第2回 工事の請負等の税率に関する経過措置

本稿の執筆段階では、まだ正式に消費税率が引き上げられることは決定していないが、掲載されるころには、おそらく引き上げが正式に決定しているだろう。
半年後の税率引き上げに備えて、各企業においては価格への転嫁、消費者向けの価格表示方法など、その対応に向けての動きがますます加速するものと思われる。

来年4月1日以降に行われる課税資産の譲渡等であっても旧税率が適用される経過措置には、その適用にあたって指定日(8%引き上げ時⇒平成25年10月1日 10%引き上げ時⇒平成27年4月1日)が関係するものが存在する。
今回はそのうちの1つである「工事の請負等の税率に関する経過措置」について、そのポイントを解説する。

【ポイント1】 建設業にかかる工事、製造業に係る製造以外にも一定の請負契約等には適用あり
本経過措置が適用されるのは、日本標準産業分類の大分類に掲げる建設業に係る工事、製造業に係る製造以外にも、次の要件のすべてを満たす請負契約等についても適用があることを忘れてはならない。

[1]請負に関する契約又は委任その他の請負に類する契約であること
[2]仕事の完成に長期間を要すること
[3]目的物の引き渡し(目的物の引き渡しを要しないものは、約した役務の全部の完了)が一括して行われることとされていること
[4]発注者の注文が付されていること

建設業、製造業以外の業種の方の中には、この経過措置は当社には関係ないと思われている方も多いように見受けられる。
しかし上記の要件を満たす請負契約・委任契約はどの業種であっても存在する可能性があり、例えば税理士業務のうち申告書作成業務は上記の要件に該当する請負契約となる。
従って指定日前の契約に基づき施行日以後に確定申告書を納品する場合には、その報酬については経過措置が適用され、旧税率によることになる。

業種によって判断するのではなく、自社が行う取引(売上、費用の両方とも)の中の上記の要件を満たす契約の有無について、今一度確認しておきたい部分である。

【ポイント2】 ポイント1に掲げる要件のうち、[3]の判断が重要になる
建設業、製造業以外の請負契約・委任契約の場合には、【ポイント1】に掲げるすべての要件を満たしているかどうかによるが、国税庁が公表したQ&Aでは、[2]については「実際に長期間を要するかどうかは問わない」、[4]についても「注文の規模の程度や対価の額の多寡は問わない」こととされている。
従って、一般的な請負契約・委任契約である場合には、経過措置の適用の判断にあたり[2]及び[4]については、それほど厳密に考慮せずとも満たすものと思われる。

上記の要件で一番のポイントとなるのは「[3]目的物の引き渡しが一括して行われることとされている」かどうかである。
税理士業務でいえば、申告書作成業務はその申告書の納品(目的物の引き渡し)が一括して行われるが、月々の税務相談業務は、一括して行われるものではないため、経過措置の適用はない。

実務上、「一括かどうか」は判断に迷うことが多いと思われるが、それぞれの契約内容に基づき適正な判断が求められることになる。

【ポイント3】 相手方から通知が来ない場合でも適用あり
「工事の請負等の税率に関する経過措置」の適用を受けた受注者は、発注者に対して書面、請求書等により経過措置の適用を受けたものであることを通知しなければならない。
しかし、この通知そのものは経過措置の適用要件ではないため、通知の有無に関わらず、経過措置は適用される。
従って発注者においては、受注者から通知がなかったとしても、経過措置の適用の有無についての判断が必要となる。

次回は11月5日(火)更新予定です。

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この記事の著者

あいわ税理士法人 マネージャー税理士

佐々木 泰輔

1996年立正大学経済学部経済学科卒業。大学卒業後、個人会計事務所勤務を経て、2005年あいわ税理士法人入社。2006年税理士登録。法人・個人に関する税務コンサルティング業務のほか,税務専門誌への寄稿や各種セミナー講師に従事。
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