システムを活用して管理会計をもっと身近に

企業の経営者や管理者が意思決定や業績評価のために行う企業内部向けの会計を管理会計と言います。
「会計」という言葉のイメージから「経理部門が行う業務」と考えている方もいらっしゃるかもしれませんが、必ずしもそうとは限りません。
ここでいう「会計」とは取り扱う情報の単位が「金額」であるという意味だけで、財務会計のように法令や基準で定められているものではありません。
企業や各部門が必要に応じて自由に行うことができるものなのです。

中堅製造業のK社様では、長年使用していたオフコンの基幹システムを刷新するためにプロジェクトを立ち上げ、各ベンダーに対する提案依頼資料を作成されていました。
新システムの対象業務は、会計管理、販売管理、生産管理、原価計算などであり、プロジェクトメンバーは経理部門の担当者を中心に構成されていました。

K社様の作成資料には、会計システムに求める機能要件として「管理会計機能」という記載がありました。
当時プロジェクトを支援する立場であった私は、この管理会計機能が具体的にどのような機能を想定しているのかをお伺いしたところ、「部門別の損益計算書と予算実績対比表がシステムで出力できればよい」ということでした。

一見、何の問題もなさそうですが、この表現では読み手であるベンダーの解釈次第で、システムの機能が深くも浅くもなってしまいます。

管理会計の基本が「部門別損益管理」と「予算管理」であることは間違いありません。
しかし、ひとくちに部門といっても組織上の部門以外に得意先や製品などの単位が考えられ、どのような部門で実績を管理するのかによってシステムに求められる機能が異なります。

最近の販売管理システムでは部門別、得意先別、製品別に売上や粗利を管理することができますから、これだけでも立派な管理会計システムといえます。
利益に関しても、計算に使用する原価を標準原価とするのか実際原価とするのか、全部原価とするのか部分原価とするのかなどによってシステムに必要となる機能は大きく異なります。

K社様のプロジェクトでは、営業部門と製造部門において管理者向けに作成されている実績管理資料の棚卸と、管理者に対するヒアリングを行い、全社的な視点で管理会計の要件を再検討することになりました。
再検討の過程で、営業部門では販売管理システムの粗利から運賃や手数料などの販売経費を控除した利益を手作業で集計していることが分かりました。

また、製造部門では材料費や外注費などの変動費のみを集計した直接原価計算による貢献利益を独自に計算していることが分かりました。
プロジェクトでは、これらの集計や計算に関する機能を新システムの要件として新たに組み込むことを決定されました。

管理会計というと何か特別なものと考えられがちですが、その実態は経営者や管理者が企業活動の中で日常的に把握・管理している情報ばかりです。
システムやデータを経営に役立てるために、経営者や管理者が求めている情報は何かということを考えていくことこそが管理会計の第一歩なのです。

次回は2012年8月6日(月)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 コンサルタント

岸塚 大季

平成13年入社。財務会計、管理会計、内部監査に関する専門性を活かして、業務改革、システム企画、決算早期化、内部統制の構築・評価、IFRS(国際会計基準)対応などのコンサルティング業務に従事。
システム監査技術者、公認情報システム監査人(CISA)

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