第45回 すぐ辞めてしまう原因には、会社からの情報不足が多いという話

せっかく採用した社員がすぐに辞めてしまった経験を持つ人は多いと思いますが、大きな原因は相互の会社理解の行き違いです。そしてそこには、採用活動で主導権を持っている会社側の姿勢により多くの問題があります。

すぐ辞めてしまう原因には、会社からの情報不足が多いという話

せっかく苦労して採用した社員が、短期間ですぐに辞めてしまったという経験は、多くの経営者や人事担当の方々がお持ちだと思います。

この最も大きな原因は、採用時の会社理解の行き違いです。応募者から見れば「初めの話と違う」「思っていたのと違う」「こんなはずではなかった」ということであり、会社からすれば、「もっとできると思っていたのに」「こんな人と思わなかった」「期待はずれだった」などという例がこれに当たります。

会社と応募者がそれぞれお互いの理解不足ですから、当然双方ともに問題があります。ただ、そうは言っても、採用活動の主導権は、一般的には会社側にある場合がほとんどです。応募者の努力で事前に多くのことを知ろうとしても、そこにはおのずと限界があります。
早期退職に至ってしまうようなミスマッチの原因は、どちらかといえば会社側の情報提供のしかたに問題のあることが多いと感じます。

これはいくつもの会社で実際に目にしてきたことですが、「こんなことを知ったら辞退されてしまうのではないか」と現実をはっきり伝えなかったり、入社の直前直後に状況が変わって当初の約束と話が違ってしまったり、伝えるべき事項を認識していなかったり、そもそも情報提供の意識が希薄で、純粋に意思疎通が不足していたりする場合などがあります。

いくら言いづらいからといって、肝心なことを隠すのは、後から問題になるに決まっていますし、さまざまな事情で最初の話と違ってしまったというような場合も、事前に状況変化の可能性を伝えておくことや、話が変わった段階で速やかに誠意を持って話し合うことなどで、マイナスのとらえ方はずいぶん緩和されます。

伝えるべき事項を認識していない、伝える意識が希薄というのは、当事者に悪気がないということではさらに問題で、これを逆の立場で見れば「応募書類が整っていない応募者」と同じことになります。
自分のことをきちんと伝えようとしない、伝える気がない応募者を採用したいと思う会社はないでしょうが、これは応募者の側から見ても同じことです。自社の情報を積極的に提示しようとしない会社には、あまり信頼感が持てないでしょう。

また、「期待はずれだった」というような会社側から見たミスマッチも、情報開示不足が関係しています。
応募者からすれば、自分にやっていけそうもない仕事、向いていなさそうな仕事、社風が合わなそうな会社に入社しようと思わないのは当然で、入社するということは、少なくとも自分としては「この会社でやっていける」と判断したということです。

応募者を採用するか否かは、会社側が面接などの選考によって決めることではありますが、もしも会社側がしっかり情報開示をして、お互い会社理解での行き違いを極力少なくできていたとすれば、採用基準に合わない応募者は、自分の方から辞退していきます。「自分のことを一番分かっていないのは自分」などと言われますが、自社に合わない人に「合っている」と勘違いさせてしまうのは、自分たちが合否判断をするまで、応募者の意識をつなぎ留めておきたい、キープしておきたいと考える会社側の都合であり、そんな思わせぶりもミスマッチの原因になります。

早期の退職者が出たり、能力の見込み違いがあったりすると、会社ではそれを事前にどうやって見極めるかという議論になりがちですが、実際の採用活動は、お互いに選び選ばれるという行為です。

いかに応募者を選ぶかということばかりを考えていると、その意識が都合の悪い情報を隠す心理や情報開示不足につながり、結果的にはお互いのミスマッチを増幅させ、早い離職につながってしまいます。
特に会社側で、もっと応募者の知りたいことを理解し、自分たちのことをもっと知ってもらおうという努力すれば、「早期退職」も「期待はずれ」もずいぶん少なくなるのではないでしょうか。

次回は6月27日(火)更新予定です。

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この記事の著者

ユニティ・サポート 代表

小笠原 隆夫

IT業界の企業人事出身の人事コンサルタント。 2007年に独立し、以降システム開発のSE経験と豊富な人事実務経験を背景に、社風や一体感など組織が持っているムードを的確に捉えることを得意とし、自律・自発・自責の切り口で、組織風土を見据えた人事制度作り、採用活動支援、人材育成、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務を専門的に支援するなど、人事や組織の課題解決、改善に向けたコンサルティングを様々な規模の企業に対して行っている。
上から目線のコンサルティングではなく、パートナー、サポーターとして、顧客と協働することを信条とする。
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