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「見える化」指標は点・面・線の三つで診る
最近のシステムでは、明細情報を大量保持し、様々なデータ分析が可能となってきています。
基幹系の業務システムの機能だけでなく、データ分析ツール(BIツール)などを利用した高度な分析システムを導入することも容易になってきています。しかしながら、ツールの進歩に対して、管理レベル・管理手法が追い付いていないのでは、という指摘をさせていただくことも少なくありません。
可視化経営のための基本要素は、「現状が見える」「原因が追究できる」「対策が打てる」の三つです。
今回は、このうち「現状が見える」という要素に関して、何をどのように見るのかという話題で進めたいと思います。
まず、どのような数値・指標を管理するのかというところから始まります。前年伸長や予算達成率などを中心に管理される場合が多いかと思います。
予算達成率に関しては、単純な売上予算や粗利予算の場合もあれば、納品率、歩留まり率などに関しても目標値とし達成率を見ることができるものです。
さまざまな指標を用いて、自社の現状を見える化していく、改善のための指標とすることは企業の成長にとって、非常に重要な要素であることは、疑いようもないことです。
そして、多くの企業がこの指標管理に取り組んでいます。
では、なぜ管理レベル管理手法が追い付いていないと感じることがあるのか。
それは、多くの企業で、指標を点として管理されている企業が多いということです。分析ツールの利用方法でも同様の事象を見受けます。
特に経営ダッシュボード(さまざまな指標を1元的に管理表示する仕組み)を構築される場合に顕著になります。
それは、表示されている指標がある時点での集計値であることが多いということです。
例えば、売上予算の達成率を管理している場合、達成率108%だとどうでしょうか。
確かに全社目標としては達成ですので問題はありません。これが90%というような数値であった場合、原因追及を行われるのですが、達成時には達成原因の追及は行われません。
108%の達成率ではあるが、部門別に見た場合に、150%超の部門と75%達成の部門があれば、どうでしょうか。
指標管理では、その指標を構成する要素(部門、得意先、商品分類など)の数値が予測通りなのか、問題がないのかという点も診なければなりません。
全体が達成であっても構成要素で問題があれば、アラートを発する必要があります。これが、「面で診る」ということです。
次に、今月108%達成という例で、前月まで110%以上の好調を維持していたのに今月が108%だとどうでしょうか。
また、前月まで未達成が続いていたが、今月108%という場合や、安定した108%の場合はどうでしょうか。
同じ108%でも数字の示す意味合いは変わってきます。これが、「線で診る」ということです。
数字のマジックという言葉があります。
これは、同じ数字でも見せ方、見方によって、異なる数字に見えてしまうということです。
つまり、本質を見逃してしまう可能性があるということです。指標でさまざまな事象を管理していこうとするときの注意点であるといえます。
指標は、「点で診る」「面で診る」「線で診る」。この三つの視点で管理できるようにシステムを構築いただくことを強くお勧めします。
次回は9月17日(火)の更新予定です。