第16回 在庫金額が減少しない理由

「在庫金額の削減は経営目標の一つである」ことは先に述べたが、どうして毎年計画に挙げていながら在庫金額が圧縮できないのであろうか。同じことを繰り返すその理由を把握しなければならない。私の経験では在庫改革が進まない企業は、「在庫改革の組織」「発注の基準作り」「運用」が不充分であると思う。

まず一つ目は「在庫改革の組織の問題」である。私は「全部門参画の在庫削減プロジェクト」が重要であると考えている。企業では小集団改善活動を活発に推進してきた。営業グループは「売上拡大」、出荷グループは「ピッキング効率の向上」、という様に各グループの改善活動を行った。しかし、他部門と連携した改善は、あまり進んでいないのが実情ではないだろうか。「在庫は発注を担当する部門の責任であるから、発注部門だけで改善を行うべき」という風になってしまってないだろうか。在庫は、営業部門の商品別売上数により大きく変化する。「市場の需要はどうか」、「得意先の考えはどうか」、「営業の予測はどうか」を把握しなければ適正在庫は実現しない。また、物流センターの在庫スペースも考慮しなければならないため、倉庫の在庫量(在庫容積)も把握する必要がある。この様な状況で、発注部門だけで在庫改革を推進しようとしても限界がある。よって、全社参画の在庫削減プロジェクトが必要になるのである。

二つ目は、「発注の基準作りの問題」である。今までの発注担当者の発注基準は、「欠品解消」「商品単価低減」であった。「在庫過剰は、年数回責められるだけでよいが、欠品だとその都度責められ続ける」という考え方が強く、どうしても過剰気味の発注になってしまう。発注ロットを少なくすると、在庫を削減できるとわかっていても、仕入単価を下げるがために過剰発注をしてしまう。在庫が過剰になっても、営業にも販売責任があるため強く責められることはない、ということも過剰在庫の後押しになる。この現実を大きく変えるには、在庫削減プロジェクトで「在庫状況の見える化」を行い、過剰在庫による経常利益の損失額を算出する。さらに、在庫目標を設定し、全社で発注ルールを決定するのである。

三つ目は、「運用の問題」である。「在庫差異が少なくなる仕組み作り」、「お客様との返品ルールの見直し」を考えていかなければならない。運用を決めた後、予測された効果が出ているのかを検証する必要がある。せっかくよい改善案を作成したとしても、毎月の進ちょく報告や効果検証をしないと、結局は元のやり方に戻ってしまうのである。

次回は8月24日更新予定です。

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この記事の著者

有限会社SANTA物流コンサルティング 代表取締役社長 / 物流改革コンサルタント Dr.SANTA

平野 太三

昭和38年兵庫県芦屋市にて出生。昭和61年甲南大学法学部卒業。同年某システム会社入社後、物流システム担当営業として、100社を超える物流現場分析に携わる。平成15年に、有限会社SANTA物流コンサルティングを設立。「物流コンサルティング」「講演、研修」「執筆」を開始する。講演参加者数ものべ10,000人を超え、物流マンにわかりやすい具体的な改善手法の提言を行う。
主な執筆:「3カ月で効果が見え始める物流改善」(プロスパー企画)。
物流技術管理士、日本物流学会正会員、ロジスティクスアライアンス委員
有限会社SANTA物流コンサルティング

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