最終回 顧客に迎合する前に自社を磨け!

本稿も10回目を迎えた。今回で最終回だ。
最終回は、孫子の知恵を引用してみようと思う。

孫子のことは、皆さんよくご存じだろう。
武田信玄も三国志の曹操もそしてナポレオンも孫子を頼りにしたといわれている。

孫子はこう言っている。
『将し吾が計を聴かば、之を用いて必ず勝たん。之に留まらん。
 将し吾が計を聴かずんば、之を用うるも必ず敗れん。之を去らん。』

これは、以下のような意味だ。
「(呉王が)もし、私の兵法を聴き入れ採用されるのであれば、私が将軍として軍隊を率いて必ず勝利します。従ってこの地に留まりましょう。もし、私の兵法を理解納得し受け容れなければ、私が将軍となっても必ず敗北してしまいます。そうであれば、この地を去るしかありません。」

そして孫子はこうも言っている。
『計、利として以て聴かるれば、乃ち之が勢を為して、以て其の外を佐く。
 勢とは、利に因りて権を制するなり。』

これは、以下のような意味だ。
「私の計謀の利点を理解し、受け入れていただけるのであれば、軍に勢を付加して、外征を有利にすることができます。勢とは、その場の状況の有利不利を見極め、勝敗を決する主導権を握ることを言います。」

孫子は国王に迎合してまで将軍になろうとはしなかった。
戦争の素人である国王がプロである孫子の言うことを聞かないようでは戦争で勝てないからだ。
あくまでも孫子の考えを理解し、賛同してもらわなければならない。
それが先決であって、もしそれができないなら、自ら去ると宣言した。

この節は、孫子自身のことを言っているのか、他の将軍について言っているのかで議論があるところだが、ここは、孫子自身が呉王に自分の採否について決断を迫っているとの解釈をとりたい。
その方が面白いし、学びが大きいからだ。

企業経営においても、とにかく売れればいい、顧客が買うと言うなら買ってもらえばいい、という姿勢ではまともな商売にならない。
顧客が誤解していたり、買いかぶって過剰な期待をしていたりすると、結局あとでトラブルになり、クレームになって、余計な手間が増えるばかりだ。
当然のことながら、必要としていない顧客に無理矢理売り込むとか、騙して売るなどは論外である。

顧客には、とにかく買ってくれと売り込むのではなく、まずは、自社の理念や考え方、製品のコンセプトや品質へのこだわりなどを理解してもらうべきだ。
そこがずれていては長い付き合いにならない。その上で商品説明があったり、価格交渉があったりする。
これは、請負い、下請け的な仕事や親会社からの仕事でも同様だ。
きちんと儲けるためにはこの努力を怠ってはならない。安易に迎合し、何でもやります、何でも言うことを聞きますと言っていては儲かるものも儲からない。
便利に使われて、安く叩かれて、結局最後はポイ捨てだ。
もちろん顧客から、「そんな偉そうな講釈はいいから早く商品を見せろ」とか
「とにかく安ければいいんだ」などと言われることもあるだろう。
その場合には、「それでは残念ながらお互いのよい関係が築けませんし、お時間も無駄でしょうから失礼いたします」とでも言って、孫子のように覚悟を示そう。
「そんなことを顧客に言えるわけがないじゃないか」と考えてはならない。
少なくとも、言えるようになろうと思わなければならないのだ。
今すぐは無理でも、せめて1年後には、なんとか3年後にはそうなろうと決心しなければならない。
それで必死に努力しても、顧客との関係が改善できないとしたら、そもそも自社の理念や哲学や製品コンセプトや品質やコスト構造に問題があるということである。

顧客に対して、自信を持って自社の理念やコンセプトを語り、もしそれが気に入らないなら付き合ってくれなくていいと言える経営を目指せば、必ず儲かるようになる。
目先の小利を追わず、自社の理念やコンセプトに賛同する顧客としっかり付き合っていくことで、強い会社をつくっていただくことを願いながら、本ブログを終えようと思う。

長い間、ご愛読いただきありがとうございました。

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この記事の著者

株式会社NIコンサルティング

清永 健一

神戸大学経営学部卒業後、放送通信会社に勤務。法人向け、個人向けなど様々な営業でトップ成績を維持し、課長職として20名のマネジメントを経験。その後、大手金融機関系コンサルティング会社を経て、NIコンサルティングに入社。約80社の企業の業績向上を支援している。
中小企業診断士、生涯学習開発財団認定コーチ
株式会社NIコンサルティング

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