第1回 適用税率の原則的な考え方

来年4月1日から予定されている消費税率引き上げを受け、旧税率を適用できる経過措置や消費者向けの値札・店頭表示の税抜き表示の復活などの措置がとられることとなった。
各企業においては、自社の取引にかかる経過措置の適用の有無など、その対応を検討していることと思われる。
課税当局をはじめとして各種情報も公表されているが、実務上、その判断に迷うことも多いことだろう。

本稿では経過措置を中心に、各種情報が公開されている中で、あらためて確認したいポイントを整理していく。
各経過措置の話の前に、まずは消費税率の適用についての原則的な考え方を押さえることが基本かつ重要となるため、第1回は原則的な考え方について確認する。

なお、平成26年4月1日に8%、平成27年10月1日に10%と短期間で2段階の税率引き上げが予定されているが、基本的な考え方は同じであることから、ここでは8%引き上げ時について確認していくこととする。

【ポイント1】 新税率の適用は来年4月1日以後に行われる課税取引から
新税率は来年4月1日以後に行われる課税資産の譲渡等から適用され、来年3月31日までに行われる課税資産の譲渡等については、旧税率が適用される。
従って、適用税率の決定にあたってはその課税資産の譲渡等の時期が来年4月1日前なのか、後なのかを確認する必要がある。

適用税率の決定は、あくまでも取引ごとに行われることから、例えば来年3月25日に仕入れた商品を来年4月5日に売り上げた場合には、商品仕入は旧税率、商品売上は経過措置の適用がある場合を除いて、新税率が適用されることになる。

【ポイント2】 経過措置の対象となる取引は限定され、その適用は強制である
経過措置は課税資産の譲渡等が来年4月1日以後に行われるものであっても、旧税率を適用することができるものであるが、経過措置の対象となる取引は限定されており、その適用は強制である。
従って、自社が行う取引のすべてについて、経過措置の適用の有無を判断する必要がある。経過措置の適用がある取引についてはすべて旧税率が適用される一方、経過措置の適用がない取引については、新税率を適用しなければならない。

【ポイント3】 適用税率に誤りがある場合
課税資産の譲渡等の時期や経過措置の適用の有無の誤り、当事者間の合意や税率引き上げ後の反動減を防ぐための経営戦略上の意図的な価格据え置きなどにより、本来適用すべき税率と異なる税率で消費税額を徴収又は支払った場合であっても、消費税の申告上は、本来適用すべき税率で計算しなければならない。
従って、その差額分は実質的な値上げ又は値下げとして処理することになり、会社の損益に大きな影響を与えることも考えられる。
また、本来旧税率(5%)が適用される売上につき、新税率(8%)により消費税を徴収した場合には、意図的かどうかに関係なく、消費者にとっては実質的な値上げとなることから、会社の予期しないところで消費者不信を招きかねない結果となることも考えられる。
特に売上に係る適用税率の判定に当たっては十分に検討を行い、本来適用される税率をしっかり確認したうえで、自社の売上代金への消費税の転嫁方法を決定する必要がある。

次回は10月1日(火)更新予定です。

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この記事の著者

あいわ税理士法人 マネージャー税理士

佐々木 泰輔

1996年立正大学経済学部経済学科卒業。大学卒業後、個人会計事務所勤務を経て、2005年あいわ税理士法人入社。2006年税理士登録。法人・個人に関する税務コンサルティング業務のほか,税務専門誌への寄稿や各種セミナー講師に従事。
あいわ税理士法人

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