第5回 織田信長にみる「合目的性」の重要性

童門冬二氏の「織田信長 破壊と創造」は、戦国時代の武将である織田信長を現代のビジネスリーダーを見るような視点からとらえた異色作だ。

信長は、奇策を弄(ろう)して勝ちを拾うような戦いばかりを続けたわけではない。
ギャンブル的に勝利したのは、あの有名な桶狭間の戦いだけで、その他の戦は実に手堅い。

外交によって四方の守りを固めた上で、標的を一つに絞り‘‘各個撃破’’することで、目的に近づいていく。
例えば美濃を攻略する際には、三河の徳川と固い同盟を結び、後方の憂いを無くした後に美濃に集中している。

あるいは、足利義昭を伴って京へ上る際には、武田や上杉に最大限の誠意を示し邪魔されないようにして、近江道制圧に集中している。

戦術面ではさまざまな創意工夫を見せながらも、大きな流れの中では、実にオーソドックスでリスクの少ない方法を採っていることに驚かされる。

おそらく戦国時代に軍事的に信長より強い武将は存在したのに信長が覇者たりえたのは、その行動の「合目的性」の明確さだったと思われる。

土地を守るという因習を捨てて、天下布武という目的のために一気に戦略展開したのは、武田信玄でも上杉謙信でも毛利元就でもなく、織田信長だけだったというわけだ。

その最短距離を行く様は、知れば知るほど唖然としてしまう。

信長の「合目的性」の発露を挙げると以下になるだろうか?

  • ‘‘天下布武’’というビジョン
  • 着実に段階を上がる戦略展開
  • 目標に最短で到達するためのプロセス管理
  • 兵農分離という組織改革
  • 苛烈(かれつ)な行動力を伴った強力なリーダーシップ
  • 徹底した能力主義による労務管理
  • 成果に加担しないもの(旧習や制度など)を潔く排除する効率性
  • 貨幣経済への着目(楽市楽座の開設など流通への理解)
  • 文化振興への意欲(南蛮文化への興味や茶会の推進)

挙げてみてびっくりした。
ここには戦略実行に必要な要素が網羅されている。

信長が、単なる軍略家でなく、変革の時代の超優秀な経営者だったことがよく分かる。

日本人離れしたスケールと行動力で時代を席巻(せっけん)した信長。
我々も変革の時代に生きている。織田信長の「合目的性」を見習いたいと思う。

次回は10月12日(金)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社NIコンサルティング

清永 健一

神戸大学経営学部卒業後、放送通信会社に勤務。法人向け、個人向けなど様々な営業でトップ成績を維持し、課長職として20名のマネジメントを経験。その後、大手金融機関系コンサルティング会社を経て、NIコンサルティングに入社。約80社の企業の業績向上を支援している。
中小企業診断士、生涯学習開発財団認定コーチ
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