本支店会計から部門管理に移行するメリット

支店や事業所ごとの業績を管理する方法の一つに本支店会計というものがあります。

本支店会計とは、本店と支店にそれぞれの会計帳簿を設け、本支店間や支店間の内部取引を記帳することで独立採算の業績管理を行う記帳方法です。決算においては、本店と支店がそれぞれの帳簿を締め切り、それらを合算して社内取引の相殺や内部利益の控除を行って最終的に企業全体の業績を確定させます。

複数の支店がある企業では広く採用されている方法ですが、もともと帳簿を手書きで作成していた時代に考え出された方法であるため、現在のように拠点間がネットワークで結ばれているシステム環境においては必ずしも合理的とは言えない場合があります。

自動車部品の中堅卸売業であるR社は、全国に8ヶ所の営業所があり、本支店会計によって営業所別の業績管理を行っていました。営業所には独立採算の考え方が根付いていたため、営業所別の採算に対する意識は高かったものの、企業全体の利益や商品別や得意先別などの分析には時間がかかっていました。また、各営業所の経理担当者は、社内取引を含むすべての仕訳をそれぞれでシステムに入力していたため、日々の伝票処理だけでも相当な業務量になり、入力のミスやタイムラグも多く発生していました。特に月次決算では社内取引を相殺するための照合勘定の差異調査に追われていました。

R社では、老朽化した基幹システムの全面刷新を契機に本支店会計を廃止することを検討しました。会計帳簿を全社で一元化し、パッケージソフトの部門管理機能と分析機能を利用することで、タイムリーで柔軟な業績管理と業務効率化の両立を目指したのです。

部門管理に移行する上で課題となったのは営業所別の在庫でした。R社では営業所ごとに仕入れを行っており、営業所間の取引には内部利益を乗せた振替価格を用いていたため、同じ商品でも営業所ごとに在庫評価金額が異なっていました。独立採算であれば当然のことですが、これが全社的な分析を行う上での阻害利益にもなっていたことも事実でした。R社は独立採算の考え方の一部を見直し、在庫評価単価を全社で統一しました。それまで当たり前のように行っていた社内取引を廃止し、標準原価を用いた社外取引重視の利益管理に変更したのです。

本支店会計がなくなったことで伝票枚数は半減し、営業所の業務負荷は大幅に軽減されました。さらに、各営業所に配置していた経理担当者を集め、伝票処理や支払い業務を集中管理することで、業務効率の向上と人的資源の最適配置を実現することができました。

業績管理の方法は業種や組織形態によって異なるため、すべての企業にこのような対応が当てはまるわけではありません。しかし、明確な理由がなく昔からの慣習で本支店会計を採用している企業には見直しの余地があるかもしれません。

次回は10月21日(月)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 コンサルタント

岸塚 大季

平成13年入社。財務会計、管理会計、内部監査に関する専門性を活かして、業務改革、システム企画、決算早期化、内部統制の構築・評価、IFRS(国際会計基準)対応などのコンサルティング業務に従事。
システム監査技術者、公認情報システム監査人(CISA)

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