第7回 中小・中堅企業の次世代への経営承継―その3 役員・従業員への承継(MBO・EBO)

前回は経営承継のストーリーについて概説させていただきました。今回はそのうち会社を役員や従業員に承継するストーリーについて具体的にお話ししたいと思います。

会社を役員や社員に売却する経営承継ストーリーとしてMBO・EBOという手法が考えられます。MBO(Management Buy-Out)とは一般に、役員や事業部門のトップが会社の株式を獲得しオーナー経営者となることで、特にそれが従業員によるものであればEBO(Employee Buy-Out)と呼ぶこともあります。

いずれにしろオーナーは、役員や従業員を後継者と見据えて、基本的には経営権を手放し、株式売却により資金化ができます。株式売却という点ではM&A等と同様ですが、異なる点は、その売却先が見ず知らずの第三者ではなく、既知の役員や従業員であることです。

経営者はこれまで役員や従業員の仕事ぶりを見てきているため、経営者(後継者)としての資質・能力の見極めはつき、経営者の理念・ビジョンが仕事を通じて叩きこまれているため、経営の一体性・継続性が見込めます。取引先や金融機関も受け入れやすいと言えるでしょう。

この様なメリットの一方、この承継ストーリーでは後継者候補がいかに株式取得資金を調達できるかがポイントです。一般的には、金融機関から資金を借りることになりますが、当該資金調達の可否にあたっては、承継する会社が将来に向かい、継続的に成長しキャッシュフローを生み出すことができるか(安定性・成長性)が最大のポイントになります。

その意味では、経営者が交代しても継続的に成長が見込める会社とするために、従来の類まれなる経営者のリーダーシップに依存した属人的経営から、企業体質を強化し第2の利益を獲得する組織的経営スタイルに早く移行しておくべきなのです。

上で述べた後継者の株式取得資金の調達は大きなポイントではありますが、この経営承継ストーリーを成功させるためには、以下のとおり(主要な点だけでも)多岐にわたる検討事項をクリアする必要があります。 

  1. 経営権の委譲をどうするか
    株式の評価額がそれほど高くなく、後継者が上手く資金調達できれば一度にすべての経営権を委譲することができます。しかし株式の評価額が高いなどの理由で資金調達に難がある場合は、株式の売却時期・売却金額を調整したりすることが必要になります。後継者である役員や従業員がすべての株式を取得するのではなくファンド等が一部買い取るケースも出てきます。当然に経営にも関与してくると考えられますので役員や従業員と経営方針をめぐって対立することも想定されます。
  2. 個人の債務保証の引き継ぎをどうするか
    後継者は新たな経営者として会社の銀行借り入れに対する個人保証を求められることが想定されます。また従来の経営者が個人の不動産を銀行借入の担保に提供している場合等、経営承継にあたり事前に整理・解決をしておくことが数多くあります。
  3. 経営者・後継者共に経営承継への準備は万全か
    役員や従業員は赤の他人ではないものの、やはり他人であることに違いはありません。前経営者として口を挟みたくなる気持ちは分かりますが、かえって上手くいかないでしょう。事前に経営者教育を十分に行うだけではなく、この点からも属人的経営から組織的経営への移行は重要であると言えるでしょう。
    後継者不足・不在の現状の中、親族内承継の次に身近であり、後継者としての資質を見極めやすい点等から、今後もこの経営承継ストーリーを指向する経営者はますます増えてゆくと考えられます。私の会社にも知人・金融機関等から相談が増えております。

今回は、役員・従業員への承継ストーリーとしてMBO・EBOの手法について、そのメリット・デメリット、主な留意点について解説いたしました。次回は第三者への承継ストーリーとしてM&Aについてお話をしたいと思います。

次回は4月25日に更新予定です。

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