第6回 事業者間で収益・費用の計上基準が異なる場合の取り扱い(経過措置の適用のないケース)

前回は施行日(平成26年4月1日)をまたぐ資産の譲渡等のうち、経過措置の適用があるものについて解説した。
一方、施行日をまたぐ資産の譲渡等で経過措置の適用のないものにつき、実務上、新税率又は旧税率のいずれを適用すべきかその判断に迷うものも存在したが、このほど、国税庁から「消費税率引き上げに伴う資産の譲渡等の適用税率に関するQ&A」が公表され、これらの取り扱いが明らかになった。
今回は、その中から「事業者間で収益・費用の計上基準が異なる場合の取り扱い」について解説する。

【ポイント1】 4月1日以降の課税仕入であっても、5%が適用されるものがある
資産の譲渡等に係る適用税率は、経過措置の適用があるものを除いて、その資産の譲渡等を行った日における税率が適用されることとなり、平成26年3月31日までに行われる資産の譲渡等であれば5%、平成26年4月1日以後に行われる資産の譲渡等であれば8%となる。

ここで例えば、売上側では平成26年3月30日に商品を出荷し、仕入側では商品到着後、平成26年4月2日に検収を完了する取引があったとする。
この場合、売上側では出荷基準により3月30日を資産の譲渡があった日、一方、仕入側では検収基準により4月2日を資産の譲受があった日とし、それぞれその日の属する課税期間の課税売上、課税仕入として認識することは何ら問題がなく、売上側、仕入側それぞれにおいて正しい処理となることは異論のないところである。

しかし、このような場合に適用される消費税率が売上側では5%であることは間違いないものの、仕入側では5%又は8%のいずれによるのかについて、消費税法上は8%を適用する方が正しいとする見解も存在し、実務上、売上側と仕入側で同一の取引にも関わらず、その適用税率が異なることが問題ないのかどうか議論となっていた部分であった。
この点につき、国税庁から公表されたQ&Aにより、売上側で5%を適用する課税売上である以上は、仕入側で4月1日以後に認識する課税仕入であっても、仕入側でも5%によることが明らかにされた。
基本的な考え方として、今回のような計上基準の相違等による適用税率の判断については、課税資産の譲渡等を行った売上側で適用される税率により、仕入側でもその適用税率を判断することとされるようである。
この点、例えば24時間営業のコンビニエンスストアやファミリーレストランで、平成26年4月1日午前2時に買い物や飲食等をした場合に、売上側では3月31日の課税売上と認識して5%を適用しているときも同様の考え方となり、課税仕入側では5%の税率が適用されることになるだろう。
しかし、仕入側の立場としては、売上側がその適用税率をどのような計上基準により判断しているかを知ることは、まずもって困難であろう。
上記の場合に、売上側でも出荷基準ではなく、検収基準により4月2日に課税売上を認識しているのであれば、その適用税率は8%となり、またAコンビニエンスストアでは4月1日午前0時ちょうどから8%を適用しているが、Bコンビニエンスストアでは4月1日午前5時までは、3月31日の課税売上として5%を適用している可能性もある。
経過措置の適用がある取引については相手方からの通知があることとされているが、特に経過措置の適用のない施行日前後にかかる課税仕入の適用税率の判断は、請求書等に適用税率や消費税額の記載があれば、仕入側でもその税率、金額によらざるを得ないと思われる。
一方、請求書等に適用税率や消費税額の記載がなく、売上側で適用している税率の判断が困難な場合は、仕入側で課税仕入を認識した日において適用される税率(4月1日以後であれば8%)とすることで問題ないと思われる。

【ポイント2】 売上側において適用税率が誤っている場合には要注意
ポイント1の取り扱いは、当然に売上側における適用税率が正しいことが前提となる。
売上側で明らかに4月1日以後の課税売上として8%を適用することが正しいにも関わらず、相手方の適用ミスにより消費税率が5%として請求書等が作成されているようなものについては、仕入側ではその記載されている適用税率、消費税額に関係なく、その課税仕入については当然に8%が適用されることになるので、ご注意いただきたい。

次回は3月4日(火)更新予定です。

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この記事の著者

あいわ税理士法人 マネージャー税理士

佐々木 泰輔

1996年立正大学経済学部経済学科卒業。大学卒業後、個人会計事務所勤務を経て、2005年あいわ税理士法人入社。2006年税理士登録。法人・個人に関する税務コンサルティング業務のほか,税務専門誌への寄稿や各種セミナー講師に従事。
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