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第30回 物流クレーム改革のポイント
物流クレーム改革がなかなか進まないことは既に述べたが、改善の進め方が大きく間違っている物流センターがあまりにも多いと私は思う。
いつまでたっても改善が進まない一番多い例としては、物流マネージャーがミスを犯した人を呼んで、「今後同じ過ちを繰り返さない様に気をつけてください」と注意するだけで終わってしまうことである。
その理由としては、「あまり強く言うとモチベーションが下がってしまい、会社をやめたら困る」ということらしい。
しかし言われた本人は、「気をつける」という抽象的なことを言われても、どうしたらよいのかわからない。
これでは、対策にはなっていない。
それに対し、物流クレームが減少している企業は、「どうして間違ったのかを現状分析」し、「どのようなやり方に変えれば間違いにくくなるのか」を具体的に指導している。今回は、このポイントを解説したい。
一つ目は、物流メンバーの意識改革である。
「人間がやることであるから、誰もが絶対にミスをする可能性がある。だから仕方がない」とセンター長が思っていたとしよう。
この様な物流センターでは、部下のマネージャーや社員も同じ発想で考える傾向があるため、物流クレームが発生しても大騒ぎをすることはない。パートさんの考えもしかりである。
しかし、このやり方では「もぐらたたき」の様な状況に陥ってしまう。
仮に同じ人が同じ間違いを繰り返さなくなった場合でも、別の人が同じ過ちを繰り返してしまう。
私は「物流クレームをゼロにする方法が絶対にあるはずだ!」と、全員が改善方法を必死に考える必要があると思う。
もうこれ以上改善方法はないというぐらい実行して、物流クレームが発生するのであれば、仕方がないと考えてほしい。
少なくとも社員は、「改善には妥協を許さない」考え方を定着化させるのが必要だと思う。
二つ目は、発生原因の科学的分析である。
詳細は次号で解説するが、現象をデータでとらえて、その現象を分類する。これにより、「改善策を実施したら、過去発生した物流クレームが少なくなること」が検証できる。
三つ目は、具体的な指示である。
「気をつけなさい」と注意するだけであれば、おそらく問題は解決しない。注意力が1日中継続できる人は、まずいない。
前述した様にどんな時にミスが起こりやすいかを検討できていれば、どういうやり方に変えればよいかを指示できる。
例えば、数量間違いが起こりにくい数え方を指示できれば、間違いが発生する確率は大きく減少される。
四つ目は、物流の運用を変えることである。
運用マニュアルがその代表的な例である。商品確認方法、数量の数え方、個別対応の確認方法、などがそれにあたる。
五つ目は、定着化の確認である。
物流では過去色々な工夫を繰り返して、いまの運用になった経緯がある。
よって、やり方を変えた後、何もチェックしなければ、だいたい1カ月くらいで元のやり方に戻ってしまう。
パートさんも継続して言われなければ、「別にいいんだ」と思ってしまう。
六つ目は、人を変えることである。
人間は教育をしても、残念ながら「適性、不適性」がある。
注意力が続かない人、次のことを考えながらやってしまう人、投げやりな人、は適性に欠ける。
いろいろやって解決しないのであれば、人を変えることもひとつの考え方である。
七つ目は、情報システムの活用である。
情報システムをうまく使えば、作業の標準化が推進でき、新人でも即戦力化できるというメリットがある。
物流クレーム改革は、この7つの視点で考え、あらゆる角度から検討して進めるものである。
次回は11月30日(金)更新予定です。
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