第8回 二代目、三代目と言う十字架<後編>

(前回のあらすじ)
とあるオーナー企業で、新システム導入を任された、二代目である取締役。副社長や専務が今ひとつ協力的でなく、プロジェクトが進まない中、ナビィは社長に“プロジェクトのメンバーを若手中心に切り替えること”を進言。

(本編)
さて、プロジェクトは30代メンバーで構成されました。全員実務畑での経験をベースに、こうするべき、こうしたらもっと効率化するといった意見がたくさん出てきました。

それまでの打ち合わせでは無かったことです。そして、分かったのです。同じく30代だった取締役の「皆のどんな意見でも受けるぞ!的姿勢」が、メンバーに大いなるやる気を起こさせていることが大きな要因になっていること・・・・!

同時に、弊社のプロジェクトメンバーも、経験より同世代感という意味で、少し若返りを図り、運用面での安易な妥協を許さず、例外処理をできるだけ作らない方針をベースに、突き詰めた完成度の高いシステムを目指しました。

そして、熱い議論の中で育まれたシステムは、利便性のみならず、現実的な運用面での無駄が大いに省かれ、かつ、全体像はしっかりと当初の目的を実現している形。予想を上まわる効果で、確かに、運用ルールの大変革という痛みは伴いましたが、9カ月の間に不良在庫は整理され、健全な在庫水準になりつつあります。

そして、1年が過ぎようとしているころ、その企業が開催する大きなイベントがありました。いつもは、挨拶は、社長がされていましたが、その時は、取締役から常務に昇格された二代目がいました。招かれた取引先や、社員を前に話す姿は、2年前にプロジェクトをスタートさせた時の、彼とは全く違っていて自信に満ち溢れていました。

すると、僕の隣にいらっしゃった副社長が、「血の力はスゴイもんだ」と!晴れがましくも見える常務を見る目が、以前とは全く違っていました。

在庫は月商の一か月分、在庫ロスはコンマ以下、不良債権は激減・・・「欠品はしない」社是を守り右肩上がりで年商を伸ばしています。確かに、画期的な効果を生みました。

そのイベントの後、二人で少し飲むことになりました。そして、今までの苦労話で盛り上がったのですが、最後に、ふと寂しそうに吐露するように「大塚商会さん!僕も、無我夢中で走ってきたけど、ようやく形になって良かった。メンバーにも恵まれた。でも、一方で、経営に近づくほど、見えてきたことがあります。それは、『孤独』です。社長が、何かに憑かれたように、そして時間を惜しむように仕事をしているのも、この『孤独』と戦っているからだってようやくわかりました・・・」って話されたことが印象的でした。

確かに、年商規模を考えても、また、従業員とその家族を考えると、その企業を継承する宿命とは、過酷な側面を見せるものです。当初、二代目と、導入時の話で盛り上がった時に、

「僕には、副社長や、専務と同じ場に立って、彼らに認めてもらう為に『新規開拓で勝てるか?』と考えても『勝てない』。『人脈が勝ってるか?』と言われたら話にもならない。唯一、勝てるかもしれない?と思ったのがITによるシステム化しかなかった。でも、実際は『言うは易し、するは大変!』だけど、若手社員の協力があった。彼らは、少し閉塞的だった会社に対して、このシステム化が風穴を開ける役割を果たすと期待していたように思います。僕は、そんな彼らの気持ちとシンクロしたように思った。そして、システム化は大いに成功した。しかし、負の局面がなかったかと言えば嘘になります。ベテラン社員の処遇、配置転換等々、うちのような小さな企業の中で起こった大きな嵐は、何人もの従業員の人生を変えた。それらすべてを受け止めないといけないって思った時に『孤独』が襲ってきたのです。」

と一旦は嘆息をつきましたが、次の瞬間には「でも、正直、今は、社長だけでなく、副社長や専務にも認めてもらったことの嬉しさが勝っているように思います。大塚さんから見ても、少しは、経営者っぽく見えますか?」と、最後は、茶目っ気たっぷりに締めくくられました。

以前、別の運輸倉庫会社様のシステム化では、今でこそGPSを利用した動態管理は珍しくないですが、当時としては画期的だったそのシステムをPCノートに押し込んで、行く先々の新規顧客で、そのノートブックを開いては、「見てください!当社は、自社の車が今どこにいて、お客様の荷物がどこにあるか?を一目瞭然でわかるのです!」と言って営業した三代目役員が、当時、各メーカーが経営課題で悩んでいた「SCM」の目的と大いに合致して、この運輸倉庫会社に複数社の大手企業との契約をもたらし、それをきっかけに社長就任といったようなこともありました。 

その他でも、各企業で、ITを活用した他社との差別化で成功されている事例は数多くあります。なぜ、ITか?と言われれば、ITの流れは会社の血流をあらためて見直す機会を提供するということになります。人が、病気か否かを判断する時に血液検査をするように。

血流がうまく流れていないところ、圧力がおかしくなっているところ、異物が流れているところ・・・などなどを通して、その企業全体を知ることができます。このことが、全体最適の判断に大いに役立つからだと思います。

もちろん、悪いところを直すのはITだけではありません。むしろITが使われるのは、部分的なものでしょう。以前も書きましたが、「ITはツール」です。

本質は、経営者としてのバランス感覚をもった「決断」と「意思」の具現化であって、その一部をITが担うレベルです。ただし、システム化を通して、その企業全体を知った部分において、過去のしがらみを持たない決断を二代目、三代目がすることが、その企業の活性化に結びつくのでは?・・・と思われます。

次回は5月28日(月)の更新予定です。

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