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第28回 物流クレーム発生による企業の損失
第3章 「物流クレーム改革の進め方」
今回から第3章「物流クレーム改革の進め方」に入る。
物流クレーム改革は「在庫改革の総論賛成、各論反対」と違って、全社で「物流クレームを減らそう!」という共通認識があるため、比較的改善は進みやすい土壌はある。
しかし一方では、物流クレームを常時改善テーマに挙げられていながら解決していないという現実もある。
物流クレームの主なものには「欠品クレーム」「誤出荷クレーム」「納品遅れクレーム」「品質不良クレーム」「伝票ミスクレーム」等がある。
それぞれ対処方法が違うので、今後の執筆にて述べていきたい。
まずは、物流クレーム発生による企業への影響を整理しておきたい。
一つ目は「お客様からの信用の低下と、欠品によるお客様の利益損失の問題」である。営業にとっては一番重要な問題である。
物流クレームは得意先単位で年間1回あるか無いかであればまだよいが、頻繁に発生しているようであれば、いくらよい商品を作っても取り扱いを縮小される可能性が高い。
これが卸売業であれば致命的となり、ほかの卸売業にすぐに乗り換えられてしまう。
お客様の仕入担当者は、トラブル対応(営業からの欠品クレーム、仕入先との連絡・指導)に労力を取られ、本来の「調達商品の精査」の仕事ができなくなる。
「売上機会損失」の問題もかかえているため、早く解決できる手段(乗り換え)があればそちらを優先してしまうのである。
二つ目は「新たな商談の停止」が考えられる。お客様の購買担当者としては、前述した様に物流クレームが多く発生している企業との取引拡張には不安がある。
取引アイテム数が増加すれば、トラブル対応の時間が増加すると思ってしまう。
「新商品投入による利益増加とリスクを天秤にかける」と、消極的になってしまうため商談は停止するのである。
三つ目は「無駄な物流コストの発生」である。「再出荷による人件費、運賃の無駄」、「返品による再生~棚入れ人件費、返品運賃の無駄」が発生する。
この直接物流コストだけでも少なくとも2,000円/件は発生している。年間のトータル損失コストで考えると大きなものでは無いかもしれない。
しかし、お客様に迷惑をかけないニアミス(ピッキング後の検品時に発覚するミス)も潜在的にあるため、隠れた物流コストは5~10倍程度発生していると考えられる。
次回は11月16日(金)更新予定です。
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