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第1回 企業には第2の利益がある ――その1
私は公認会計士として監査法人に在籍した約35年間、監査業務に始まり、以後長きにわたり起業家支援および株式上場(IPO)支援業務に携わってきました。
クライアントへサービスを提供するにあたり、私は「第2の利益」を獲得出来る会社の仕組みづくりを意識してきました。
この「第2の利益」について、皆様はご存知でしょうか?
企業の利益には、事業基盤(ビジネスモデル)から生まれる利益、一般的に経営者が考える利益を「第1の利益」とすると、実は「第2の利益」とも呼ぶべき利益があります。
「第2の利益」とは、会社の経営の仕組みを整備することで生まれる利益のことで、主に「経営管理戦略」「労務管理戦略」「税務戦略」の三つを通して生み出されます。「第2の利益」は企業活動の様々な局面において、機会利益の獲得と機会損失の回避を通して生み出されるものなのです。
一例として販売活動において「第2の利益」を獲得するためには、属人的な営業から組織的な営業活動への転換が必要となります。一般的な営業担当者の心理としては「うるさく管理されたくないので、なるべく営業データを出したくない。
契約できた時だけ報告したい。よい情報だけ報告したい。」といったものが自然ではないでしょうか。
一度失注やクレーム発生を叱責されると営業担当者はさらに悪い情報は出さない心理になります。
しかし自社あるいは自部門にとって不利な情報が共有されることなしに、有利な情報(耳障りのよい情報)のみに基づいて正しい意思決定・最適な営業活動が果たして実現出来るでしょうか?また住宅販売業者が過去の販売実績を全く整備していないため、10年から15年先の修繕ニーズ・建て替えニーズをつかんでいないケースもあります。その様な管理体制の不備の結果として、営業活動は各人の属人的なタレントに依存したものとなり、組織を使った効率的営業活動・全体最適化ができていないことが多いのです。
そこで、組織としての営業力を強化し、「第2の利益」を獲得するために例えば下記のような販売管理が必要となります。
1.営業日報の整備・営業会議の定期開催により営業情報を共有することで私的情報から組織的な情報にする。
2.営業データを出さなかった場合のペナルティ制度の整備をする。
(契約に至らなかった案件に係る情報も重要であり、次回以降の組織的な展開への材料になりうる)
3.営業見込み情報のABC管理を行い、営業の進捗管理を徹底する。
4.Aランク(契約可能性が高い)の案件が失注した場合の分析を十分に行う
(なぜ競合相手に負けたのか分析し自社の弱みを把握する)。
5.過去の販売実績の活用を行う
(データ分析でビジネスチャンスを明確にする)。
6.取引先の新規開拓のための専門部隊を設置する
(営業担当者は自分のノルマ達成を最重要事項とするため手間のかかる新規開拓はやりたがらないため)。
上記1から6は代表例であり、実際には会社ごとにさまざまな問題があると考えられますが、ポイントは管理を行うことで属人的な営業から組織力を使った営業への転換を実践することです。
上述のとおり、営業担当者の管理されたくないという心理は自然なものですので、管理体制整備への協力を得るための動機づけを行う(人事面も含めた)制度的整備が同時に不可欠なものとなります。
皆様の会社におかれましても、「第2の利益」を獲得するチャンスは企業活動の様々な局面で存在するはずです。この機会に今一度貴社のビジネスプロセスを見直し、利益を極大化する仕組みづくりを考えられては如何でしょうか?株式会社プロネットとしてもその様な仕組みづくりへの協力をもって、皆様のビジネスに貢献出来れば幸いです。
また、末筆ながら、今回のテーマである「第2の利益」を主軸に監査法人時代の経験の集大成として、多数の方々のご協力の下、日本経済新聞出版社から編著者として本を出版することとなりましたのでご報告させていただきます。
題名は『成功した経営者の「次の戦略」―第2の利益を獲得する経営承継』でございます。是非ご一読いただければ幸いです。
書籍:成功した経営者の「次の戦略」―第2の利益を獲得する経営承継(amazon.co.jp Webサイト)
次回は12月28日更新予定です。
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