第1回 ソリューションビジネスって何だ!

その時、僕は、まだ入社して日も浅く、何者でも無かった時期でした。先輩に指示された情報は、「小さい食品加工の会社だけど、社長がコンピュータシステムを検討している」との話でした。

早速お客様を訪問すると、「工場に回ってください」と事務員の人に言われ、そそくさと階段を下りて扉を開けると、ほのかに甘い香りと、目の前でぐるぐる回る機械を覗き込んでいる社長がいらっしゃいました。

「あのー、大塚商会ですけど~」と言うと、社長の表情は真剣この上なく、回転するドラムの中を擬視したままです。そして少し間があって、「もう少し待って!」と。そして、右手に持った袋から少し材料を、目分量で足して3分程度。「よっしゃ!」といって、僕の方を向いて「コンピュータやろ!なあ、いくらかかるんかなあ」と出し抜けに質問。

「あのー!」と答えると、「何や、新人かいな?ちゃんと勉強してから来てくれよ!時間もったいないわ、帰って、帰って!」と厳しい口調で、追い払うように手を振って・・・

ここで帰ったらダメだと思って「何も聞いてないのに、金額なんか出ません。御社の今作られてる和菓子も目分量でも、だいたいのことが分からなかったら作れないじゃないですか?」と、少し興奮気味に答えてしまいました。

「そやな!そうや!こりゃ悪かった!」と、社長は、相好を崩して話されると、伝票枚数、取引先の数、商品点数・・・と、基本的なデータや、伝票等のアウトプットを出してきて、「これくらいのちっぽけな会社やけど、コンピュータ入れたいんや」と、今度は、まじめな顔です。

帰ってから、先輩SEと分析すると、パッケージソフトで簡単に導入することが可能との判断になりました。そして、3日後、提案書と見積りを持って行くと、社長は一言「高い!全然、高い!あかん!他より高すぎるがな!あかん!何とかして」との話。

再度システムの構成を見直すことで、ご契約いただけました。同行した上司が、「こいつの一号機なので、ありがとうございました」って話すと、僕も顔が真っ赤になってしまい、社長は「ちゃんと動かしてくれよ!期限は9月20日の請求書からな!頼むぞ!」と言いながら、僕の手を握ってくれました。

さて、緊急の電話は、夜7時にありました。担当しているSEから、「9月20日の請求書が間に合わない。プログラムがおかしい。」との連絡です。早速お客様にお伺いすると、社長、社長の奥さん、事務員の女性、SEが、一生懸命、電卓をたたいて、請求書の鑑を作成していました。

「明日、朝イチ持ち込まな、お金が入ってこない・・・」と社長。そのまま、僕も参加して、請求書作成業務です。慣れない電卓を、何度も再計算して間違えないように、事務員の女性には帰っていただきましたが、社長と奥さんと、SEと、僕は、翌日の朝方まで一生懸命にして、手書き請求書を作成し、何とか間に合うことになりました。しかし、社長は、何一つ僕達には怒らないで、「ホント、ありがとう!」と最後まで優しかったのが気持ち悪い程でした。

そして、翌月10月20日の請求日、請求書のメニューで請求書発行を押すと、当たり前のようにものの5分で請求書が出てきます。何だか、嬉しくて涙が出てきそうになります。失敗したSEに至っては、何度も「すいませんでした!」と頭を下げながら、目が真っ赤になっています。

しかし、その時「ワーッ」と泣く声がありました。それは、社長の奥さんでした。そして、「お父さんありがとう!」と、すると社長が「一カ月遅れだったけど、結婚して、初めて、お前に誕生日プレゼントできた。今まで苦労させて悪かったな」と声にならない声で、小さく泣き出しました。

先月、社長が怒らなかったのも、奥さんに対する申し訳なさが、僕達に対する怒りに勝っていたんだろうな?と思いました。そして、こんな人を幸せにすることができるソリューションビジネスは、すばらしいと、自分の仕事を誇りに思えました。

次回は4月2日に更新予定です。

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