第3回 企業には第2の利益がある――その3

皆様、新年明けましておめでとうございます。

世界経済の低迷のもと、継続的に企業が成長するためには企業体質の強化は不可欠であると同時に、この様な環境下にある今こそ、(危機感を共有した)従業員等の関係者の協力も得やすく、属人的経営から組織的経営への転換による企業体質強化を準備・実践する絶好のチャンスであります。

今回も、前回に続き、販売管理を例に取り、販売活動の「受注サイクル」でいかに第2の利益を獲得するかについて、お話ししたいと思います。

「受注サイクル」で重要なのは、粗利(=売上-売上原価(直接費+間接費))を部門別、製品別、得意先別、営業担当者別で分析することです。そのためには適切な原価計算制度が構築されており、製品1単位当たりの原価がわかる必要があります。

ここで注意すべきは製品1単位当たりの原価が直接費と間接費を含めた原価になっていることです。直接費とは製品・部門等に直接ひもづけられる費用であり、間接費はひもづけられない費用のことです。(よって厳密には変動費・固定費の分類とは似て非なるものです。)

最終的には間接費を含めたコストを回収する必要があるため、管理会計上も間接費を擬似的に製品・部門等にひもづけるための配賦計算が必要になりますが、この配賦計算をどこまで厳密に行うかは会社の規模等、コストベネフィットを考慮し決定することになります。

「受注サイクル」での粗利管理は大まかに「事前の粗利統制」と「事後の粗利統制」の二つに分かれます。

「事前の粗利統制」とは、事業計画・予算と連動して事前に製品別・得意先別・ルート別等に販売単価のガイドラインを決めておくことです。営業担当者の行動パターンとして、契約を取れるように(売上高予算達成のため)出来るだけ他社に負けないように低価格の見積りを出そうとします(機会利益の喪失)。それを防ぐために、売上高だけではなく営業担当者別の粗利管理も必要であります。

ただ、ひと口に粗利管理と言っても、営業の管理者が『少なくとも15パーセントの粗利は取れるように』と営業担当者に単純に指示すれば、営業担当者の行動パターンとしては売上高予算達成のために15パーセントというハードルに極めて近い粗利を設定し、その結果として本来得られたはずの利益(粗利)が失われることがままあります。従って営業会議等ではきめ細かな製品別等の粗利の目標設定・指示をすることで「機会利益の獲得」を目指す必要があるのです。

一方、「事後の粗利統制」とは、(製品別・得意先別・ルート別等の)事前の粗利統制の結果を売上・粗利等の損益データを中心に分析し、その後の営業活動にフィードバックすることです。重要なことは、営業担当者別に粗利の分析をして達成状況を確認することであります。

これは事前の粗利統制と対になっており、事前の粗利統制の仕上げであると同時に、次期間の事前の粗利統制の下準備ともなるものです。また、この観点からは営業担当者を評価する場合に、評価基準として売上高だけではなく粗利にも重点を置くべきと考えられます。

ルール・目標をトップダウン的に押し付けるだけでなく、目標達成へのインセンティブを付与することも極めて重要です。(その他、営業見込み情報の管理と失注管理は「受注サイクル」にも存在しますが、前回(第2回)のコラムの「新規開拓サイクル」で説明しておりますので、今回は詳細な記述は省略いたします。)

以上で、販売管理を例にとり第2の利益の考え方について簡単ながら説明をさせていただきました。前回の「新規開拓サイクル」と今回の「受注サイクル」を見るだけでも、第2の利益の源泉が企業活動の様々なサイクルに眠っていることがご理解いただけたと思います。

次回は、第2の利益を獲得するためのトップマネジメントのPDCAサイクルのあるべき形をお話ししたいと思います。

次回は2012年1月25日(火)更新予定です。

書籍:成功した経営者の「次の戦略」―第2の利益を獲得する経営承継(amazon.co.jp Webサイト)

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この記事の著者

株式会社プロネット 代表取締役

高橋 廣司

株式会社プロネット代表取締役・公認会計士。監査法人では「第2の利益」の概念を提唱し起業家支援業務・株式上場(IPO)支援業務を中心に活動を行う。約35年間の監査法人での経験を経て2011年6月に真の専門家集団のネットワークをベースに中堅企業・起業家への「トータル支援サービス」を実現すべく株式会社プロネットを設立する。
監査法人での経験から従来の事業承継を包括する「経営承継」が必要との自説から『成功した経営者の「次の戦略」―第2の利益を獲得する経営承継』を日本経済新聞出版社から2011年11月出版。
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