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第4回 秀吉にみる戦略に実行の仕掛け
いくらよい戦略を描いても実行が伴わなくては絵に描いた餅(もち)に過ぎない。
ところが、多くの企業で、立派な成長戦略が実行されず、食べられない餅(もち)になっている。
あなたの会社は「実行」してますか?
実行を考える時、私は450年前のこのエピソードを思い出す。
時は戦国、地は尾張。
折からの洪水で清洲城(きよすじょう)の城壁が崩れた。
何人もの重臣が修復普請工事の監督に当たったが遅々として進まない。
周囲の反対を押し切って、監督を受け持った木下藤吉郎(のちの豊臣秀吉)は、百間を十組に割りつけ、賞罰を明確にし、競争をもって普請工事をやらせた。
具体的には、工事区域を均等に十等分し、職人を十組に分け、一組に一区域を担当させた上で、すべての組に工事を下から上に城壁を積み上げる順番で行わせ、その日の各組の成績を一目で分かるようにした。
さらに、通常百文の日当を、一番高く積み上げた組には5倍、二番目の組には4倍、三番目の組には3倍にし、その日のうちに支払った。
そして、予定より早く竣工(しゅんこう)した場合には、日当とは別の褒美を出すことを約束した。
普請工事はわずか8日で完成した。
信長は「人間の力とは妙なものだのう」と感心した。
実行を促す仕掛けとして、ゲーミフィケーションという概念があるのをご存じだろうか?
テレビゲームやゴルフ、ボーリング等のリアルなゲームを思い浮かべてほしい。
- やるなと言われてもついついやってしまう。
- 徹夜してでもやる。
- 楽しんで取り組める。単純に面白い。
- 自分のレベルアップ、成長を実感できる。
- 自己高揚感を得やすい。
テレビゲームに縁がのないお父さん世代も、徹夜でマージャンに励んで熱くなったり、ゴルフの前日、なぜか寝付けず夜更けにパットの練習をしてしまったりした経験があるのではないだろうか?
ゲーミフィケーションとは、ゲームの持つそうした効用を、ゲーム以外のことに応用し、楽しみながら進んで取り組む仕掛けを創り出すことだ。
これを仕事に活かさない手はない。
ゲーム感覚を仕事に活かし、最初はやらされ感があってもだんだんのめり込むようにするのだ。
そして、ゲーミフィケーションが成立するためには四つの条件がある。
≪ゲーミフィケーション成立4条件≫
- 何をすべきかが明確になっていて、
→目標・課題・アクションの明確化 - 自分がいまどこにいるのかが可視化され、
→現在地・現状の可視化
→ランキング・ポイント・レベルの見える化 - アクションに対する即時フィードバック(称賛)があり、
→即時フィードバックによる自己効用感 - ゴールするか達成すると、報酬がもらえる。
→達成感および達成に対する報酬の魅力
さて、秀吉のエピソードを読み返してみてほしい。
秀吉の採った仕掛けが、驚くほど、ゲーミフィケーション成立4条件と合致していることに驚く。
- ほかの組よりも早く城壁を積み上げる
【何をすべきかが明確になっている】 - 工事を下から上に積み上げる順番で行い、その日の各組の成績を一目で分かるようにする
【自分がいまどこにいるのかが可視化されている】 - 通常百文の日当を、一番高く積み上げた組には5倍、二番目の組には4倍、三番目の組には3倍にし、その日のうちに支払う。
【アクションに対する即時フィードバックがある】 - 予定より早く竣工(しゅんこう)した場合には、日当とは別の褒美を出す
【達成すると、報酬をもらえる】
あなたの会社の営業戦略は、「一刻も早く城壁修復を完了させよう」といった程度のぼんやりした曖昧(あいまい)なものになっていないだろうか?
是非、今年度の営業戦略をゲーミフィケーション成立4条件に照らして構成し直してみてほしい。
きっとあなたも信長のように人間の力の偉大さに気づくことになるだろう。
次回は9月14日(金)の更新予定です。
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