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第22回 自ら考える力を養成する
欧米の企業風土を知っている人は、「日本企業の強みは、現場力が強いことだ」とよく言います。
現場力とは、「自ら問題をとらえて、カイゼン策を導く力」です。簡単に言えば、「自ら考える力」が強いということです。
欧米企業の従業員は、「自ら問題をとらえて、カイゼン策を考えなさい」と指示すると、「その分の給料はもらっていない」と言って拒否する場合が、結構あるようです。
それでは、部下の「自ら考える力」を養成するには、どうすればよいのでしょうか?それはおそらく、何か質問されても、すぐに答えを与えないことだと思います。質問には、質問で返すのです。
最も簡単な逆質問の手法は、「あなたは、どう思うの?」です。相手が「それが解からないから、訊いているんじゃないか!」と感じて、ムッとしている様子でも、ひるまずに考えさせましょう。
それでも答えが出ないときは、例題を提示して考えさせます。質問に質問で返せば、相手には考える力がつき、答えを自ら導き出すことによって納得度も増します。
この手法の威力は、聖書を読めばよく解かります。イエス・キリストは、逆質問の手法を駆使して、人を説得しています。例えば、「ルカによる福音書」に、次のような一節があります。
見よ、ある律法の専門家が立ち上がり、彼を試そうとして言った、「先生、わたしは何をすれば永遠の命を受け継げるのでしょうか」。
イエスは彼に言った、「律法には何と書かれているか。あなたはそれをどう読んでいるのか」。
彼は答えた、「あなたは、心を尽くし、魂を尽くし、力を尽くし、思いを尽くして、あなたの神なる主を愛さなければならない。そして、隣人を自分自身のように愛さなければならない」。
イエスは彼に言った、「あなたは正しく答えた。それを行ないなさい。そうすれば生きるだろう」。
しかし彼は、自分を正当化したいと思って、イエスに答えた、「わたしの隣人とはだれですか」。
イエスは答えた、「ある人がエルサレムからエリコに下って行く途中、強盗たちの手中に落ちた。
彼らは彼の衣をはぎ、殴りつけ、半殺しにして去って行った。
たまたまある祭司がその道を下って来た。彼を見ると、反対側を通って行ってしまった。
同じように一人のレビ人も、その場所に来て、彼を見ると、反対側を通って行ってしまった。
ところが、旅行していたあるサマリア人が、彼のところにやって来た。彼を見ると、哀れみに動かされ、彼に近づき、その傷に油とぶどう酒を注いで包帯をしてやった。
彼を自分の家畜に乗せて、宿屋に連れて行き、世話をした。次の日、出発するとき、2デナリを取り出してそこの主人に渡して、言った、『この人の世話をしてほしい。何でもこれ以外の出費があれば、わたしが戻ってきたときに返金するから』。
さて、あなたは、この三人のうちのだれが、強盗たちの手中に落ちた人の隣人になったと思うか」。
彼は言った、「その人にあわれみを示した者です」。
するとイエスは彼に言った、「行って、同じようにしなさい」。
次回は5月8日(火)の更新予定です。
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