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