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業務の見える化の進め方<5> 「エラーの発見と是正」
前回、「業務の標準化」について書きましたが、今回は標準化したとおりに実行するために何が必要なのかという視点で進めていきたいと思います。
業務改善や業務の標準化における最後の仕上げが、定着と言われるフェーズです。定着させるためには、「エラーの発見と是正」という仕組みを作ることが重要です。これがなければ、せっかくの標準化作業も継続できないことにあなり、まさに「画竜点睛を欠く」ということになります。
まず、エラーの発見です。ここでは、「そもそもエラーって何?」という点を明確にしないといけません。エラーというとネガティブに捉えがちですが、必ずしもそうではありません。
企業活動の中では、例外的な対応・処理が発生するものです。大事なことは、標準化された業務と異なる事象を発見し、原因を特定することです。原因の中には、今回のみというものもあれば、継続するもの、ケアレスミスによるものもあります。その原因に
よって対応方法を検討していくことになります。
では発見するための仕組みについてです。チェック対象により異なりますが、まずは、タイミングを決めることです。概ね、月次・4半期のチェックを行う場合が多いかと思われます。(内部統制として機能させる場合、日次や随時も必要ですが)本来実施しなればならないプロセスが漏れる(省略される)場合であれば、システムのデータ件数比較などによって発見する手法があります。
また、承認関連では閾値データの有無と承認データの件数比較も利用できます。このように件数比較できるものはシステム情報を利用することで省力化が図れます。では件数比較ができないものに関してはどうするのという問題です。
最も効果的な手法は自己点検報告と定期的な業務監査を行うことです。自己点検報告は、エラーの発見のみならず、業務手順の徹底にも効果があります。4半期に1回程度は、エラーの有無に関して点検、報告させることが有効です。業務監査はさほど頻繁に実施できるものでもありませんし、全件チェックという訳にもいきません。このため無作為の検査と特定のテーマ範囲を絞った検査を行います。この2種類により、業務実施者の意識を高めエラーの発生を抑制させるとともに、必要な例外処理情報の事前収集を可能とします。
そして是正活動です。是正というのは、エラー処理実施者に対する指導は当然ですが、他に2点、留意しなければなりません。1点目は、エラーの発生を許したプロセスやシステムに不備はないのかという検証です。システムでロックすべきところが機能していなければ、今後も同様の事象が発生します。エラーの防止策を見直す必要があります。
2点目は、そもそもの業務プロセスに問題がないかです。標準化作業後の環境・取引条件の変化によって、当初策定したプロセスが有効でない可能性もあります。この場合、適切に業務プロセスを見直さなければなりません。「この程度はいいか」という形で放置すると、例外処理が隠れた部分で増殖していきます。必ず、「この例外はこうする」という決め事を作ることが重要です。
これらの発見と是正活動を継続することで、定着が進み、結果として業務の見える化が達成されることになります。
次回は2012年6月25日(月)の更新予定です。
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