「やらなくても困らないこと」は、現場はやってくれない

多額の投資をして、どれだけすばらしいシステムを構築しても、現場で利用してもらえなければ、そこからは何の価値も生まれません。

例えば、基幹システムであれば「受注を入力しないと商品が出荷されない」ですとか、経費精算システムであれば「申請しないとお金が貰えない」など、多少システムの操作性が悪かったり、作業が面倒だったりしても、「やらないと困る」ので現場では利用し続けられます。

しかし、非基幹系のシステムである、「SFA(営業支援システム)」や「事例共有システム」などは、現場で活用されずに塩漬けになってしまった事例をお聞きするケースがあります。

それらに共通して言えるのは、「利用しなくても現場では困らない」システムになっていたということです。

旅行業社のC社では、SFAの導入に否定的でした。その理由は、「過去に1度それらしいシステムを導入したが、今は活用されていない」ことにありました。詳しく話をうかがうと、「当初は、見込み発生から受注まで、決められた活動履歴を入力しないと、受注処理できない仕組みにした」とのことでしたが、すぐに現場から「これじゃぁ業務が回らない」とクレームが入り、その制限をとってしまった経緯がありました。

次に「そのシステムに入力された活動履歴や数字は何に使っているのですか?」とうかがうと、「上司や統括部門が閲覧・集計できるようにしています」とのお話でした。しかし現場では、実績集計のためのシステムやEXCELや報告書が他にも沢山あり、営業に
は大きな負担になっていました。上司は使いなれた独自のフォームで報告書を書かせてますし、統括部門は欲しい書式を現場に回して集計をとっており、そのシステムが活用されていなくても「誰も困らない」のです。忙しい日々の中で「誰も困らない」作業が後回しにされ、いずれ利用されなくなるのは想像に難くないことです。

そこで、このお客様に提案したのは、「SFAを導入するからには、報告作業や見込みの管理をすべてSFAの入力情報を『正』として、その情報から集計するルールにする」ことです。そうすることで、「入力しないと困る」状況が作りだせます。逆に、「SFAにさ
え正しく入力すれば、他の報告や集計に関する業務から解放される」メリットを提示することも可能です。これは、「活用が広まったら、ゆくゆくはそうしたい」ではダメで、稼働当初から行わなければなりません(もちろん検証期間は必要ですが)。なぜなら、当初から行わないと、「活用が広まる日」は永遠にやってこないからです。

C社でSFAが稼働してしばらく経つと、受注決定予定月になると、見込み数字が急に減る傾向が出てきました。原因はすぐに想像つくかと思いますが、これについてまた別の機会にお話しさせていただきたいと思います。

今回は、SFAを例に述べさせていただきましたが、このことはシステムだけの話ではありません。例えば、「○○万円以上の見積は上司の承認をもらう」という業務プロセスでも、それを統制する仕組みがなければ、運用されなくなったり、形式だけになったりし
てしまいます。

皆さんのまわりには、こういった「やらなくても困らない」仕組みは散見していませんか?

次回は2012年7月9日(月)の更新予定です。

この記事の著者

株式会社大塚商会 コンサルタント

野呂田 章宏

平成8年入社。アプリケーションSEとして10年間、業務システムの開発・運用に従事。その後、セールスサポート部門での、システム企画・提案を経て、現在のコンサルタント職に至る。業務改革とシステムの両軸から、お客様の経営課題解決と利益追求に貢献。

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