第1回 歴史は螺旋的に発展しながら繰り返す

少年のころから、歴史が好きだった。
ベタで恐縮だが、特に、戦国時代や幕末。
人間の躍動に今でもワクワクしてしまう。

「好きっ!」という気持ちは感情なので、「なぜ好きなのか?」と聞かれても困ってしまうのだが、あえていうなら、「そこに人間のロマンを感じるから」ということになるのだろうか?

私は、株式会社NIコンサルティングという会社で、約80社の企業のお手伝いをしている。ほぼ毎日、経営者と面談して相談に乗ったりしながら濃密な時間を過ごしている。

営業力強化に関するコンサルティングが私の専門分野なのだが、経営者の方からの相談は、私の専門分野などお構いなしだ。

「人材育成の要諦(ようてい)って一言で言うと何だと思いますか?」みたいな、ドキっとするような質問をいただいたりすることもしばしばある。恥ずかしながら答えに窮することがあったりする。。。

そんな時に、私がよりどころにするのが、中小企業診断士の知識、、、ではなくて、少年のころから親しんでいる歴史の世界なのだ。

とにかく「歴史が好きっ!」ということで、このコラムを始めようかとも思ったが、せっかくの初回なので、その意義についてもちょっと語ってみようかと思う。

「歴史は繰り返す」と言うが正しくは、「螺旋的に発展しながら繰り返す」ということだ、と民間シンクタンク代表の田坂広志氏は言っている。

世の中のすべての物事の進歩や発展は、右肩上がりに一直線に進歩・発展していくのではない。あたかも螺旋階段を上るようにして、進歩・発展していく、というのだ。

「螺旋階段」を登っていく人を想像してみてほしい。横から見ていると、この人は、螺旋階段を上に上っている。つまり、この人は、より高い位置へと「進歩・発展」していくように見える。

一方、この螺旋階段を、上から見てみるとどうだろう。この人は、螺旋階段を上るにつれて、柱の周りをぐるっと回って、元の場所に戻ってくるように見える。先程まで居た場所に、「復活・復古」していくように見えるのだ。

しかし、よく見れば、ただ元の場所に戻ってくるのではない。螺旋階段を上ることによって、必ず一段、高い場所に登ってきている。すなわち、「進歩・発展」と、「復活・復古」が、同時に起こる。

例えば、最近流行りのEラーニング。
インターネットを使うことによって、自宅に居ても、自由な時間にさまざまな教育を受けることができるようになった。わざわざ学校や大学に足を運ぶことなく、そして、特定の講義時間に縛られることなく、様々な知識を学ぶことができるようになった。

しかし、このEラーニングは、「単なる遠く離れた場所でも教育が受けられる仕組み」ではない。その本質は、「自律学習」の仕組みだと考える方がよいだろう。

Eラーニングの本質は、学習者一人ひとりが、自分の興味と能力に応じて、自分の好きなペースで知識を学んでいける仕組みなのだ。

逆に言えば、これまでの教育では、学習者はその興味と能力がそれぞれ異なっているにもかかわらず、同じ教師のもと、同じ教材を使って、同じカリキュラムに従い、同じペースで学習することが求められた。

それは、小学校、中学校などの公教育に始まり、専門学校や資格学校、民間のセミナーに至るまで「一律教育」と呼ぶべき共通の方式だった。

しかし、新たに生まれてきたEラーニングは、学習者一人ひとりが、自発的に興味のある分野を選び、自分の能力に合わせたペースで学習を進めていくことができる方式だ。

ウェブサイトの中から、自分が最も興味のあるテーマを教えてくれるサイトを探し出し、自分に最も合ったカリキュラムを提供してくれる教育機関を選ぶことができる方式であり、毎日、一定時間を学習するスタイルでも、週末に集中して学習するスタイルでも、自由に選ぶことができる「自律学習」の仕組みなのだ。

そして、、、よくよく考えてみると、この「自律学習」の仕組みは、実は、懐かしい仕組みの復活と考えることができる。
それは何か。。。

「寺子屋」だ。

「寺小屋」というのは、よくテレビの時代劇などで目にする、江戸時代の庶民の学び場だ。かつて日本の古い教育システムだった。この「寺子屋」においては、異なった年齢、異なった階層の人々が集まり、それぞれの興味や能力に合わせて、個別にそして自律的に学習を進めていた。

しかし、それが、近代の「工業化社会」への変化の中で、大量の人間を効率的に教育する必要が高まり「集団教育」と「一律教育」の仕組みが普及していった。そして、それにともなって「寺子屋」という「個別学習」と「自律学習」の仕組みは消えていったのだ。

しかし、その「寺子屋」が、社会の進歩・発展にともない、ネット革命を契機として、今、発展的に復活してきている。「教育の場」が螺旋階段をひと回り、ぐるっと回って(遠隔教育の要素を取り入れた分だけ)一段上ったと言えるだろう。

『寺子屋⇒Eラーニング』は一例に過ぎない。
他にも、『競り⇒ネットオークション』、『御用聞き⇒コンシェルジュ』など、挙げればキリがない。

このように歴史が、「螺旋的に発展しながら繰り返す」とすると、歴史に学ぶことで、変化の本質を洞察し、未来を予測することができるかもしれない。

こう考えると我々はもっと歴史に学ぶべきなのではないか、と思う。
そんな想いを込めて毎月1回、連載していきます。

ご期待ください。

次回は6月8日(金)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社NIコンサルティング

清永 健一

神戸大学経営学部卒業後、放送通信会社に勤務。法人向け、個人向けなど様々な営業でトップ成績を維持し、課長職として20名のマネジメントを経験。その後、大手金融機関系コンサルティング会社を経て、NIコンサルティングに入社。約80社の企業の業績向上を支援している。
中小企業診断士、生涯学習開発財団認定コーチ
株式会社NIコンサルティング

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