あえてシステム化しないことでの全体最適

「業務の効率化を行うには、ITの導入は必要不可欠です!!」

SIerのコンサルタントを生業にしてますので、これを否定すると会社の偉い人に怒られてしまいますし、実際多くの場合、システム化が業務改善のための重要な施策になります。

では、何でもかんでも予算が許す限りシステム化すれば良いかと言うと、答えは「NO」です。予算があっても「システム化しない方が良い」ことは沢山あります。私がお客様のシステム導入プロジェクトをご支援させていただく時には、「システムでは業務の7~8割をカバーできれば良いと考えて行きましょう」と、必ず最初にお話しする様にしています。

残りの2~3割を無理にシステムでカバーしようとすることで、主要な7~8割の業務の効率を下げてしまう場合が多いのです。2~3割の業務の負荷が改善されない、もしくは逆に手間が増えてしまったとしても、主要業務の効率化をより追求した方が、業務全体で見たときに大きな効果が得られ、かつシステムの開発コストも抑えられる場合が多いということです。

理容機器卸のB社では、当日出荷の〆時間に向けて、大量の注文が電話で入ります。また、お客様に電話を掛けて注文を取る形での受注も多くあります。似たような商品が多い中で、お客様の注文を早く間違いなく受けるために、オペレータが手書きの注文用紙で受注、パンチャーが入力、ベテランスタッフが注文用紙と入力データの照合を行っていました。ベテランスタッフによる照合は、「このお客様にこの商品は出ないはず・・・」「この発注量は多すぎる・・・」など、強力な論理チェックも働いており、誤受注は月に1件あるかないかの状況です。

現状の人員と受注量であればこのままでも良いのですが、中期経営目標で売上を3割伸ばすことを掲げているB社では、それに伴って増えていく受注量に業務が対応できません。オペレータやパンチャーは単純に増やせば良いのですが、チェックを行えるベテランスタッフは簡単には補充できませんし、取引先が増えれば当然、記憶に頼った論理チェックは破綻してしまいます。

そこで、「誰でも早く間違いなく受注する方法は・・・」と考えたときに、すぐ頭に浮かぶのがCTIの導入です。電話番号でお客様を特定し、販売実績のある商品の一覧を表示して、数量のみを入力する方法です。これにより、得意先の間違いはないですし、リピートが多いので商品の間違いも起こりにくいし、直近の発注量も確認できます。

これにより、全体の7割程度の受注に関しては、今の精度を落とさずに効率化できそうなイメージを現場の方々にも持って頂けたのですが、導入には難色を示されました。

「電話番号が当たらなかった時は?」「一覧にない商品を頼まれた時は?」「複数の店舗や納品日を指定された時は?」

等々、残り3割の注文を心配されているのです。

「その時は、今まで通り手書きの注文用紙に書いてください、7割カバーできれば残りの処理に倍の時間がかかったとしても、十分に効率化に繋がります」(この後、自分の仕事が無くなると考えたベテランスタッフとのやりとりがあるのですが、それはまた別の機会に・・・)

もちろん、残りの3割部分に対応した受注画面を作ることも可能ですが、開発費用の増加や、入力レスポンスの低下に繋がってしまいます。また、パッケージの根幹を崩してしまうことにも繋がり、パッケージを利用するメリットも損なってしまいます。

業務の全てをシステム化するのではなく、システムを上手く利用して全体の効率化をはかる方法をお客様と一緒に考えて行ければと思っております。

この記事の著者

株式会社大塚商会 コンサルタント

野呂田 章宏

平成8年入社。アプリケーションSEとして10年間、業務システムの開発・運用に従事。その後、セールスサポート部門での、システム企画・提案を経て、現在のコンサルタント職に至る。業務改革とシステムの両軸から、お客様の経営課題解決と利益追求に貢献。

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