ITとビジネスの専門家によるコラム。経営、業種・業界、さまざまな切り口で、現場に生きる情報をお届けします。
第2回 企業には第2の利益がある ――その2
前回のコラムで、「第2の利益」とは会社の経営の仕組みを整備することで生まれる利益のことで、
主に「経営管理戦略」「労務管理戦略」「税務戦略」の三つの戦略を通して生まれ、
それは機会利益の獲得と機会損失の回避に分けられるとの説明をさせていただきました。
今回は第2の利益を企業活動の中でどのように獲得するのかについて、具体的に販売管理の例を通じて、より詳細に説明をさせていただきたいと思います。
まず、一般的に販売活動は
「新規開拓サイクル」・「受注サイクル」・「販売サイクル」・「請求サイクル」・「回収サイクル」
という五つのサイクルに区分出来るでしょう。
一般的には新規開拓サイクルは別個独立のサイクルとして考えられていない企業もあるかもしれませんが、私は受注サイクルの前にこの新規開拓サイクルを含めています。
なぜならば、企業が成長発展するためにはこのサイクルが最も重要と考えているからであります。
一般的には、中小・中堅企業の中に新規開拓を組織的に継続して行っている会社は少なく、結果として成長が鈍化している会社が多いと考えられます。組織上も新規開拓の専担部門がないとか、営業部門の中で新規開拓の専担者が分離されていない会社の場合は、ほとんどのケースで新規開拓が組織的に継続して行われていないのが現状です。
営業部長から”新規も取れ”と営業担当者に指示しても、予算達成のために成果が出るかどうか不確実な新規開拓をするよりも、既存顧客に販売した方が予算達成しやすいため、
結果として新規開拓は積極的でなくなるのが一般的です。
以上から第2の利益を獲得するためには新規開拓サイクルについて以下のことを検討すべきと考えます。
1.「新規」の定義を明確にして、新規開拓の専門部署または専担者を設け、課題・ノルマを明確にする。
-新規開拓と既存顧客の両者を担当すると、営業担当者の役割が不明確になり、新規開拓の実績が上がらない言い訳になってしまうため。
2.新規開拓の情報を営業担当者が個人レベルで集めるのではなく、組織的に営業情報を集める。
3.新規開拓の実績に対して金額評価以外の評価体系の導入やインセンティブ制度の導入を行う。
4.営業担当者が新規開拓先の会社と名刺交換をした段階から、新規開拓の情報をABC管理(確度管理)により、組織情報に吸い上げる。
顧客管理ソフト(CRM)の利用等が有効であると考えられるが、会社の規模等に応じて営業日報からエクセルシートによる管理も有効な方法として考えられる。
5.Aランク案件(受注確度の高い案件)が失注した場合は「失注分析」を行い、徹底的な敗因分析を通じて競争相手に比べて何が駄目だったのか把握し改善することにより企業体質の強化を行う。
-実例としては外注管理が甘くコスト高が敗因と判明し、外注管理に力を入れ始めた会社もある。
-より初歩的なことでは営業ツールが他社に比べて見栄えがしない等の例もある。
以上の例示項目を検討して自社の新規開拓に問題あるか否か是非検証していただきたいと思います。
次回も第2の利益獲得の重要性を理解していただくために、「粗利」に焦点を当ててお話させていただきたいと思います。
次回は2012年1月11日更新予定です。
書籍:成功した経営者の「次の戦略」―第2の利益を獲得する経営承継(amazon.co.jp Webサイト)
前の記事を読む
次の記事を読む