第2回 織田信長にみるパラダイムシフト

最近、司馬遼太郎氏の戦国物を読み返している。
10年前に読んだ時には気づかなかったが、実は、営業力強化のエッセンス満載であることに驚く。

例えば、桶狭間の戦い。
2万の軍勢を率いる今川義元軍をわずか2,000の兵で織田信長が倒した、信長飛躍のきっかけとなった戦い。

この戦いで信長が最も評価した働きが何かご存じだろうか?

信長が最も評価したのは、一番槍をつけた服部小平太でも、今川義元の首を取った毛利新助でもない。信長は、今川軍が桶狭間に停陣しているとの情報をもたらした簗田政綱に3,000貫という最大の褒美を与えた。(服部小平太は1,000貫、毛利新助は500貫)

信長が情報・諜報活動の重要性に着目していたことを示すエピソードだ。

清永は、このエピソードを営業活動に発展的に応用すべきだと考える。

今、ほとんどの会社が新規顧客の開拓に注力している。なぜか。既存客だけでは売上がシュリンクしてしまうからだ。

しかし、新規開拓がすぐに成功するはずがない。今日行って、今日、契約するような相手はむしろ怪しい。(与信に問題があったり、取り込み詐欺の可能性がある。)

新規開拓活動というのは断られ、失敗することになっているのだ。特に法人客の場合は既に付き合っている業者があったりする。

基本的に断られる。

断り文句はこうだ。
 「うちはA社さんに頼んでるから間に会ってるよ」
 「悪いけど、うちは2社購買なので、3社目に入ってもらうのは無理だね」
 「入札に参加してもらってもいいけどうちは必ず相見積をとることにしているよ」

これが大事。断り文句を貯めておく。
全部記録に残し、いつでも参照できるようにしておく。

3年後、5年後に買い替え需要のチャンスが来るかもしれない。その時に、『A社とつきあっていて、2社購買で、必ず相見積をとる』、と分かっていたらどうだろう。蓄積してある情報に基づいて、先回りして、A社より安く、A社にはできない付加価値をつけて提案していく。リベンジ商談の受注率は飛躍的に高まるだろう。

もちろんお客さんは敵ではないし、信長の場合と違い、失注(戦に敗北)しても命をとられるわけではない。
リベンジのチャンスがある。
受注、失注という短期的な成果だけにこだわるのをやめて、地道に情報を収集し蓄積していくことだ。

多くのマネージャーは、新規開拓をマネジメントしていると、断られた営業マンを、つい怒ってしまう。
「また、断られたのか! おい、お前! また今月も新規開拓先はゼロか!やる気あるのか!」

それは今日でやめて、こう言うようにしてほしい。
「また、断られたか。OK、OK。で、情報は取れたかい?」

桶狭間の恩賞分配は、敵将の首を挙げた者が一番偉いというこれまでの常識の枠から外れていたため、当初、配下に極めて不評だったという。
しかし、徐々に情報・諜報活動の重要性が浸透し、織田軍団は(兵は弱かったらしいが)戦国の世を席巻することになる。

営業活動から諜報活動へのパラダイムシフト。

「売りに行く」のではなく「聞きに行く」「調べに行く」と考える。
断られた失注商談は、将来の受注商談の途中だと考え、「聞き」、「調べ」、蓄積する。
「聞いたこと」「調べたこと」を未来のリベンジ商談に活かせば、無駄な活動はゼロになる。

是非実践していただきたい。

次回は7月13日(金)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社NIコンサルティング

清永 健一

神戸大学経営学部卒業後、放送通信会社に勤務。法人向け、個人向けなど様々な営業でトップ成績を維持し、課長職として20名のマネジメントを経験。その後、大手金融機関系コンサルティング会社を経て、NIコンサルティングに入社。約80社の企業の業績向上を支援している。
中小企業診断士、生涯学習開発財団認定コーチ
株式会社NIコンサルティング

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