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第33回 クレーム報告書
物流クレーム改革は、「ミスをした人を明確にしてその人を責める」のが目的ではない。
「同じミスが再発しない」対策をたてるのが目的である。
まずは、物流クレームが発生する度に、物流クレーム報告書を提出するようにする。
「日付、得意先名、物流クレームの現象、ミス発生者」等の事実の記入とともに、「発生原因(仮説のものも含む)」「改善策」をすべて記入しなければならない。
ちなみに、「一つのクレームに対して、発生原因は一つであるとは限らない」「一つの発生原因に対して、改善策は一つとは限らない」ことを意識して改善計画を立案してほしい。
例を挙げて考えてみることにしよう。
お客様から「納品遅れのクレーム」が入ったとする。
この時の発生原因としては、「受注時に納品が間に合わない可能性があることを、明確にお客様に伝えていなかった」「受注入力が遅れて、物流への出荷指示が遅れた」「物流の出荷作業が遅れて、運送会社への荷渡しが遅れた」「運送会社が交通渋滞にはまってしまい、納品が遅れた」「納品遅れがわかっていたにもかかわらず、お客様に事前連絡をしなかった」等たくさんの原因が考えられる。
「約束した納品時間に入ってこなかった」という一つのクレームに対して、考えられる多くの原因を検討し、改善策をたてなければならないのである。
例えば、「受注入力遅れ対策」を実施したにもかかわらず、違う部分での問題が発生したとしたら、結果としては問題が解決していないことになる。
これが、たまたま運悪く3日連続納品遅れが発生したのであれば、おそらくお客様からの信用を無くすことであろう。
「言い訳だけで何の対策もしていない」という評価になりかねない。
よって、同じクレームが発生しない様にするためには、「発生原因」「改善策」を出来るだけ多く出すことが必要なのである。
しかし、準備万端対策をたてた場合でも、同じミスが繰り返されることも多い。
私は「物流クレーム報告書」を現象別(数量違い、商品違い、品質不良等)にインデックスをつけて、時系列に物流クレーム報告書をファイリングする方法を薦めている。
この方法であれば、以前どの様な対策をたてたのかが確認しやすい。
例えば「数量間違い」の物流クレームが発生した時に、過去にどの様な対策をたてたのか、今回の物流クレームは過去の対策では解決できない問題かどうか検討できるのである。
違う対策が必要であれば新たに改善策を検討すればよい。
しかし、過去たてた対策で解決できることであれば、「物流ルール」が守られていない可能性が高い。
この場合は、物流管理を強化する方法を考えなければならないのである。
物流クレーム改革は、この繰り返しを辛抱強く続ける必要がある。
次回は12月21日(金)更新予定です。
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