第13回 在庫改革の進め方

【1】在庫改革の動機づけ
今回から、「在庫改革」をテーマにお話をしたい。
在庫を保有している企業では、「在庫金額削減」を経営テーマとしてかかげているのではないだろうか。

しかし、現実は「在庫金額の削減」も「欠品の抑制」も実現出来ていない企業が非常に多いのではないだろうか。
消費者の嗜好(しこう)の多様化により、アイテムが増加していることも大きな原因の一つであるかもしれない。
いろいろ原因は考えられる。

ただ、どの原因よりも、もっと大きな問題が存在するのである。
在庫金額削減は、社内の誰(だれ)1人として反対する者がいないだろう。
本来ならば在庫改革は進むはずである。

しかし、いざ在庫改革を推進しようとすると、あちらこちらの部署から反対意見が噴出するのである。
その大きな理由は、「思い込み」である。

在庫金額を削減すると「欠品が増える」と思っているのが最大の理由である。
「今でも欠品が発生してお客様の謝罪に時間をとられているのに、さらに欠品が増加するのではないか?損失が多くなるだけでなく、競合他社に取られてしまう可能性もある。」と営業部門が強く主張する。

営業部門は、社内での発言力が強いだろうから改善活動に大きく影響する。
また、発注部門もその発言をアシストするであろう。
欠品が発生すると経営者からは強く対応を迫られ、仕入先との納品調整にも時間が取られるからである。

経営者も売り上げが減少すると、メインバンクの評価が低くなるため同調する。
在庫改革を進めようとするのは、「物流部門」「経営企画部門」「経理部門」だけになる。この様な状況になれば、在庫改革を推進することは難しくなる。

しかし、よく考えてほしい。確かに全アイテムの在庫数を一律20%ずつカットすれば、欠品は必ず増える。
在庫改革はそういうものでは無い。「多い在庫を減らしましょう。少ない在庫を増やしましょう」これが在庫改革なのである。
それが実現すれば、在庫金額を削減しながら欠品も抑制できる。
そんな夢の様な話が、現実的にできると思わない方も多くおられるだろう。だが、実際実現をしている企業も数多く存在するのである。その方法論は、今後お話をしていきたい。

話を元に戻す。前述した「思い込み」以外に、「効果が見えない」「時間がない」という原因もある。
在庫金額が、どのくらい減少する余地があるのか。

私の持論では、99%の会社が「在庫金額は半減できる!」と考えている。
私は過去100社以上の在庫分析をしてきたが、「発注リードタイムを考慮した上で、企業の在庫目標に基づき商品別にシミュレーション」をすると、何とほとんどの企業で、在庫金額が半分以下になったのである。
皆様の企業でどのくらい在庫金額の削減ができるか、わからなければ一度見えるようにしてみようではないか。

時間がないという問題も重要だ。全部門が最少人数で回している企業が多い中で、在庫改革プロジェクトに時間が取れない。
在庫改革は、全部門参画必須(ひっす)のプロジェクトである。時間がなければ作ればよい。人が足りなければ増やせばよい。

在庫改革を実現すれば、売り上げの0.5%の物流コストが削減できる可能性がある。
売り上げが100億の企業であれば、年間5000万円以上の物流コスト削減が見込める。
在庫改革プロジェクトのために、それほど多くの人件費の増加が必要とは思えない。
この増加人件費もプロジェクトが実現すれば相殺もできる。増加分の相殺だけでなく、現状の人件費もそれ以上に削減できる。それだけ在庫にかかわる問題は大きいのである。

次回は8月3日更新予定です。

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この記事の著者

有限会社SANTA物流コンサルティング 代表取締役社長 / 物流改革コンサルタント Dr.SANTA

平野 太三

昭和38年兵庫県芦屋市にて出生。昭和61年甲南大学法学部卒業。同年某システム会社入社後、物流システム担当営業として、100社を超える物流現場分析に携わる。平成15年に、有限会社SANTA物流コンサルティングを設立。「物流コンサルティング」「講演、研修」「執筆」を開始する。講演参加者数ものべ10,000人を超え、物流マンにわかりやすい具体的な改善手法の提言を行う。
主な執筆:「3カ月で効果が見え始める物流改善」(プロスパー企画)。
物流技術管理士、日本物流学会正会員、ロジスティクスアライアンス委員
有限会社SANTA物流コンサルティング

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