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そのシステムのその数字は信用できますか?”数字は嘘をつく-システム編-”
世の中には、様々な数字があふれかえっています。しかし、その数字をそのまま鵜呑みにしてしまうことも危険であるといわれています。例えば、「~率」といった数字は、母集団と呼ばれる分母の取り方によって、いかようにも変化させることができます。単純な金額表示でも同様です。「本取り組みによる想定効果は、¥xxxです。」という場合など算出期間が不明確であったりすると、その数字の意味は全く変わってきます。
では、会社で利用しているシステムから出力される数字は信用できるでしょうか? 「経営の見える化」「可視化経営の推進」などという言葉をよく見かけますが、そもそも見えている(と思っている)数字が嘘であれば・・・。システムの数字は常に信用できるのでしょうか。答えはNoです。
例えば、A社では、顧客からの返品削減を年度目標に掲げられました。返品は売上の減のみならず、事務処理の増加や入出庫業務、保管業務の増加を伴います。業態によって差違はあるものの、概ね歓迎できない事象でしょう。そこで、A社では返品の実態を可視化するということで、販売管理システムに、返品状況や返品傾向、推移などを分析できる機能を実装しました。経営層・部門長は、この機能を利用して、返品改善に取り組めるものと考えていました。しかし、そこには落とし穴がありました。販売管理システムから出力される返品実績の数字は嘘の数字だったのです。
嘘の数字というと、システムの障害やバグといったことが連想されますが、システムは正しく機能しています。ただ、運用が問題だったのです。ある営業マンは、返品内容を、売上値引として、伝票処理をし、別の営業マンは、請求時値引きで処理をしているなどが判明したのです。つまり、得意先との売掛金管理上は正しく処理できているが、自社の返品の実態を把握できるような運用にはなっていなかったのです。もちろん、正しく返品伝票で処理している営業マンもいますが、返品の実態を可視化するという目的を達成しているのかと問われれば、できていませんということになります。
企業は、導入しているシステムから出力される数字をもとに、様々な分析、判断をしていかなければなりません。そのためには数字が嘘をつかないようにすることが重要です。業務ルールが明確になっているのか、その運用は徹底できているのかが重要となるのです。現場業務の効率化、間接コストの圧縮を目標に業務改善をされる企業は多いですが、正しい数字を取得するために、業務改善をするという企業は少ないかもしれません。我々が、業務改革のコンサルティングを提供させていただいているお客様の中でも、上記のような事象が隠れている場合が、案外多くあります。
システムから出力される数字は嘘をついていないか?今一度、自社の業務ルールが明確になっているか、その運用は徹底できているかを確認してみることで、新たな問題を発見できるかもしれません。その改善こそが、可視化経営の第一歩になるといっても過言ではないかと思います。
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