第15回 「4年で年商5倍を目指す」・・・トップの固い意思に正面から向き合う

そのお客様は、とある商品の小売り・卸売りをされているお客様でした。

「今回のシステム導入の目的は、年商が4年で現在の5倍になってもアプリケーションプログラムのフレームそのものが生きた仕組みですよね。現状、出荷指示を外部にある倉庫にデータを送るだけで済んでいるものが、年商が5倍になった場合は在庫情報を受発注のデータから、納入予定、入荷予定を加味した上での引き当て業務や、特別なお客様に対しての預かり処理等のコントロール業務が付加され大いに煩雑な仕組みになると思います。当然アイテム数も、少なくとも倍以上に広がるであろう可能性を考えると商品マスタそのものの考えも、管理レベルが大きく違ってきます・・・。」と、僕。

社長は、ノートパソコンに向かってしきりに何かを打ち込んでいます・・・が、おもむろに「そんなことはわかっているよ。だから、そこまでをどうやってシステムで管理するのかを聞きたいんだよ。結論的な部分から要約してプレゼンしてくれないかな?」と苛立(いらだ)ったように話しをされます。
顔を上げるでもなく、下を向いたままです。

一見、失礼な態度の様にも思えますが、日ごろから「睡眠時間はマックス4時間で、それ以外は仕事オンリー。そして井原西鶴の様に45歳で引退。偉大な作家、三島由紀夫も45歳で人生を閉じたし、僕もそれ以上は仕事をしないと決めているんだよ・・・だから、僕には時間がないんだ。」と、公言しているだけあって、無駄な時間がないようにとの強い姿勢がビジネススタイルにも表われている社長でした。ただし、間違いなく、ビジネスは強烈な右肩上がりであり、社長の言葉に根拠がないわけではありませんでした。

「うむー!前段必要なしですかあ!いつも結論から話すようにはしているのですが、前提条件が『4年で年商5倍』ですから、さすがに考えてしまって~」と、ちょっと戸惑いながらも、即、気持ちを切り替えて、「端的に言えば、当社のERPパッケージをメインに導入していただきたい。このプロダクトを勧める理由は、まず、データベースを三層構造で持っており、拡張性に優れているからです。Web通販、コールセンター機能、卸売り、店舗売り上げ・・・等、今後考えられる多業態の展開にもフレームを壊さずに拡張できると思っています。これはWebブラウザで稼働するシステムであり、システム管理もさほど難しくありませんので急成長企業が悩む、情報システム要員の確保を抑えることができると思います・・・いかがでしょうか?」とお答えしました。

すると、初めて顔を上げて一言、「いくらかかるの?」
すかさず、「分析してみないとわからないですが(当たり前ですが)、1.5~2億くらいかな? と思っています」と僕。
「某社は、3億以上と言っていたんだけど、なぜ価格が違うの?」と社長。
「おそらくスクラッチでの開発を考えているからだと思います。しかし、その提案はナンセンスかなと思います。なぜなら、4年で5倍の年商を考えるとスクラッチ開発ではそのスピード感についていけません。確かにスクラッチだとお客様の要望は細かく実現できますが、誰(だれ)が5倍の売り上げを想定した業務と、現実のギャップを埋められるのでしょうか?開発するSIerのSEやコンサルタントですか?そんなにすばらしいスタッフがいらっしゃる会社の提案であれば、その会社を選択するべきでしょうね。逆に言えば、当社のシステムを採用していただくと、4年後には、正直、ある程度我慢して使っていただく可能性は高まりますが、間違いなく基幹系システムとして動いていることに自信があります。」と、少し強気で押しました。

「同業他社での実績や経験は?」と、値踏みされているような感覚の質問です。
しかし、実はこれが一番痛い質問でした。当社には、そういった実績がなかったのです。その当時は。
しかし、競合他社は業績好調な著名企業での実績があります。
うーん!追い込まれました。しかし、そこはしっかりと真実を話すしかありません。

「実は、想定される今の年商5倍での同業他社の実績は、ありません。しかし、御社の今の規模と同じ位の企業には数多く納入した経験があります。それらのお客様は、専任のスタッフもいらっしゃらず、1人二役三役は当たり前、出力される管理アウトプット一枚にも、紙代の費用を考えて・・・といったように、爪(つめ)に火を灯(とも)すような努力で社内の合理化を念頭にシステム化を考えられたお客様たちです。そういった運用ノウハウはありますが・・・大手での実績といえば、残念ながらありません。」と、少し厳しい部分の話しにはあまり力が入りませんでした。

すると社長は「いいなあ!それ!企業が大きくなっても、会社が小さかった時のハングリーさが大切だと思っているんだよ。そんなノウハウがある方が嬉(うれ)しいね・・・そうそう、でもウチは上場も狙(ねら)っているからね」と、話しを切り上げるや、役員に対して、「大塚商会さんでいこうと思うけれど、どうだ?」と・・・。

その後契約が進み、システムは効果的に導入されました。
そして実際には、3年後に上場を果たされました。
上場記念パーティには、導入に携わった当社の多くのメンバーが呼ばれました。
そのパーティの席で社長から「実を言うと、あの時4年で5倍の・・という条件で、最後まで提案をしてきた会社は、大塚商会さんだけだったんだよ。他社は、コンサルティングを入れてからとか、3か月くらいプレ分析しても価格が出せないとか、唯一、某SIerだけが多くの納入実績を持っていて、よい提案をしてこられた。確かにそれは魅力的な提案だったけれど、大塚商会さんの強さは中堅中小企業の味方でしょ・・・大塚ナビィさんの最後の話しにビビッときて決めちゃったんだよ。でも、よかったよ。ホント!」といって固い握手をしていただきました。

その社長は会長にはなりましたが、既に「45歳」を超えた今も、昔通りに睡眠時間4時間で、頑張っておられます。

次回は7月23日(月)の更新予定です。

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