「BIツール導入成功」のために、よりよいデータ分析環境を整備する

最近、皆様の周りでもBIツールについて耳にする機会が増えてきたのではないでしょうか。
基幹システムに蓄積されたデータをさらに有効活用したり、管理会計などの情報と複合的に分析したりすることで、組織の様々な意思決定に成果を上げている企業が増えています。
しかしながら一方で、当初期待したほどの効果が出せない、あるいはせっかく導入したシステムが使われなくなってしまうケースが少なくないのも事実です。

一般的に、BIツール導入の失敗の理由として「目的や要件が曖昧」「上流システムのデータが使えない」「利用者のスキルが不十分」「データ分析の環境が整わない」等が挙げられます。
今回は、これらの中でも後回しにされがちな「データ分析環境」に注目してみたいと思います。
なおここでは「データ分析環境」を、ひとまず「BIツールをとりまく人的、あるいはシステム的な仕組みや運用ルールのこと」として話を進めます。

BIツールといえば、表現力豊かなグラフや表、ドリルダウン・ダイシングなど切り口を自在に切り替えての分析に目が行きがちです。
事実、私がBIツール導入を支援させていただく際も、話の中心は、やはり「どんな分析を行うか」「どう表現するか」が中心となります。
しかしその際、私は必ず、BIツールをとりまく運用環境について、ディスカッションする場を一定の時間割いていただけるようお願いしていますが、今回は、この場でよく取り上げるテーマを、次の三つの切り口でご紹介します。

  • 運用フローと役割分担の明確化
  • それらを支えるシステム運用環境の整備
  • 秩序ある自由

1.運用フローと役割分担の明確化
BIツールの分析対象となるような業務領域では、従来Excelを主として、限られたメンバー間でメールなどによる柔軟な運用が行われてきました。
しかしBIツールという、言わば別システムへのデータ連携を行うためには、こうしたデータのやり取りに一定のルールや手順が必要になります。
例えば「収集する複数のデータの間で、前提条件を合わせる」ことを人が管理するなど、運用管理者の担う役割は、ある意味「基幹システム<BIツール」となるかもしれません。しかし、こうした運用フローや役割分担を最初から考慮に入れて臨まれる会社様は少ないというのが事実です。

2.それらを支えるシステム運用環境の整備
またこれらの運用は、当然セキュアな環境下で行われることが求められますし、事業計画など、過去の結果検証も求められる業務では、分析元データの版管理やアーカイブによる再現性の維持も人手で行う必要が出てきます。
細かい話ですが、収集する分析元データのファイル名や、格納するサーバのフォルダ構成に至るまで、実は考慮しなければならない点は多数あるのです。

3.秩序ある自由
ここまで、どちらかと言えば”より厳格な運用”が求められるポイントを中心に話を進めてまいりましたが、実は一方で”より自由な運用”ができるよう注意を払う必要があります。
なぜなら、BIの重要な本質の一つとして「現場の利用者が主体となって、想像力を働かしシステムそのものを変化、発展させる」ことが望まれるからです。
今までにない新しい知見を多く発見するためには、よい分析事例の横展開(チャートや分析パラメータの保管、配布)などは積極的に行われるべきです。
しかしながら、これが無秩序に行われると、結果的に情報の信頼性や精度が損なわれ、「あてにならない情報を産み出す高いおもちゃ」と化してしまうリスクが高まってしまいます。
スキルの高いメンバーを現場に増やしてゆくことが重要であることは言うまでもありませんが、最初からこれができる企業は決して多くないのではないでしょうか。
少なくとも当初は、一定の管理下での”自由な運用”が行われる必要があります。

今回はBIツールそのものには触れず、BIツールをとりまく周辺環境を整えるというテーマをご紹介しましたが、いかがでしょうか。
このテーマの重要性を少しでもご理解いただき、BIツールのご検討、ご導入の一助としていただければ幸いです。

次回は12月16日(月)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 コンサルタント

中村 博

アプリケーションSEとして、基幹業務システムの開発・運用支援に従事。その後、コンサルティング部門で業務改革コンサルティング、ステム企画、内部統制コンサルティング等に携り現在に至る。システム監査技術者、システムアナリスト、プロジェクトマネージャー 他

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