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第8回 中小・中堅企業の次世代への経営承継―その4 第3者への経営承継ストーリー(M&A)
会社を全くの第3者に売却する経営承継ストーリーは、一般的にはM&A(Merger&Acquisition:企業の合併・買収)と言われています。
M&Aでは当然に、オーナーは経営権を手放す代わりにその代金(お金)を受け取ります。このストーリーのメリットは、現経営者は経営権を完全に手放すことになりますが、会社売却による利益を獲得することができます。デメリットは、経営者が希望する価格・条件などで売却できる買い手を見つけることが、大変に難しいことにあります。
特に後継者が不在で、M&A したくとも会社の規模が小さいケースでは、金融機関やM&Aのサービスを展開する会社から相手にされないこともあります。年間7万社から8万社の中堅・中小企業が廃業していますが、その中には日本の経済にとって継続してほしい会社が数多くあるはずです。
この様な中で、第3者への経営承継ストーリーを成功させるためには、以下の様な1~4のポイントに留意して、計画的に準備をすることが重要です。
- 次の様なポイントに留意して売却価値を高める準備が重要です。
・現経営者がいなくとも事業運営に支障が生じないように組織的な経営システムの整備が必要になります。
・買収側はリスク管理体制、コンプライアンス体制等も買収の価格に反映してきますので、売却価格を割り引きされないように、十分にビジネスモデルのブラッシュアップが必要になります。
・上場会社が買い手になるためには連結決算が問題なくできるように会計システムを企業会計にすることも重要です。 - 売却交渉は内密に実行する必要があります。
・交渉中における情報が漏れると話がストップすることもありますので、情報管理が重要です。特に上場会社が当事者ですと株価に影響するためさらに注意が必要です。 - 売却時期が重要です。
・今までのM&Aは経営状態が傾いてから必要に迫られて会社を売却するケースが多く見られましたので、企業の状態の最高の時に売却することが重要です。 - 決めたら、迷わず、実行する
・経営が順調ですと、一般的には、このストーリーは先送りになることが多いのですが、経営承継計画に基づき着々と実行することが必要です。
私どもの株式会社プロネットにも、金融機関等を通してM&Aの相談が持ち込まれますが、簡単には売却相手が見つかりません。しかし、最近はネット上でM&Aのオークションサイトを展開している会社もあり、かなり環境は整いつつあります。
株式会社プロネットのネットワークの会社である株式会社アリアル(今永代表)などは、M&Aのサイトを展開している会社の一つです。現状で約4割の会社は親族外の経営承継になっており、後継者不足等でM&Aの比率も、今後ますます高まって行くことは確実です。
繰り返しになりますが、大切なことは経営承継にM&Aストーリーを選択する可能性がある場合は、成功させるために上記のポイントを十分に押さえ、数年越しの準備が必要だということです。
次回は4月25日(水)の更新予定です。