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第44回 作業の役割分担
物流人件費を削減するためには、「人数の削減(=作業効率の向上)」と「パート比率の向上(=正社員比率の低下)」を行わなければならない。
社員には、様々な経費(法定福利費・福利厚生費、教育費等)が継続して発生している。
この経費を人数割りして、個人への支給給与を加算すると、社員の人件費がパートの人件費の2~3倍になることも少なくない。
現在はパートや派遣社員の正社員化の課題もあるが、今回は物流の非正社員の比率を高めて、人件費を抑えて物流を運営する考え方を述べることにする。
物流部門に社員とパートが混在し、社員にパートの倍の人件費がかかっていたとしよう。
この時企業は、社員に仕事内容で何らかの付加価値が無いと、倍の人件費を払うメリットが無いことになる。
例えば、「他部署・関係企業との仕事調整」「物流改善活動の推進」「物流の知識」がそれにあたる。
しかし、パートと全く同じ仕事をしている社員がいる物流センターも存在する。
その場合、社員がパートの2倍以上の生産性がないと、付加価値が無いことになる。ピッキングであれば、社員がパートの2倍の伝票をピッキングする能力になる。
しかし、一般的には社員よりもパート(女性)の方が、ピッキングスピードが速い場合が多いと聞く。
色々な意見を総合してみると、ピッキング作業のような「同じ業務の繰り返し」には、女性が向いている傾向があるようだ。
毎日の家事で、集中力を継続する力が備わり、「家事を短時間で終わらせる段取りを考える視点」が「物流業務改善の視点」に近いことが原因なのかもしれない。
日々家事の工夫を重ねることで、自然と効率のよい作業が身についてくるのであろう。
とは言うものの、物流現場では社員にしか、わからない業務が多いため、なかなか社員比率を減らすことができないのではないだろうか。
例えば、「商品が入荷しても置く場所がわからない」「得意先により出荷ルールが違う」「時間・仕事量により仕事の優先順位が変わる」等がそれにあたる。
しかし、この様な熟練業務を標準化する方法があれば、社員の必要性は無くなる。
例えば、入荷をした時に、置き場所がわかる仕組み(=入荷時に棚入れ場所を指示する仕組み)を作ればよい。
判断業務が必要なものは、マニュアル化をすれば短時間で実現することも可能となる。
標準化を進めていけば、社員比率を抑えても、業務に支障をきたすことはない。このように役割分担を明確にすれば、社員の比率を減らし、また「仕事の調整」や「物流改善活動」に専念できる。
次回は3月22日(金)更新予定です。
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