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第3回 資産の貸付けに関する経過措置
平成26年4月1日以降に行われる課税資産の譲渡等から消費税率が8%に引き上げられることが正式に決まり、価格への転嫁の対応など、社ごとの対応に関する報道も目立つようになってきた。
今回は前回に引き続き、経過措置の適用にあたって指定日(8%引き上げ時⇒平成25年10月1日 10%引き上げ時⇒平成27年4月1日)が関係する「資産の貸付けの税率等に関する経過措置」について、8%引き上げ時を例にそのポイントを解説する。
【ポイント1】 適用対象となるのは「取引の対象となる一切の資産」である
本経過措置は平成26年4月1日以降に行われる「資産の貸付け」につき、一定の要件に該当する場合には旧税率を適用するものである。
この対象となる「資産」とは、取引の対象となる一切の資産をいうから、棚卸資産又は固定資産のような有形資産のほか、権利その他の無形資産が該当する(消基通5-1-3)。
「資産の貸付けに関する経過措置」というと、得てして事務所やテナントなどの不動産貸付け、車両等のリース取引を思い浮かべるが、有形固定資産だけでなく、工業所有権や著作権などの無形固定資産のほか、取引の対象となる一切の資産の貸付けが対象となることに注意が必要である。
【ポイント2】 リース取引にかかる経過措置の適用
リース取引は、その性質から次の三つに区分される。
[1]所有権移転ファイナンス・リース取引
[2]所有権移転外ファイナンス・リース取引
[3]オペレーティング・リース取引
このうち、[3]については消費税法上、「資産の貸付け」に該当するため、本経過措置の適用対象となるかどうか他の要件も確認する必要がある。
一方、[1]および[2]については消費税法上、「資産の譲渡」として取り扱うこととされており、「資産の貸付け」には該当しないため、そもそも本経過措置の適用はないこととなる。
「資産の譲渡」として取り扱われる上記[1]および[2]にかかる適用税率については、あくまでもリース資産の引き渡しがあった日の税率によることとなり、引き渡しが平成26年3月31日までであればそのリース料の全額につき5%、平成26年4月1日以降であれば8%が適用される。
仕入税額控除についても、引き渡しがあった日の属する課税期間において、リース料全額にかかる消費税を控除する方法(一括控除)が原則であるが、[2]については賃貸借処理を行っている場合などリース料の支払日の属する課税期間ごとにその支払リース料に対応する消費税を控除する方法(分割控除)も認められている。
例えば平成26年1月10日に締結した契約に基づく平成26年3月1日に開始する所有権移転外ファイナンス・リース取引につき、分割控除を選択している場合を考えてみる。
この場合、「資産の譲渡」に該当し、原則通り、平成26年3月1日がリース資産の引き渡し日と考えられるため、平成26年4月1日以降に支払うリース料にかかる消費税率は5%となる。
8%取引と認識しないように注意が必要である。
一方、上記例と同日契約、同日開始のオペレーティング・リース取引は、「資産の貸付け」に該当することから、本経過措置の適用を検討する必要があるが、指定日(平成25年10月1日)以後の契約であるため、8%引き上げ時の本経過措置の適用はない。
そのため、平成26年4月1日以降に支払われるリース料にかかる消費税率は8%となる(平成27年10月1日に10%への引き上げが予定されているが、同日以降に支払うリース料については一定の要件を満たす限り、本経過措置の適用により8%のままとなることが考えられる)。
ただし、[2]については、平成20年4月1日以降に契約締結された取引から「資産の譲渡」として取扱いが変更になっており、平成20年3月31日以前に契約締結された「所有権移転外ファイナンス・リース取引」は、従前通り「資産の貸付け」に該当するため、本経過措置の適用対象となるかどうかの検討が必要である。
【ポイント3】 自動継続条項がある場合の契約締結日
賃貸借契約などでは、自動継続条項のあるものが一般的と思われるが、自動継続条項に基づく貸付けにかかる契約締結日の判断は、当初の原契約の契約日ではなく、原契約に定められた解約申出期限を経過したときにおいて、新たな契約の締結があったものと考えることが国税庁のQ&Aにより示されている。
したがって、自動継続条項に基づく資産の貸付けに係る経過措置の適用の判断にあたっては、解約申出期限を経過したときが指定日より前であれば、経過措置の適用がある(他の要件を満たす場合に限る)ことになり、指定日より後であれば経過措置の適用はないこととなる。
次回は12月3日(火)更新予定です。
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