第9回 ビジネスは、一体感から成長する・・・ITはツールに過ぎない! 

「社員にも、毎日とは言わないまでも、頻度高くメールしているし、会社の状況、今やるべきこと、課題点も赤裸々に話をしているつもりです・・・。だけど、伝わらないものですね。」と、少し疲れたように、そして、「『コミュニケーションの最大の課題は、相手に伝わったと思う勘違い』って、バーナードショーが言ったことは、正しいように思います・・・。」と、自嘲とも、苦笑いともつかない表情で話された専務の言葉が印象的でした。

基幹系システムに続いて、経営の見える化を狙い、当社サポートメンバーと一緒に、喧々諤々で構築した、専務肝いりの情報系システムの運用状況が良くありません。

ITシステムの多くは、企業の経営課題をいくつかの側面でヘルプするものですが、まずは、「情報の共有」からスタートすることが基本です。そして、その情報に触れて「だから、こう進めて行こう」という、社員個々の意識改革やモチベーションアップに結びつかないと、具体的効果は発揮されません。導入しても効果が限定的なケースの多くは、社内コミュニケーションが、一定の方向性でしか為されていないケースが多いように思われます。

その人材派遣業のお客様は、先進的な基幹系システムと、情報系システムを組み合わせたシステムを導入。当時の規制緩和の好調な追い風を受けて、右肩上がりの成長を続けていました。過去のシステムに比べて、営業の@生産性は1.5倍。営業人員増も入れると、単純に言えば、2倍の売り上げを4年で達成されました。

IT投資にも積極的で、他社との差別化を図る仕組みはいくつも工夫がなされていました。「他社が行かない、ニッチマーケットの新規開拓。管理面ではコンプライアンスの徹底遵守。お客様の細かな要望に応もえることで、他社との差別化する」は、当時の専務の口癖でした。ITは、そこをバックアップする為の重要なツールでした。

しかし、リーマンショック不況、製造業の空洞化による国内雇用の悪化、政権交代による派遣規制強化・・・ここ数年の時代の流れは、厳しい経営のかじ取りを余儀なくされ、そのお客様にとっても、全体的な見直しが必要な状況に迫られることになりました。

そこで、その危機感の共有を管理職全員で・・・と、ポータルのダッシュボードには、毎日の受注・売上状況、今抱える課題点とその対策、さらに、ボトムアップを狙った、匿名でも記載できる社内提言、全てをオープンに「何でもQ&A」・・・といったサイトを構成し、貼りつけたのです。

確かに、最初は盛り上がりましたが、半年を過ぎたころには下火状態。何も、ダッシュボードに書かれたことを実行しなかったわけではありません。

半年間で、採用された提言は15/25。その実効値の60%は、悪くない数字だと思います。そこには、例え、自分自身の判断としてはダメだろうと思うことでも、「とにかくやってみよう」という精神で取り組んだ、専務自身の意気込みもありました・・・。

だけど、焦燥感が募るのは、伸び悩む売上実績の数字でも無く、一か月以上、社員からの意見が掲載されないことへの苛立ちと、施策として何かが足らないのか?への不安や、全員が、一緒の船に乗っている気持ちになってないのでは?という、営業時代から大切にしていた「一体感」という言葉への自信が揺らぎ始めていたからでした。

そんな悶々とした流れの中、ある日、掲示板に一人の管理職のメッセージが掲載されました。

「私達は、掲示板や、コミュニケーションボードを使って情報共有をしてきましたが、それでも予算が達成しない・・・。いつしか、その利便性に甘えるばかりで、エクスキューズのボードに変化していないでしょうか?今は、厳しい時だけど、もう一度、昔に戻って、顔を合わせてミーティングをしよう。そして、前向きな意思を一人一人表明してそれをボードに書く。そこに付け加えてよいのは、説明や、能書きじゃない、前向きなことだけ・・・。12月は、絶対に予算をやろう!こんな偉そうなことを書いて、皆には、スタンドプレイと言われるかもしれない・・・だけど、どうしても勝ちたいんだ!」と書かれていました。

それを見た、専務にもグッとくるものがありましたが、わずか30分で、ボードは管理職全員の自主的な決意表明で埋め尽くされました。12月は、毎年売り上げが伸びる月でした。ただし、ここ2年、前年伸長を捉える状況にはありませんでした。しかし、一人の管理職の勇気ある書き込みは、最後をしっかり締めて来年に・・・という強い決意が感じられるメッセージであり、他のメンバーの心に火をつけました。

そこからは、はじけるような勢いで、再度、情報共有の様々な掲示板が、活況を取り戻しました。大人しかった画面が、熱気が立ち上がるのではないかと思える程に・・・!そして、年末のラスト2日前に、過去の最高記録であった3年前の12月の実績を塗り替え、大幅な予算達成をしました。

最終日、専務がポータルサイトを立ち上げると、「やっぱり、数字が最高の処方箋だ!」、「営業は、実績で勝負!自分を褒めてあげたい・・・何てね!」、「自己新記録やり切りました・・・もう思い残すことはありません!イヤ!大有り!来年はもっと!」、などといったメッセージが。

中には、「A得意先の総務課長から、いくつかの人材派遣会社を使うと、派遣社員の出退勤確認や、同じようなドキュメントの提出や受け入れを会社単位でしないといけないので、そこを合理化したいって話があったので、大塚商会さんに依頼して、連携するプログラムを作ってもらったら、うまくいった。これを、営業間で情報共有したら、5社も新規受注が取れた」といった情報共有型のものまで・・・コミュニケーションボードをスクロールしても、し足りない程の前向きなビジネスプランやメッセージで、埋め尽くされていました。

言葉もない専務。

そして、一言書き入れることにしました「皆、僕を泣かさないでくれよ・・・」と。

次回は6月4日(月)の更新予定です。

この記事の著者

株式会社大塚商会

大塚ナビィ

入社して以降、ソリューションビジネス一筋。数々のお客様に、ITシステム導入をサポートし、大きな効果を上げ、その評価も高いベテラン営業。今までの数多くの経験と知識を、コラムとしてスタートです。趣味は、食べ歩きとテニス。あだ名は「歩くhanako」

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