第31回 物流クレームの現状調査

物流クレーム改革の第一歩は現状把握である。
調査対象は「物流クレームの調査」「ニアミスの調査」が考えられる。ニアミスとは、「出荷するまでの間に判明したミス」のことで、お客様に迷惑をかけていない物流クレーム予備軍である。

物流クレームが月間3件程度発生していれば、ニアミスは20~30件は発生していると考えてもよいと思う。
物流クレームへの対応を行う企業は多いが、ニアミスは全社で表面化していないため、改善を徹底していない場合が多い。
よって、月間3件の物流クレームの対策をたてるよりも、月間20件のニアミスの対策をたてる方が、全社としては改善が進む。
大変かもしれないが、「物流クレームの現状調査」と「ニアミスの現状調査」の両方の現状把握をしていただきたい。

出荷検品(梱包前の最終検品)時のニアミス調査を例にあげて説明する。
検品担当にミス記入用紙を渡し、ミス発見時に「日付、得意先、商品名、ミス分類、ミス詳細、ピッカー名、検品者名」等を書いてもらおう。
物流現場からは、「ただでさえ忙しいのにそんな時間はない」と言われることがあるだろう。

しかし、仮にニアミスが月間20件であれば、1日1件あるか無いかである。
1日1分程度の作業であるから、問題はないのではないだろうか。
それが1日20件発生し、検品担当が少人数であった時は、さすがに負荷がかかりすぎかもしれない。
その時は応援人員を、1名追加して1週間の調査をする。
100件(1日20件×5日)のデータが取れれば、充分な検討ができる。

過去の私の事例で言うと、現状の1/10以下までニアミス件数が削減できた。
何もしなければ改善が進まないが、1/10以下になるのであれば、1週間の1名増員の経費増は、全く問題にならないのではないだろうか。

次に、このデータをEXCELなどの表計算ソフトに打ち込み、分析を行う。
この時の注意点は、ミスの内容をより具体的に記入することである。
例えば数量違いの場合は、「受注数5個に対して3個出荷していた」と記入する。
数量間違いの改善は、別途詳細に解説するが、「多い間違い」と「少ない間違い」では対策が違うのである。商品違いも、何と何を間違ったのかが明確になれば対策がたてやすい。

EXCELなどの表計算ソフトを使用する理由は、一般的に広く利用されていることと、「フィルタ」「並び替え」「ピボットテーブル」の機能を活用すると、「並び替え」「集計」「抽出」が簡単にできるからである。
「ミスを起こしやすい人の傾向分析」、「間違いやすい商品の傾向分析」等さまざまな検討ができるため、より具体に改善を進めることができる。

また、物流クレームは物流部門だけでなく、他部門(営業部、経営者)に先に情報が入る場合もある。
この場合、物流クレームが隠匿されるケースがある。全社で表面化すると大きな問題になるからである。
隠匿されると改善の検討もできない。物流クレーム改革の目的は、「同じ物流クレームを繰り返さない」ことである。
経営陣については、隠匿や発生した現象に対して問題視しても、何の解決にもならない。
今後、どの様な対策を実施するかを確認し、その計画・実行が不充分であれば問題視していただきたい。

次回は12月7日(金)更新予定です。

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この記事の著者

有限会社SANTA物流コンサルティング 代表取締役社長 / 物流改革コンサルタント Dr.SANTA

平野 太三

昭和38年兵庫県芦屋市にて出生。昭和61年甲南大学法学部卒業。同年某システム会社入社後、物流システム担当営業として、100社を超える物流現場分析に携わる。平成15年に、有限会社SANTA物流コンサルティングを設立。「物流コンサルティング」「講演、研修」「執筆」を開始する。講演参加者数ものべ10,000人を超え、物流マンに分かりやすい具体的な改善手法の提言を行う。
主な執筆:「3カ月で効果が見え始める物流改善」(プロスパー企画)。
物流技術管理士、日本物流学会正会員、ロジスティクスアライアンス委員
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