ITとビジネスの専門家によるコラム。経営、業種・業界、さまざまな切り口で、現場に生きる情報をお届けします。
【特別編】そもそも、ITソリューション営業って何だ?その3(全3回)
一昨日から本日にかけて、いつもと少し趣向を変えて、僕自身がソリューション営業に関してどう考えているかについて、3話連続の【特別編】をお送りしています。
是非、『その1』からお読みください。
【特別編】そもそも、ITソリューション営業って何だ?その1(全3回)
【特別編】そもそも、ITソリューション営業って何だ?その2(全3回)
さて。もう少し具体的な事例から見てみましょう。
まず、提案書は厚いか?薄いか?厚さに関しては、どちらでも良いのですが、プレゼン時に、提案書の全部説明しようとするような姿勢の営業マンは、自信の欠如であり、良くありません。パワーポイントに小刻みな文字が躍っているのも同じです。基本は、簡潔に書かれてあることが大切です。例えば、「仮想化技術でサーバを統合し、現状のデータセンターコストを1/2に圧縮します」といった表現のように、具体的にどうなるかをデータで表記していれば、良い提案と言えるでしょう。「・・・削減します」では、悪くはありませんが、このケースだと、サイジングの経験不足が見えて取れます。
もう一つ例を挙げます。
「今回のシステム化で、部署間の在庫情報の共有と、見える化で、在庫圧縮と、その先のキャシュフローの改善に結びつけます」という表現は、受け手サイドでも、何となく「そうだよな!」って言ってしまいそうですが、情報の見える化が、在庫圧縮に繋がる根拠が良くわかりませんし、目標とする在庫圧縮の数字も見えていません。実際には、リアルタイムで正確な在庫情報が共有できれば、各部門間での、在庫数量の目標値が設定され、その目標が達成されたことの一方で、販売のチャンスロスにならなかったか否かを検証して、在庫に余裕があれば、さらに、目標値を絞っていくことで在庫圧縮につなげる・・・といった、「情報共有→在庫圧縮→キャッシュフロー改善」への、システム以外の運用ベースでの具体的な道筋の提示がなされていなければ、実体験の無さを露呈していると言えます。さらに、同規模クラスでの企業での実体験があれば、ある程度数字で、どこまで圧縮できるか否かが、経験値でわかるはずです。
もう一歩踏み込むと、営業が優秀でも、サポートやバックアップはどうか?というお考えもあるでしょう。しかし、営業がソリューションに詳しい場合は、SEがそれ以上のスキルでなければ、提案の具現化に繋がりません・・・ということで、優秀な営業(優秀の定義は、ソリューションに詳しい)には、優秀なSEがアサインされる可能性は高いものになります。この辺りは、プラスのスパイラルで、優秀な営業が、優秀なSEによってさらに相互スキルアップするという感じです。
あとは、会社の姿勢です。冒頭に書きましたが、ITソリューションの世界は、まだまだ歴史も浅く、様々な意味で、発展途上であることや、技術的な展開が激しいこともあって、今日のプロフェッショナルが、明日もプロフェッショナルであるかと言えば、そうならないケースもあります。そういう意味での「経験値不足という課題」を常に有しています。そのことに関して言えば、企業がどういったベクトルで、営業を育て、SEを育て、新しいアーキテクチャに対しても、どれだけ開発投資をしているか?残念ながら、主流になると思って、開発コストが無駄になることなどもかなりありますが、そこを耐えて次を目指さないと、ITソリューションの世界では生きていけません。不思議の国のアリスに登場する、「そこに留まってる為に、走り続けなければならないウサギ」のようなものです。そういった企業姿勢が、提案書の中にしっかりと、裏付けがあるデータで書かれているか?これも大きなポイントです。
「大塚ナビィ」としてのソリューションビジネスへの思いと、最後はお客様目線で考えた、ソリューション営業の判断の仕方という風に、このコラムらしくまとめさせていただきました。世の中のいくつかのビジネスは、一方を勝者にして、一方に敗者にするビジネスがあります。しかし、ITソリューションビジネスは、最高のパフォーマンスで成功させることができれば、お客様も、そのシステムを構成するハードやソフトウェア会社、お客様のその先の得意先や、個人顧客、そして実際に販売したSIerと関係する各企業を幸せにすることが可能なビジネスだと思います。
僕のお客様で、社長の座右の銘が「Be Happy!」という企業があります。皆、楽しくなればうまくいくのにね・・・って、社長はいつも陽気に話されます。僕は、その言葉を、勝手に自分の座右の銘にしてしまいました。ITソリューションビジネスの求めるもの「Be Happy!」と・・・!
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