月次決算の早期化でタイムリーな経営判断を実現!

 最近は上場企業に限らず月次決算を行う会社が増えており、基幹システムの構築に伴って月次決算を早期化したいと、いうご相談を受けることが多くなりました。月次決算は、法律で強制される制度会計ではなく、企業が自らの意思決定のために行う管理会計に分類され、部門損益管理や予算管理などと組み合わせることで経営判断の基礎となります。

 中堅卸売業のA社では、月次決算の数値を基に作成した業績管理資料を用いて経営会議を行っていました。しかし、月次決算の数値が確定するのは翌月20日頃であり、それから資料を作成していたため、毎月の経営会議は翌月末近くになっていました。経営者や管理者は、会議を開くまでもなく日々の業績を把握していましたが、会社の意思決定機関である経営会議が遅れることで、市場の変化に対応できないリスクを抱えていました。

 決算が遅れる要因は企業によってさまざまです。A社の場合は、「仕入実績の確定が遅いこと」が一番大きな要因でした。
それまでは、月初に仕入先から請求書が到着すると、購買部門が納品書と照合して差異がないことを確認し、仕入先との支払条件の調整を行なった後に、経理部門へ報告して仕入実績を確定させていました。特に支払条件については、売掛金との相殺、振込と手形の金額按分などを手作業で行っており、担当者の負荷が高く、非常に時間がかかっていました。

 A社では基幹システムの再構築にあたり、システムの機能を有効活用するために、業務の見直しを実施しました。日々の商品が倉庫に入荷されると、倉庫担当者は納品書を基に購買管理システムへ仕入入力を行いますが、請求書の到着を待たず、仕入データに基づいて日次で会計システムに仕入買掛の仕訳を自動計上する仕組みに変更しました。

 また、購買部門で行っていた請求書照合や支払条件の調整は、月次決算業務としてではなく翌月の支払業務と位置付けることで、月次決算には影響させないことにしました。

 さらに、時間のかかっていた支払条件の確定は、債務管理システムの支払依頼機能や相殺処理機能を利用し、事前に設定したマスタに基づいて自動化しました。

新基幹システムの稼動後、月次決算は翌月10日、経営会議の開催は翌月15日まで短縮することができました。

 月次決算では、年次決算と異なり正確性より迅速性が重視されます。正確でない情報に基づいて処理することは望ましくありませんが、合理的な根拠に基づいてタイムリーに処理し、最終的な調整は翌月や年次決算で行うという割り切りも必要になります。A社の場合は、事前の調査によって納品書と請求書の差異が少ないことが確認できたため、差異が発生した場合は翌月の仕入で調整するというルールを定めました。

 決算早期化は経理部門の努力だけでは実現することができません。関連部門と協力し、業務改善とシステム活用を上手に組み合わせて、自社の状況に合わせた取り組みを行うことが必要です。

この記事の著者

株式会社大塚商会 コンサルタント

岸塚 大季

平成13年入社。財務会計、管理会計、内部監査に関する専門性を活かして、業務改革、システム企画、決算早期化、内部統制の構築・評価、IFRS(国際会計基準)対応などのコンサルティング業務に従事。
システム監査技術者、公認情報システム監査人(CISA)

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