第7回 経過措置の適用のない資産の貸付けにかかる適用税率

今回は前回に引き続き、1月に国税庁から公表された「消費税率引上げに伴う資産の譲渡等の適用税率に関するQ&A」の中から、実務上の判断に迷いやすい、経過措置の適用がない場合の不動産の賃貸料等に係る適用税率について解説する。

【ポイント1】 賃貸料等の受領日(賃借料等の支払日)ではなく、貸付期間における税率を適用する
不動産の賃貸借契約では賃貸料等の支払期日につき、【1】当月分を前月に収受するケース(前受)、【2】当月分を翌月に収受するケース(後受)が見受けられる。
このような場合には【1】平成26年4月分を平成26年3月に収受する(前受)、【2】平成26年3月分を平成26年4月に収受する(後受)こととなるが、貸付期間と収受日における適用税率が異なることからいずれの税率によるべきか実務上判断に迷う部分であった。

消費税においては、資産の賃貸借契約に基づく賃貸料等の資産の譲渡等の時期は、前受部分を除き「当該契約又は慣習によりその支払を受けるべき日」とされている(消基通9-1-20)。上記【1】の場合は、前受であるため同通達の適用はなく、資産の譲渡等の時期も原則通り、貸付けがあった日となるため、平成26年3月に収受する賃貸料等は貸付期間である平成26年4月において適用される8%の税率となる。  

一方、上記【2】(後受)の場合には同通達により、資産の譲渡等の時期は平成26年4月となるため、その賃貸料等に係る税率は8%となるのではないかと考える向きもあった。
しかし、今回公表された国税庁Q&Aにより、その収受日における税率ではなく、あくまでも貸付期間における税率によることが明らかにされた。
したがって、上記【2】の場合で、平成26年4月に収受する賃貸料等であっても、貸付期間が平成26年3月分である以上は、5%の税率が適用されることとなる。

ただし、この場合であっても課税資産の譲渡等の時期までが平成26年3月になることではないと思われる。
例えば3月決算法人で、賃貸借契約において当月分の賃貸料等を翌月に収受することとしている場合で、上記通達に則り継続して収受した月に課税資産の譲渡等を認識しているときは、平成26年4月に収受する賃貸料等の適用税率は5%となるものの、平成26年3月期の課税売上として申告するのではなく、平成27年3月期において5%売上として申告することで問題ないと考える。このことは、賃借料等を支払う側においても同様の取扱いとなるであろう。

【ポイント2】 事前に当事者間で賃貸料等の額を確認しておく
前述したような賃貸料等に係る適用税率が5%となるのか8%となるのかの判断に迷うケースだけでなく、例えば税率引上げ前は賃貸料等を消費税込みで月額○○万円などのキリのいい金額としていた場合などでも平成26年4月以降に収受する又は支払う賃貸料等の金額につき、当事者間で事前に確認はしておく必要があると思われる。

税率引上げ前の賃貸料等を消費税込みで月額30万円としていた場合、理論的には税率引上げ後の賃貸料等は308,571円(30万円÷1.05×1.08)となることになる。
賃貸借契約で消費税込みの賃貸料等の金額の記載しかない場合、税率引上げ後も税込金額の総額が据え置かれるかどうかは、契約内容や当事者間の認識と思われるが、特に借主が貸主に確認することなく4月以降も30万円のまま支払いを続けた場合には、意図せず転嫁拒否等の問題に発展してしまう可能性も考えられるところである。

また、当事者間の合意により税込金額を変更することとなる場合(例えば再度キリのいい金額にする場合など)には、金額の変更に関する覚書などを締結する必要があろう。
この場合には、税率引上げ前と比べて本体部分の値引きや値上げが行われることになる。

次回は4月1日(火)更新予定です。

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この記事の著者

あいわ税理士法人 マネージャー税理士

佐々木 泰輔

1996年立正大学経済学部経済学科卒業。大学卒業後、個人会計事務所勤務を経て、2005年あいわ税理士法人入社。2006年税理士登録。法人・個人に関する税務コンサルティング業務のほか,税務専門誌への寄稿や各種セミナー講師に従事。
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