部門費の配賦は分かりやすくシンプルに

前々回(2012年7月23日)と前回(2012年10月15日)の2回にわたって管理会計に関する内容を書きました。

ケーススタディ7月23日号

ケーススタディ10月15日号

今回は部門別損益管理における「配賦」についてです。

中堅卸売業のY社では、会計システムの入れ替えに伴って部門別の損益管理を強化したいと考えていました。
Y社では以前から売上高や売上原価を部門別に管理しており、経営会議では部門別の売上総利益が報告されていましたが、今後は販売費や一般管理費も部門別に管理することで部門別の営業利益まで把握できる仕組みを構築しようとしていたのです。

コストを部門別に管理する場合、部門に個別に紐付けられる直接費はそのまま集計できますが、部門に紐付けられない間接費は当然ながら何らかの方法で各部門に配賦する必要があります。

間接費を配賦するためには、一般的に、【1】何を基準として配賦するか(配賦基準)、【2】配賦基準を部門ごとに設定するか(総括配賦/部門別配賦)、【3】配賦基準を費目ごとに設定するか(一括配賦/費目別配賦)などをあらかじめ決めておく必要があります。
配賦基準は、配賦対象となる費用発生との因果関係が強く、経済的に把握できるものを選定します。

Y社では、費用の性質に応じて、給与などの労務費は人件費比、福利厚生費や事務用消耗品比は構成人数比、家賃や建物減価償却費は占有面積比など、経理担当者が費目や費目内訳ごと配賦基準を決めていきました。
また、売上を計上しない間接部門については、それぞれが支援している部門を洗い出し、部門費を段階的に配賦するという方法を考えました。

このような配賦の検討において悩ましいのが、どこまで細かく計算したらよいかという問題です。
配賦とは費用を合理的に配分するためのルールでしかありません。そのため、あまり細かく計算しても意味がないという考え方もあるのです。

Y社においても、経営層から「もっと簡単な計算方法でよい」という指示があり、配賦方法を再検討することになりました。
既に発生したコストをいくら細かく配賦しても、全体のコストが削減されるわけではないというのが最大の理由です。
また、本社経費のように各部門がコントロールできないコストについては、各部門が納得してもらえることが重要であるため、分かりやすい方がよいと判断したのです。

最終的にY社では、間接費の配賦を補助部門と管理部門の2段階とし、配賦基準も売上高比や費目予算比といったシンプルなものに変更しました。

最近のシステムでは、様々な配賦基準を設定することができ、多段階の配賦なども可能になっているため、計算方法さえ設定しておけば計算そのものには手間がかかりません。
複数の配賦パターンを設定することでシミュレーションなどもできてしまいます。

しかし、これらの機能を使うこと自体が目的となり、計算方法という手段の検討に終始してしまっては本末転倒です。
何のために管理するのかという目的を明確にした上で、範囲や方法を考えることが肝要です。

次回は2013年6月17日(月)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 コンサルタント

岸塚 大季

平成13年入社。財務会計、管理会計、内部監査に関する専門性を活かして、業務改革、システム企画、決算早期化、内部統制の構築・評価、IFRS(国際会計基準)対応などのコンサルティング業務に従事。
システム監査技術者、公認情報システム監査人(CISA)

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